市長
魔石動力による市場の過熱は、たかが一都市の出来事。
一都市の出来事とはいえ、便利な技術はどんどんと世界に広まってゆく。
なぜなら生産性を向上させる技術であればあるほど、誰でも喉から手が出る程欲しい物であり見逃される事は無い。
需要に気が付いている商人たちは取り締まられようが命の危険があろうが技術や機会から利を得る為に、どんな手を使っても未開の土地へと持ち出し利益を貪る。
その土地の持ち主である貴族もそれを秘密裡に後押しする。
利権の大元の確保が無理であれば、それ以外の譲歩をティアーヌから引き出し、どんどん取り入れ利益の最大値を増やした。
ティアーヌは砂糖を生み出す機械であり、貴族たちは働き蟻を動かす女王蟻なのだ。
そんな女王蟻たちは手に入る利益の増大に頬を吊り上げた。
そして膨れ続ける利益に、悪い事など一切無いように錯覚し見逃した。
見逃していた事とは『中産階級の発生』だ。
貴族は指示を出すだけ、実際に動く者他にいた。そして動く者達は利益を貪る。
故に、これまでは貴族などの上流階級、使われる市民である下流階級しかなかったのだが、資産をこしらえた中流階級とも呼べる存在が増え続けていたのだ。
放置していても上昇気流の景気で懐に入ってくる利益が多い現状、貴族たちはその中流を締め上げる機会を待ってしまった。
どんどん膨れさせ、膨れ上がった時に刈り取れば良いと麦の収穫のように単純に考えていたのだ。
だが人は麦ではない。
意思ある者であり、考える者である。
中産階級となった者達は考えた。
刈り取られる時になった時の資産の隠し方など、同じ中産階級同士で手を組み、協力体制など様々な事を皆で考え協力したのだ。
どんどん増え続ける利益の中、中産階級のある者が呟く。
『なぜ言われるままに従わなくてはならないのか』と。
その考えは伝播する。
金があればなんでもできる。
戦争が起きたとしても中産階級連合で協力しあえば街や都市を守る事も出来るだろう。
作物の生産は自分達が手伝いどれだけ向上して飢えが程遠い物になったかも知っている。
そんな中、ただ命令しかしてこない連中に怯え、なぜ言われるままに刈られるのを待たなくてはならないのか。と。
中産階級の抱えていた王政という中央集権に対する疑問、恐れ、不安が一気に燃え上がり反転し、そして反逆という名の革命が始まった。
「デヤァ!」
「グワー!」
貴族の味方は少なかった。
中産階級たちは皆、動力を提供できるティアーヌだけは自分達の味方である必要があること、ティアーヌだけは中核として外すことは出来ないことを理解していたからこそ、計画の段階から協力を嘆願した。
自分達の仲間、この国で唯一正しい貴族として革命の旗頭となって欲しいと。
ティアーヌにしても、もう他の貴族たちは自分からただ奪うだけの存在、邪魔者でしかなかったが故に協力の決断を渋る事は無かった。
そして、これまで散々貴族たちをデヤァしてきた俺をティアーヌの意思の象徴として最前線に派遣することを決定したのだ。
故に俺はデヤァしている。
大体、そもそもにして勝利は確定していたのだ。
戦争の時は農民が兵士になるだけであり貴族の抱える兵士は元々少ない。その兵士も旗色をみて裏切るのだから貴族の粛清のハードルは低い。
高い戦力である冒険者達もランクが上であればあるほど耳ざとい。情勢の変化にも敏感だ。
だからこそ貴族に付き従っても利益は無いと判断すれば従う者などいるはずもない。
もし貴族と共に反抗すれば、他の中産階級連合の雇った冒険者連合に殺されてしまう。だからこそ検討する天秤自体が無いも同然だった。
故に、俺の仕事は、ほぼほぼ無血開城に近い城に乗り込んで小さな反逆者をデヤァするだけ。
初めてティアーヌの街を訪れた時の様なもの。あまりに簡単なデヤァ過ぎる。
こうして元上流階級にデヤァするという封建主義社会から資本主義社会への転換は進んだのだった――
--*--*--
「市長。本日の予定ですが――」
「うむっ!」
革命から15年が過ぎ、今の俺には口髭が定着している。
市民権と議会が発足し、ティアーヌを首相とした資本主義社会が発展し続けている今、俺はティアーヌの命で、ある都市の管理を任されている。
俺が任せられている都市は、要は掃き溜め都市だ。
急速な資本主義の発展により光と影は生まれるし、必要悪も存在してしまう。
だがその影や悪というのは表舞台からは消し去るべき存在でしかない。しかし完全に消すことは難しい。
故にティアーヌは徹底的に管理し光の集まる都市と、影の集まる都市を分離したのだ。
そして貴族粛清で革命の顔となった俺、絶対戦力の象徴となった俺を影の都市の頭として置く事で反抗の抑止力とした。
もちろん俺とて、ただでこんなことをしていない。
報酬としてはティアーヌが20歳になった時にデヤァした。
国の象徴になったともいえるティアーヌとのデヤァは、大変デヤァだったから十分な価値だった!
あれ以来、ちょくちょくティアーヌとはデヤァする中であったりもするのだが、あれも中々可愛らしいところがあってデヤァ!
なにしろレベッカとは娘が出来てからというもの、なんていうかデヤァのタイミングがデヤァだからな!
「――という予定です。」
秘書の言葉が終わっていた。
「スマン! 聞いてなかった! 簡単にまとめてもう一回言ってくれ。」
「はぁ……いつも通り、悪評の高い暴力集団の壊滅です。」
「なるほど! よし行こうっ!」
その時、男が部屋に慌てて駆け込んで来る。
「し、市長大変です!」
「なんでやぁ!」
「む、娘さんが誘拐されました!」
「な、なんだとぉっ! どの娘だ!?」
レベッカ以外にも沢山のメイドさんとのデヤァの結果、娘も息子も多いのだ。
「レベッカさんの娘さんのジェシカさんです!」
「よりにもよってジェシカとは!」
怒りのパンプアップで着ていたTシャツがはじけ飛ぶ。
「ゆるさん! 許さんぞぉっ! 誘拐したヤツらは徹底的にデヤァしてやるっ!」
こうして、暴力渦巻く都市へと市長は駆け出してゆく。
市長を務める都市に蔓延る暴力集団を壊滅させる最後の戦い……ファイナルファイトの為に――
……こんなんでゴメンねっ!
そして最後までお付き合い有難うございました!
もうね、単にデヤァを書きたかっただけだったの!
何も考えてなかったの!
でもなんだかんだで結構好きな終わり方になった気がする。
…………いやほんとゴメンねっ!!
尚、次回作は、また気分とノリ100%の内容ですが、既にノクターンで投稿中です。
ノクターンなので、18歳未満の方はゴメンなさいだけど、なんか今見たらノクターンの日間ランキング12位に入ってますた(汗) やったぜ!(滝汗)
タイトルは『確かにハーレム望んで異世界転移したけど……なんか違うっ!』です。
内容は淫魔さんしか出ない。そんな話です(遠い目)
それではまたー!