冬の桜
告別式の後、まひろの身体を火葬して、納骨をしなければならない。しかし、僕は告別式が終わった後、一人で先に帰った。
理由は二つある。
一つ目は、まひろの姿が骨になる瞬間を見たくなかったからだ。僕の中で綺麗な姿のままのまひろを残したかった。
二つ目は、火葬場よりも行きたい場所があったからだ。
僕は今、その場所に向かうのに、電車に揺られ、最寄り駅へと向かっていた。
「雪、止んだのか」
駅から出ると、午前中にはほろほろと降っていた雪はいつのまにか止んでいた。
コンクリートの上を歩くたびに、ざくざくと音が鳴る。
目的地には駅を出て、10分ほどで着いた。
「ここも冬場は、寒いな」
誰にも聞こえない小さな声でそう呟く。
僕はこの大きな公園で初めてまひろと出会った。公園というよりは原っぱの方が正しいかもしれない。なにせ、遊具なんてもの一つもない。
ただ、中心には大きな大きな桜の木があった。
高1の春、正確に言えば、中3の3月。
桜が満開を迎えたくらいに、僕はあの公園でまひろと出会った。
「桜って、なんだか不思議。すぐに散ってしまうのに、儚くて切なくて美しい。あなたはどう思う?」
彼女は微笑んで僕にそう言った。
今でもあの日のことを、僕は鮮明に覚えている。