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街に侵入市長

「お、お前はなんだ! 何が目的だ!」

「俺は……そうだな! うん! そうだ! この際、いっそのことマイクと呼んでくれ!

 そして目的はギルドに行って仕事をもらって働いて稼ぐことだ! 俺の物語を邪魔する奴は吹っ飛ばす!」

「「「「 ええええ…… 」」」」


 問いかけに対するきちんとした返答にも関わらず、失礼な反応にムっと眉がハの字を作る。

 邪魔をする上に失礼ときたら、これはもうデヤァでお仕置きしかないな。


 俺のジャ○リパークへようこそのポーズに一層の力が籠る。


「――ってぇー!」

「むっ?」


 その時、後方から聞こえた女の声。

 必死さを感じる声に視線を送る。


「まってぇー!」

「むむっ? あれはティアーヌ嬢ではないか?」


 俺が歩んできた道を馬にまたがり駆けてくるティアーヌの姿。

 馬車は見えずに馬が二頭。おおよそ馬車に繋がれていた馬を離してそれに乗ってきたということだろう。


 ティアーヌの乗車していた馬車は貴族らしく馬が2頭も繋がれた上等な馬車だった。一頭の馬にティアーヌ嬢が跨り、もう一頭に騎士・傭兵モブが跨って駆けてきている。

 それ以外のメイドや騎士・傭兵モブ2人の姿が無いことから山賊の頭であるレベッカがどうなったか気にかかるが一体どうしたというのだろう。 

 それにあのティアーヌの必死な形相。


 もしかして俺から主人公スメル&主人公フェロモンが溢れ出ていて、ティアーヌはそれに当てられてチョロインと化してしまったのだろうか?

 貴族令嬢らしからぬ態度で『待って』と叫んでいるのだから、その可能性も無きにしも非ずと思える。


 おいおい参ったな。

 ロリータは守備範囲内なんだが……んんっ! 守備範囲外なんだがな……フッ。

 まぁなんだ。ナニはともあれちっぱいロリータ貴族令嬢ヒロインに迫られるシチュエーションは吝かではない。吝かではないぞ!

 

 そんな事を考えている内にティアーヌと騎士・傭兵モブが門まで辿りついた。

 乗馬で体力を使ったのか肩で息をするティアーヌに問い掛ける。


「これはティアーヌ嬢。一体どうしてここに?」

「はぁはぁ……一体どうしても何も、貴方が私の街に向かったからに決まっているでしょう! 嫌な予感しかしなかったけれど、やっぱりこんなことになってるじゃない! 門を壊したのも貴方の仕業でしょう!」


 おやぁ?


「ふむ。確かにこれは俺の仕業だ。」

「あああもう! 貴方の目的は一体なんなの! さっきも場を掻き乱すだけ掻き乱してどっか行くわ、街に来てみれば門を破壊しているわ、何がしたいの! なんなの!?」


「ふむ。俺の目的はギルドに行って仕事をもらって働いて稼ぐことだ!」

「…………はぁ?」


 ティアーヌの顔が憤怒の表情から一転『わけがわからないよ』を全面に押し出したような呆けた表情に変わった。

 意外と貴族令嬢は表情が豊かなようだ。


「門についてはギルドへの道を閉ざされ、さらに槍まで向けられたのだから破壊して進む以外の道が無かったのだから仕方ないことだった。」

「どうしてそうなるのっ!?」


 正気に戻ったのか、ガッデム! とでも言わんばかりに地団太を踏むティアーヌ。

 貴族令嬢がこんなにも感情を露わにしても良いのだろうか。だがティアーヌの感情は止まらない。


「なんなの!? 猪なの!? 狂犬なのっ!? 考える頭って物が存在していないのっ!?」

「いやいやいや、その言い分は失礼にも程があるだろう。俺は君が思っているよりもずっと知識を身につけているし考えているぞ?」

「知識がある人はこんな行動しない! あぁ、分かったわ! そうね! 知能の方が足りていないのね!」


 ティアーヌの言葉にハっと気が付く。


 俺はここまでの間、折角の転生チャンスをデヤァにしたことで、どこかヤケッパチになっていたのかもしれない。

 門を破壊した事も、自分の置かれた立場のリアリティの薄さから、どこかゲーム感覚が入っていた。


 だが、この土地で生まれ育ったのであろう者達から見れば、確かに俺はずいぶんと常識が足りていないように見えたことだろう。俺がデヤァした門番もゲームのモブではなく、人生のある人だったのだからそれも当然だ。


「ふむ……確かに俺は思慮の足りない行動をしてしまったのかもしれない。」

「えっ?」


 俺が頷きながら自分の行いをかえりみていると、素直に言葉を聞きいれたことに驚いたようなティアーヌの声が聞こえた。


 ティアーヌの言葉に気づかされた俺は、今だ挙動不審な衛兵たちに向き直って歩み寄り、そっと握手の手を伸ばす。


「俺は思慮の足りない行いをした。すまなかった。俺に敵意は無い。」


 俺が手を差し出した衛兵は、救いを求めるように俺の後ろのティアーヌに視線を送っている。

 やがてティアーヌから握っておけとでもジェスチャーを受けたのか、心底嫌そうな顔で俺の手を握り返すモブ衛兵。


「デヤァ!」

「グワー!」


 バックドロップだ。


「なーーっ!!? ちょ、ちょっと! あんた何してんのよ!」


 俺は自分の行いをかえりみた。

 きちんとかえりみた。

 でもかえりみたわけではないのだ。


 なにせ、もう門は破壊しつくしてしまっている状況。今更常識的な振る舞いをしたとしても、どうしようもない状況に至っているのだ。それに門の修繕費とか言われたらにっちもさっちもいかなくなる。

 であれば初志貫徹。ゲーム感覚のまま走りきるのみ。モブはモブとして扱って俺は目的を達成するのみだ。


「あんた自分が何しているか分かってるの!?」

「うむ! 俺の目的はギルドに行って仕事をもらって働いて稼ぐことだ! 俺の物語を邪魔する奴は吹っ飛ばす! さぁかかってこい!」


 すぐに別の衛兵モブを掴む。


「デヤァ!」

「グワー!」


 バックドロップだ。


「ちょっと待ちなさいってば! お金を稼ぎたいなら稼がせてあげるから!」

「むぅ?」


 新たに衛兵モブをネックハンギングした状態で止まりながらティアーヌを見る。


「ウチの傭兵として雇ってあげるから! だから言う事を聞きなさい!」

「なに? 傭兵だと?」


「えぇそうよ! 貴方のその強さは評価しているから、きちんと給金で答える事を約束するわ!

 ギルドで稼ぐよりもずっと高収入になるわよ! 稼ぐのが目的ならそれで目標は達成しているはずでしょう?」


 俺は評価された事に一度ニヤリと微笑む。

 ティアーヌも俺の微笑を見てつられてニヤリと笑った。


「デヤァ!」

「グワー!」


 バックドロップだ。


「だからなんでっ!?」



「勘違いしているようだな……俺は、ただ稼ぎたいんじゃあない。『ギルドで働いて稼ぎたい』のだ!」


 そう。俺の破滅都市暴力市長物語を始める為にな!



※吝かではない(誤用:いやいやだけど、まぁしてもいいお)。吝かではないぞ!(正用:めっちゃやりたいれす)

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