募る想い(ユーリ視点)
ユーリ視点です。
いつからだろうか、ロゼのことをこんなにも愛しく想うようになったのは
いつからだろうか、ロゼがあんなになってしまったのは
いつからだろうか・・・
僕とロゼが出会ったのは3つの時だった。
いつものように花畑に行った僕とたまたま花畑を見つけたロゼが偶然出逢い僕達は仲良くなった。
元々僕とロゼの領地はお隣同士であったことからお互いの両親も顔見知りで顔を会わせる機会があり、家族公認の友達になった。
それから僕達はお互いの家に遊びに行き合ったり、花畑に行ったりした。
日を重ねるごとに僕達は仲良くなっていった。
次第にロゼに対して抱く気持ちが友達への想いから一人の女の子としての想いに変わっていった。
当時、ロゼと出会って1年が経った頃、4つだった僕はまだロゼへの想いの正体がよく分からず戸惑いつつもロゼと会えることに喜びを感じてた頃、あの花畑でロゼは王子のお嫁さんになるのだとよく理解していない顔で言った。
その時僕はロゼとずっとは一緒にいられないことにショックを受け、同時に焦った。
けど、よく話を聞けばそれはまだ決まった訳ではなく、ロゼ自身も王子を好きな訳でもなかった。
それなら僕が先にロゼと約束をすれば良いのではないかと思った当時の僕はロゼに花の指輪を付けて、ロゼと約束を交わした。
我ながらませた子どもだったと思う。
ともかく、ロゼと約束出来た僕は次にロゼと会えることを楽しみにしていた。
けれど、それからロゼとなかなか会えなくなり、あの約束をした日から3カ月が経った頃、ロゼが第2王子と婚約したという話を両親から聞かされた。
当時の僕は幼すぎてただ、嫌だと言うだけで何も出来なかった。
ロゼの婚約が決まってから会う機会は以前に比べて格段に減り、年に数回会う程度になった。
文字を覚えてからは文通をしていたが、昔のように会えないことに落ち込む気持ちを隠すことに苦労した。
それから時が経ち僕らは13になる年を向かえ、僕らは学園に通う年になった。
僕らは学園に入学してから毎日顔を会わせることが出来た。
久し振りに会ったロゼはあどけなさを残しながら次第に綺麗になっていった。
その姿を見れることに喜びを感じながら同時に自分のものにならないやるせなさ、それなのに収まることの無く、募ってゆく想いを感じていた。
ロゼには友達は僕以外いなかった。
いや、社交界やクラスでたまに話すぐらいの仲の人間なら複数いた。
その中でも特によく話す人間は数人いたが身分抜きにいや、特別に親しくしているものはいなかった。
だからこそロゼは僕といる時は特に心から笑っていると思えた。
僕達はたまに街に出掛けることもした。
その時はとても嬉しくて、幸せを感じてすらいた。
だけどそれも彼女が現れるまではだった。
彼女、ミア・ダノンはロゼとはまた違うタイプの才女だった。
彼女はその類い稀なる才能から入学当初から周囲に一目置かれていた。
また、才能だけでなく、人好きな性格の彼女は周りから高嶺の花、淑女の鏡と詠われ、気品溢れるロゼとは違い、明るく、とても親しみやすい性格だった。
ロゼも真面目で明るい彼女のことを「優秀でいて、明るくとても素晴らしい淑女だわ」と微笑みを浮かべながら褒めていた。
だが、それも殿下が彼女に心を奪われるまでの話だった。
殿下が彼女のことを意識しはじめてからロゼは変わった。
焦り、何かに恐怖するような雰囲気を醸し出していた。
殿下が彼女に惹かれていくごとにロゼの顔から笑顔が消え、思い詰めた顔をするようになり、心なしかやつれて見えた。
そんなロゼの雰囲気に複数の人間はロゼが殿下のことを好きなのではないかと思い始めた。勿論殿下を含めたミア・ダノンに想いを寄せていた生徒会の面子はそう思っていたようだ。
時が経つにつれ、ロゼの表情はどんどん暗くなり、次第にミア・ダノンに危害を加えるようになった。
初めは婚約者のいるものに手を出すなという注意から始まり、次第に罵倒になり、彼女の私物に手を出したりとエスカレートしていった。
流石に注意が罵倒に変わり始めた頃から僕自身ロゼに注意をしてきた。
だがその時のロゼは全く聞く耳を持たなかった。
『ロゼ』
『何?ユーリ』
『最近の君はどこかいつもと違うと思うんだ』
『あら?どこが可笑しいの?』
『ミア・ダノン、彼女に対する扱いが酷すぎるよ。いくら殿下が彼女のことを意識しているからって』
『酷すぎる?ミア・ダノンに対する扱いが?酷すぎる?どうして?』
