城塞都市へ到着市長
本日2話目
冒険者ギルドでの活躍という目標ができた俺は、ただひたすらに道を歩む。
過去を振り返ることなく進む。
ヒロイン候補たちは本筋の主人公たちと出会ってヒロインヒロインしていればよいのだ。
程なく城壁に囲まれた街が見えてきたのでダッシュで突撃する。
ダッシュするとドドドドドドという音と巻き起こる砂煙が心地よい。
なにせどれだけ走っても全然疲れる気配がないのだから、この身体は凄すぎる。
ただ走っているはずなのに、不思議と膝から下しか動いていないような走り方な気がするのは気のせいだろうか。
それになぜか両手がジャ○リパークへようこそ!のポーズをしてしまうのかも解せない。
解せないが……まぁ大したことではないはずだ。
そんなことを考えていると、いつの間にか正門らしき場所に辿り着いていた。
「そこの大男! 止まれ!」
「ふむ!」
とりあえず後ろを振り返る。
「お前だお前!」
「おう!」
そうだった。
いかんせんまだ転生前の意識が強いから走り方とか他のことを考えていると自分がデヤァであることをうっかり忘れてしまう。
「スマン。俺のことだったのだな。」
「お前みたいなのがゴロゴロいるわけないだろがい。」
槍をもった高圧的な門番の態度。
都市を守る門番だ。突然熊が現れたら高圧的にもなるだろう。うむ。高圧的でも仕方あるまい。
どれ、ここはひとつ敵意の無さでもアピールしておこう。
「ハッハッハ! そうか! 確かにその通りだな! 俺はデカイ! だが安心してほしい。見ての通りデカイだけで俺は丸腰だ。」
「なんで上すら着てないんだよ……」
「ハッハッハ! 暑かったのさ!」
「お、おう……」
「ちなみに金も持ってないぞ!」
「おい……」
「なぁに、多分この街にはギルドの一つや二つあるだろう? ダンジョンなんかはあったりするのか? すぐにそこで稼いで税金だろうが何だろうが収めるさ。とりあえずツケておいてくれ!」
「ん、んん? んん……まぁ、よくわからんが、そのガタイならすぐ稼げそうだわな。後払い用の札もあるから対応できるぞ。運がよかったなお前。」
「ハッハッハ! そうだな! 俺はラッキーだな!」
「まぁなんだ……なんか悪いヤツでもなさそうだしな。
そうだ。とりあえずこの水晶に触れてくれ。」
「む? これは……もしや犯罪歴云々が分かったりする水晶か?」
「お? 知ってるか。まぁそうだよな。こんなすげぇ水晶は有名になるよな。
知ってるだろうが犯罪者が触れると赤色に光るのさ。問題なければ青色だ。さぁ触ってくれ。」
「よしきた。」
促されるまま判別の水晶に触れる。
すると水晶は紫色の光を放った。
「紫……だと?」
門番の顔が険しいものに変わる。
どうやらさっきヒロイン救出イベントで振るった正義の拳が良からぬ反応を示しているのかもしれない。
「ふむ? 紫とは……中間であるという事か?
これは、ついさっき困っている女性を助ける為に、この拳を振るったのだが、おおよそその影響だろう。なぁに、俺は正義の拳しか振るっていないから安心してほしい。さぁ赤色じゃああるまいし中へ入れてくれ。」
「門を閉めろー!」
門番の叫び声が響くと同時に、ガラガラと門が閉まり始めた。
なんという事だ。
「ふむ……俺がギルドに辿り着いてファンタジーストーリーを始めるのを、お前は阻止するというのか。」
「ゴチャゴチャと訳のわからんことをぬかすな! そこで大人しくしていろ! いいか? 変な動きをするんじゃあないぞ!」
門番の矛先が俺に向く。
そして門は完全に閉じてしまった。
いいだろう。
そっちがそのつもりで俺にデヤァで活躍をさせないつもりなら、こっちにも考えがある。
「門の向こうに進むべき道があるのであれば……俺のやることは一つ。」
「お、おい! 動くなと言っただろうっ!」
「デヤァ!」
「グワー!」
バックドロップだ。
門番を一発でノックアウトする
「ふっふっふ……
超犯罪都市暴力市長はなぁ……」
閉じられた門に向けて構える。
そして飛んだ。
「デヤァ!」
門に向けてフライングボディプレスを放つ。
門は身体に触れると同時に、まるで飴細工のように弾け飛ぶ。
進むべき道を邪魔する物は何一つ無くなり、吹き飛んだ門の先には驚愕に染まった門番たちの姿があった。
門番たちに向けてジャ○リパークへようこそ!のポーズを構える。
「壁だろうが樽だろうがドアだろうが、ぶち壊して進むんだよ! さぁ目的地への邪魔をする者たちよ! かかってこい!」
臨戦態勢となった俺に、挙動不審な門番が口を開いた。
「お、お前はなんだ! 何が目的だ!」
「俺は……そうだな! うん! そうだ! この際、いっそのことマイクと呼んでくれ!
そして目的はギルドに行って仕事をもらって働いて稼ぐことだ! 俺の物語を邪魔する奴は吹っ飛ばす!」
「「「「 ええええ…… 」」」」
問いかけにきちんと答えたのに、なんて失礼な奴らだ。