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デヤァ転生 ~無敵の攻撃 デヤァ!~  作者: フェフオウフコポォ


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冒険者市長の弱点

「なん……だと……」


 ただただ衝撃に震えることしかできない。

 このチートな身体で出来ない事などないと思っていた。

 門だろうが障害物となれば簡単に破壊できてしまうという、この力さえあれば、なんでもできるという万能感があった。

 だが、その万能と思っていた力が否定されたのだ。


 それも初期クエスト。

 『薬草採取』に。


 今しがた自分に起きたことは悪い夢であると信じて再び(・・)薬草を探す。

 薬草探しは依頼となるだけあって見つけ出すのは中々に手間だ。どこかたけのことりに通ずるものがある。

 あのここら辺怪しいよな? と感じたらすぐに神経を注いで念入りに探し回る感じは、レジャーであれば楽しみになるが仕事となると途端に億劫になってしまう。

 そんな億劫さを感じながら探していると、ようやく図鑑で教えてもらった薬草を見つけることができた。


 薬草は今たしかに目と鼻の先にある。

 ちゃんとある。


 先に自分の身に起きたことは幻覚だと言い聞かせ、しっかりと薬草を見据えて採取の為に手を伸ばす。


「なっ!?」


 消えた。


 あったはずの薬草。確かに掴んだはずの薬草。

 その薬草が手に納まった瞬間に消え去ったのだ。


 2度の失敗を経て考える。

 この薬草がファンタジー薬草だから採取が難しく採取されそうになると消えるという物であるということも考えられるが……その可能性は低いだろう。なぜならこのクエストを受ける時、俺の側にはティアーヌが居たからだ。ティアーヌという権力者が目にかけているだろう的な雰囲気の俺にギルドマスターがこんなクリティカルな注意点を伝えないはずがない。


 となると消えた原因となりそうなのは


「……俺か。」


 俺は今、顔は違えど破滅都市暴力市長となっている。

 逆に言えば、顔以外は破滅都市暴力市長だ。


 破滅都市暴力市長はアイテムを拾うとどうなった?

 原始肉や金の延べ棒、なんでも拾うモーションをしただけで全て即消滅していたはずだ。


「おおよそ薬草だけに回復してしまったということか……」


 俺は破滅都市暴力市長。

 ファンタジーにあるあるの無限収納のような便利な機能を有しているわけではない。拾った物はただ消滅したのだ。

 どこか完全無欠のチートのように思っていたが、とうとう出来ない事もあることが露見してしまい一つ大きく溜め息を吐く。


 そして出来ない事が見えた事で、冷静に暴力市長の持つ力と定番ファンタジーの相性と、その他の弱点を探る。


 暴力市長の強みは近接戦闘特化なことだ。

 近づいてしまえば、なんでもデヤァしてしまえる強さがある。

 そしてダメージを受けた場合にも、今アイテムを拾って分かったように食べ物や回復に絡みそうな物を拾い上げれば瞬時に回復できるという能力もあるだろう。これは凄い長所だ。


 だが言ってしまえばソレしか能力は無いということになる。


 例えば敵にしてもこれまでは人としか戦っていないが、定番ファンタジーの世界ではドラゴンなんかもいるだろう。ドラゴンのブレスなんかは遠距離広範囲攻撃として存在するだろうし、俺はその攻撃を避けられるだろうか。いや直線以外の攻撃を避ける事は難しいだろう。


 それにドラゴンに対して、その巨体をバックドロップできるイメージが沸かない。そもそも俺のデヤァは対人特化の戦闘力しかないのかもしれないという不安もある。攻撃できないとなると逃げる事しかできないだろう。

 さらに対人においても魔法を使う敵なんかもファンタジーであれば存在するだろう。

 近接戦闘特化だけに遠距離攻撃との相性は悪い。傭兵・騎士モブなんかが相手だった場合も全員がクロスボウを持っていたら確実にやられる事になりかねない。


 その結論に至ると悪寒が走った。


 最初この世界に来た頃は、もし早く死んだら、もう一度あの得体の知れない存在と巡り会えるかもしれないと考えて無茶をしていた。だが今はもう暴力市長の力も悪くないと感じ始めていた。


 そう。受け入れてしまっていたのだ。

 だからこそ、もし今死んだとしたら、あの得体の知れない存在とは会えないような気がした。もし会えたとしても『やり直しを要請する!』『いや十分楽しんでたじゃん!』と拒否されるだろう気がしてならない。


「これはすぐにでも遠距離攻撃に対する対抗策を講じる必要があるな。」


 そう呟き、そして自分の手を見る。


「後、採取系クエストの対策も……アイテムを拾えないという事は討伐部位の確保も難しいだろうから、それも合わせて対策しなくてはだな。」


 すぐに踵を返しティアーヌの威光が残っている内にギルドマスターに冒険者登録に必要な試験のクエストの変更と、俺の特性についての対策の相談を行う事にするのだった――



 帰ってギルドマスターに相談したところ返答を棚上げされた。

 「う~ん。ちょっと調べてみますね。時間ください」だ。

 お役所仕事め!


 仕方なく、この日は俺の管理の為だろうティアーヌから提供を受けた宿屋で大人しく就寝し、翌日再度ギルドを訪れてギルドマスターから伝えられた答えは納得の答えだった。


「検討しましたが、ここは奴隷を使ってみては?」

「ほう奴隷!」


 自分が出来ないなら、人にさせればいいじゃない。

 なんとリアル市長らしい答えだろう! 気に入った!

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