始まり
「東くん、君に頼みごとをしてもいいかな?」
それが僕と彼女の最後の会話だった。
「寒ッ」
玄関を出て、すぐにその言葉が出た。はあーっと低い声を出すように、息を吐くと、白く籠っている煙が出る。
この日は、都心に雪が降り始めて2日目の日だった。今は小さな雪がほろほろと降っている。
辺りにはまばらと、雪が積もり始めて、道路の脇には砂利と混ざった雪が集まっていた。
高2の冬休み、僕は学校の冬季講習でもないのに、制服を着ていた。
彼女の葬式に出るために。
葬儀場は、最寄駅から地下鉄で2つほど離れた場所にあった。
電車の中は、雪が溶けてやけに滑る。気を抜いたら、本当に足が滑ってかなり焦った。
ーーーー僕は何やってんだろ。
目的地に着くと、黒い服を着た大人の人が半分、僕と同じように制服を着ている人が半分ほどいた。
「優! お前、10時に駅前のコンビニに集合って言ったろ」
「ごめん」
「みんな、あっちで待ってんぞ」
彼の名前は、岩野真也。僕の小学校からの幼馴染だ。僕からしたら、1番の仲のいい友達でもある。
そして、真也は亡くなった彼女のことが、清水まひろのことが好きだった。