『えっ?』
『だってこのままじゃ私は婚約破棄されてしまうわ。そうしたら、私は殿下と結婚出来ないじゃない』
『そうだとしても君らしくないよ!それにこんなことしてたら余計に婚約破棄されてしまっ『じゃあどうすればいいのよ!!』』
『・・・ロッロゼ?』
『じゃあどうすればいいのよ!私は殿下と結婚しなきゃいけないの!そうしなきゃだめなの!』
『ロゼ、何言ってるの?別に君に落ち度が在って婚約破棄される訳じゃないんだよ?それなら良いんじゃないかな?』
『やめて!そんなこと言わないで!私は殿下と結婚しなきゃだめなの!殿下と結婚出来なきゃ私は・・・私は・・』
『・・・ロゼ』
『来ないで!もう私に関わらないで!』
『・・・分かったよ。でもロゼ、もう一度考えてみて本当にこのままで良いのか』
『・・・』
あの時のロゼの瞳には何も映っていなかった。
どこか正気を失っているような瞳であり、どこか自分自身にも言い聞かせているようであり、まるで洗脳されているようでもあった。
それからもロゼは彼女、ミア・ダノンへの行為は収まらなかった。
そして、ついに彼女を階段から突き落とすまでに至った。
幸い彼女には軽い打撲程度で済んだが今まで彼女に対するロゼの行いに腹を発てていた殿下達がついにロゼに婚約破棄を言い渡した。
殿下達がロゼに婚約破棄以上のことを告げるのではないかと思った僕は止めに入ろうとその場に駆け寄ったが遅かった。
殿下に婚約破棄を言い渡されたロゼの顔は始めは絶望に満ちた顔をしていたが次第に穏やかになり、微笑んで殿下の婚約破棄を受け入れた。
その表情はロゼがまた、以前のロゼに戻ったようで、安心した。
だがふと、ロゼがこちらに目を向け、僕と目が合った瞬間一気に青ざめ、その場から勢いよく出ていった。
出ていったロゼを殿下達は大声で叫んで止めたがロゼはそんなこともお構い無しに出ていった。
そんなロゼを追い掛けようとしたが人垣が邪魔でなかなか追うことが出来なかった。
やっと人垣から出れたと思ったらすでにロゼの姿はなく、取り敢えずロゼの家やロゼの行きそうな場所を手当たり次第探すが見つからない。
それから僕はロゼを探し始めた。
何故ロゼが僕を見て逃げたのか、今どこで何をしているのかを知るため、そしてこのままロゼと会えなくなることを防ぐため、僕はロゼを探した。
けれどいつまでたってもロゼは見つからない。
漸く王都の隣にある森を出た所にある街にロゼらしき人がいるという情報を得た。
聞くところによると、ロゼらしき人物は『トサント』という料理屋で最近働き始めたらしい。
僕は期待を胸にその料理屋に行ってみた。
案の定そこで働いていたのはロゼだった。
ロゼは僕を見るとひどく驚いた様子だった。
何だかんだあり、夕食を頂くことになった僕はそこで始めて『トサント』の人達をじっくり見た。
彼らは明るく、元気だった。
そんな彼らと話すロゼもとても楽しそうで学園に居たときと全く違った。
キースといった僕達と同い年の男と仲が良いのは少しやきもきしたけど今はロゼとまた会えたことが大事だった。
食事が終わりロゼと二人っきりで話すことになった。
ロゼとの会話は久し振りで嬉しかった。
話をしていく内にロゼが殿下のことを好きではないことを知ることが出来、そのことに歓喜した。
けれどその事を知るついでにロゼが家に帰りたくないという想いの強さを知ることになった。
最初は殿下達に会うことになるかもしれないと思っているからかと思ったがどうやら違うようだ。
これは調べてみる必要がありそうだ。
そして調べた結果がロゼに危害を加えるものならなんとかしなくてはならない。
取り敢えず今日の所はロゼに会えたことで良しとする。
そして、ロゼはもう殿下の婚約者でもなければ殿下のことを好きな訳でもない。
それなら僕がロゼのこともらっても良いよね?
ロゼリア、覚悟してね。
これから今までの分目一杯君を口説くから。
いつまでも待ってる。
だから早く僕のものになって、僕のことを好きになって、愛してるよ、ロゼリア。
すみません。
ユーリ視点は1話で終わると思ったんですが思いの外長くなりそうだったので次話もユーリ視点です。
なかなか更新出来ずすみません。
なるべく早め早めに更新出来るように頑張ります。
お読み頂きありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。