救ってみせる(ユーリ視点)
更新がなかなか出来なくってすみません。
前回のロゼリアとユーリが再会したあとのユーリ視点です。
ロゼリアと再会して数日が経った。
あれから毎日『トサント』に昼御飯を食べに行ってる。
ロゼリアを説き伏せて一緒に昼御飯を食べることも出来てロゼリアとの離れてしまった距離を少しずつ狭めていっている。
昨日はロゼリアと街に出掛けることも出来た。
そのことを思い出すとおもわず頬がゆるむのを感じる。
そして今日もまた、昼御飯を食べに目的地に向かう。
ゆるむ頬を引き締めながら僕はロゼリアの家であるハーヴェスト家のことを考えた。
ハーヴェスト家。
侯爵家として古くからこの国に存在する由緒正しき家。
比較的優秀なものが多く、宰相、将軍、名の優れた芸術家など様々な才あるものを輩出してきた。
聞く話によると親戚間の繋がりが強く、敵に対し、一族総出で容赦なく排除するらしい。
ハーヴェスト家のことを調べていると謎な部分も多く、それについて調べているとまるで何者かに阻止されているかの如く、解明出来ない。
ロゼリアについても同様だ。
周囲の人間に公表されている情報はともかく、それ以外の情報についてはあまり知ることが出来なかった。
これはロゼリアに関わることで何かあることは確かだろう。
僕とロゼリアのためにもこれからも調べてみる必要がありそうだ。
ともかく、今はロゼリアに会えることに集中しよう。
いつもと同じように見慣れた道を通り、目的地に向かった。
進んでいくと見慣れた店が見えてきた。
けれどどうも店の雰囲気がいつもと違う。
いつもは昼御飯を食べに来た客で賑やかな雰囲気なのに今はどこか静かな雰囲気だ。
首を傾げながらも店に近づいていく。
店の前に立っても静かな雰囲気は変わらなかった。
だが店のドアは閉まっているものの、閉店や休業の看板はなかった。
ドアを開けて中へ入るとそこには暗い顔をした『トサント』の面々がいた。
彼らは僕の顔を見ると、暗い顔をしながらどこか戸惑ったようにこちらを見た。
その中でキースが口を開いた。
「こんにちは、ユーリさん」
「ああ、こんにちは。何かあったのですか?皆さん浮かない顔をしていますよ」
「・・・それは・・その・・・」
僕は挨拶をしてきたキースに挨拶を返しつつ暗い顔をしている理由を聞いた。
いや、聞かなければならないと思った。
「実は・・その」
それは何故ロゼがこの場にいないということと繋がっているような気がしたから。
「ロゼリアが連れていかれてしまったんです」
キースから発せられた言葉は予想通りのものだった。
僕は荒ぶる感情を抑え、話を聞いた。
話を聞く限り、どうやらロゼはハーヴェストの執事に連れていかれたようだった。
それもハーヴェストにその身を捧げた執事たちに。
胸元に金の紋章入りのバッチを着けたハーヴェストの執事の話はハーヴェストに縁のあるものなら知っている話だ。
彼らは主のためならどんなことでも遂行する。
その彼らが動いたということならロゼを救出するのは難しいだろう。
思案に耽っているとキースから声が掛かった。
「ユーリさん。ロゼッタを助ける方法はないのですか?」
「そうだよ。何かないのかい?あたしらに出来ることならやるからさ。あの子はあたしらの家族みたいなもんなんだ」
「そうだ。その家族が苦しい顔しながらあいつらに着いていったんだ。それを支えるのが家族ってもんよ」
「まっそういうこったな」
「お姉ちゃん帰ってくる?」「帰ってくる?」
キースを皮切りにおかみさん、ルカス、ゴードン、ユキノ、ユキヤがロゼリアが帰ってくることを望む意思を告げた。
「僕もこのままロゼを放っておく気はありませんが方法が思いつかないのです。ロゼの家、ハーヴェスト侯爵家は多大な勢力を持った家です。そう簡単には手出しが出来ません」
僕は悔しいながらもそう告げた。
僕の言葉を合図に僕たちは各々に思考していた。
そのとき、ドアの方から声がした。
「知らせを聞いてきたんだがどうやら遅かったようだな」
「っ!?トムさん」
驚いて僕たちは声のした方を向くとそこにはこの店の常連であるらしいトムさんがいた。
彼は苦笑しながら辺りを見回し、軽く手を挙げて挨拶をした。
「トムさん。すまねぇーが今日は店をやれる状況じゃねぇんだ。今日のところは帰ってもらえねぇか?」
「いや、親父さん。すまないが俺は今日ここに来たのは飯を食いにきたわけじゃないんだ」
「?それはどういうことだ?」
昼御飯を食べに来た訳ではないというトムさんの言葉に疑問を抱きつつ先程の「遅かった」と言った真意を確かめるべくトムさんが話すのを待った。
「ロゼッタちゃん、いやロゼリア・ハーヴェスト侯爵令嬢のことで来たと言えば分かるかな?」
「っ!?」
「おっとそんなに警戒しないでくれ。俺はどっちかっていうと親父さんたちの味方よりだ」
「それはどういうことですか?それに何故あなたがロゼの名前を」
「まあ、落ち着け。そういうお前はラングスタのところの次男だな。まっ簡単に言うと俺はハーヴェスト家が何をしようとしているのか分かった上でそれを止めようとしている。何故ロゼリア嬢について知っているのかといえば俺がそういう地位にいるってことだな」
「・・・」
トムさんが口を開くの待って聞いた内容は耳を疑うものだった。
彼はロゼだけでなく、僕の身元も知っていた。
おそらく話の口調から彼は僕よりもハーヴェスト家についてロゼリアについて知っているのだろう。
そしておそらく彼は貴族、それもかなり上の階級の貴族だろう。
そう思うと一先ず彼の話を聞くことにした。
「こちらのことが分かっているのですね。では失礼ながら貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「そんな堅苦しくなくて良いと思うんだがな。まあ、それは置いておくとして改めて自己紹介しよう。」
「私の名はトーマス・マーキス以後お見知りおきを」
そう言って彼は洗練された礼をした。
だがそれよりも驚くべきは彼の名だった。
トーマス・マーキス。
それは現マーキス侯爵家当主の名だ。
元々、この国には公爵家は三つあり、の侯爵家は七つある。
その侯爵家の中でもハーヴェスト家、マーキス家、それからもうひとつの侯爵家は公爵家にも引けをとらない勢力、発言力を有し、その優秀さは知れ渡っている。
だが、かの御仁、トーマス・マーキスはまたの名を変人侯爵と呼ばれている。
優秀でその手腕に多くの事象を精算し、周囲から畏怖と尊敬の念を抱かれ、有名な人物だがその一方で彼が変わりものであることもまた有名な話だった。
そんな御仁が何故ここにいるのかは気になることではあるが、一先ずはロゼを救うのが先だ。
何はともあれハーヴェスト家に匹敵する勢力がなければロゼを救うことは難しいところであるのだから。
「そうですか。貴方がかのマーキス侯爵様でいらっしゃいましたか」
「礼はいらない。面倒くさいからな。それよりも君はロゼリア嬢を救うつもりだと思って間違いないな?」
「ええ。それで間違いありません」
「親父さんたちもそれでいいんだな?」
「そうだよ」
「まっ当然だな」
「それなら覚悟をした方が良い。相手はあのハーヴェスト家だ。あの家は手段を選ばない。きっと親父さんたちが隠しておきたいこと守りたいものを囮にして潰しにかかるだろう。だからなるべくロゼリア嬢の帰りを待っていて欲しいんだが、」
「それは、そうかもしれないけどさ、それでもあたしらは何もしないで待ってることは出来ないのさ。そりゃあたしらには立派な地位もないけどさそれでも何か出来ることがあるならしたいのさ。だからトムさんあんたの力を貸してくれないかい?」
「・・・」
「マーキス卿、僕も同じです。ロゼリアを救うためなら出来ることは何だってやります。だからお願いいたします。」
「・・・分かった。だが、ラングスタの次男はともかく、親父さんたちはあまり、貴族間のことに出ることはしないでくれ」
「ありがとうございます」
「分かったよ!」
「しゃーねぇロゼッタの為だいっちょやるか」
「俺も出来ることはやります」
「店どうすっかな」
「馬鹿言ってんじゃないよ店やりながら出来ることをやるのさ」
マーキス卿から了承を得ることの出来た僕たちは後日話し合いをすることになった。
そして、その時に僕たちはハーヴェスト家のやろうとしていること、衝撃の事実を知ることになるのだがこの時の僕はまだそのことを知らない。
とにかく、これで少しはロゼを救える可能性が増えた。
待っていてロゼ、きっと君を救ってみせる。
そして、今度こそ君に伝えるよ僕の本音を・・・・。
前回の更新から一ヶ月も経ってしまいました。
すみません。これからもこんな感じで不定期更新となります。ご了承下さい。
やっとユーリ視点が一旦終わりました。
長くてすみませんでした。
次回からはまた、視点がロゼリアになります。
引き続き読んでいただけたらと思っています。
お読みいただきありがとうございました。