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本音を言わせて  作者: 虹空クロナ
6/20

花の指輪

遅くなってすみません

澄みわたった青空が広がる昼時。

今日も料理屋『トサント』では


「いらっしゃいませ!」


ロゼリアたちがはきはきと働いているのでした。


 ロゼリアの幼馴染みであるユーリの登場から早5日。

あれからロゼリアの周りにはとくに変わったことはない。ただひとつを除けば。


「やあ、ロゼおはよう。そろそろ昼休憩の時間だよね。一緒にご飯食べよう。」

「・・・」


そう言ってにこにこと笑うユーリをただロゼリアは見つめていた。

 あれからユーリは昼時に毎日訪れている。

そしてロゼリアと一緒に食事をするようになった。

始めはロゼリアも食事を共にすることを拒んだのたが


「でも、どのみち昼休憩はするんでしょう?

だったらせっかくだから一緒に食べようよ。」

「で、でも」

「それに僕はここにご飯を食べに来ているのと同時にロゼに会いに来ているんだからね?」

「・・・」

「ねっ?だから一緒に食べよう?」

「・・・うん」


 ということがあり見事にユーリに論破されたロゼリアはそれから毎日ユーリと共に食事を取っていた。

 今日もまた、ユーリと一緒に食事を取るためにおかみさんとルカスから食事を受け取り、住まいの方に移り、食事を取る。


 食事をしている際ユーリはいつもにこにこと嬉しそうにロゼリアの話を聞いたり、話したりしている。

たまにからかったり、驚いた顔をしたりもし、ロゼリアはユーリが楽しそうにしているのを見て嬉しくなっていた。

ただ、たまにロゼリアが異性の話をするときに見せる笑顔が普段のものと違うように感じ、少し恐く感じてもいた。


今日も食事を取りながら他愛ない話をしていたら、ユーリがある提案をしてきた。


「ねぇ、ロゼ。明日は仕事休みだったよね?」

「うん。明日はお店自体がお休みなの。」

「じゃあさ、明日二人で町に出かけない?」 

「えっ!?」

「せっかく休みなんだからさ。それに昔はよく一緒に出掛けてたけど最近はそんなことなかったからどうかなって思ったんだけどどうかな?」

「えっ、う、うん行きたい」

「良かった。じゃあ明日の1時頃に迎えに行くね」

「う、うん」


 ユーリからの突然の提案に戸惑いながらロゼリアはユーリと久しぶりに出掛けられることに喜んでいた。


 食事が終わり、ユーリは帰っていった後もロゼリアはいつも通りテキパキと働いた。

だが、あくまでいつも通りに働いているつもりのロゼリアだったがその姿は端から見ればとても嬉しそうだった。


「なんかロゼッタ今日はご機嫌だね」


 仕事が終わりみんなで夕御飯を食べている時にそう言ってきたのはキースだった。


「えっそうですか?」

「そうだよ。すっごく嬉しそうだよ。さてはユーリさんと何かあった?」

「えっ!?な、何でユーリが出てくるんですか!」

「あはは、ロゼッタ顔すごい赤い。だって、ロゼッタがご機嫌になったのってユーリさんと話した後からだよ?」

「・・・」

「おっ!なんだロゼッタにもとうとう春がきたか?」

「ゴードンさん!からかわないで下さい!」

「そうですよ、ゴードンさん。それにロゼッタはとっくのとうに春は来てたんですから」

「キース!」


 キースとゴードンにからかわれ、あたふたしているロゼリアに助け船を出したのはユキノだった。


「キースおにいちゃんもゴードンおじちゃんもロゼッタおねえちゃんのこといじめちゃだめだよ」

「ユキノ・・」

「それに恋することはすてきなことよ?

恋はおんなをきれいにさせるんだから」

「ユ、ユキノ?」

「おっなんだユキノも好きな奴でも出来たのか」

「・・・ひみつ」


 キースとゴードンを抑えてくれたユキノにほっとしたロゼリアだったがその後ユキノが言った言葉に驚いた。

それは周りも同じだったようでおかみさん達は唖然とし、双子の片割れであるユキヤにいたっては動揺のあまりユキノの名を呼びながらあたふたしていた。

ゴードンに関してはにやにやと面白そうに笑いながらユキノに話し掛けていたがユキノは少し頬を赤らめ緩む顔を必死に引き締めようとしていた。


食事も終わり、ユキノの爆弾発言が終わった後も少し驚きがまだ残っていたが一先ずは各自明日に備え、就寝した。


 翌日、ロゼリアはドキドキしながらユーリを待っていた。

するとユーリが現れた。

ユーリは貴族然とした格好ではなく、いつも昼を食べに来るときのように焦げ茶のズボンに白のワイシャツに薄茶のチョッキをきた格好をしていた。

 ロゼリアは普段は仕事着である臙脂色のワンピースに白のエプロンという格好だが今日はおかみさんに買ってもらった空色のワンピースを着ていて、髪型は横結びにしている。


 二人はお互いをしばらく見つめていた。

見つめたあとユーリが微笑みながら口を開いた。


「おはようロゼ。いつもの服装も可愛いけど今日の格好は一段と可愛いね」

「そっそうかな?自分だとあまり分からないんだけど」

「凄く似合ってるよ」

「う、ありがとう」

「どう致しまして。それじゃあそろそろ行こうか」

「う、うん。ってちょっと!なんで手を繋ぐの?」

「えっ?だってはぐれたら困るでしょ?」

「それはそうだけど・・・」

「分かったら早く行こう」

「・・・」


 その後町に行く途中も手を繋ぐ繋がないという攻防は続いたが結局いつもと同じようにユーリの勝利でその場は終了した。


 町についたロゼリアたちは昼時だったため、始めにお昼を食べるために近くの料理屋に入り、食事を取った。

 そこではユーリがロゼリアを可愛いやら綺麗やらと誉めたり、自分のご飯を食べさせようとしたり、ロゼリアの髪の先を指で弄ったりし、そんなユーリの行動にいちいち反応し、顔が赤くなるロゼリアを嬉しそうに笑ったりしているのを見ていた周囲の人達に「お熱いね!」「ヒューヒュー」などと囃し立てられながら食事を終えた。


「ねえ」

「・・・」

「ねえ、ロゼリア」

「・・・」

「ごめんってば」

「・・・」


 料理屋でのユーリの人前でした行動に恥ずかしさと怒りと感じたロゼリアはだんまりを決め込んでいた。


「本当にごめんってば。ちょっとやりすぎたんだ。」

「・・・あんなこと人前でやるなんて恥ずかしかったんだからね」

「うん。だからごめんってば」

「ユーリにはどうってことないかもしれないけど私にとってはそんなことないもの」

「・・・うん。ごめんね。どうすれば許してくれるかな?」

「・・・せて」

「うん?」

「~っだから今日1日楽しませてって言ったの!」

「っ!?うん!じゃあ行こうか」


 黙っていたロゼリアだが次第に口を開いた。

それにユーリは苦笑しながら謝り、どうすれば許してくれるのか尋ねていたがロゼリアの言葉に心底嬉しがり、微笑みながらロゼリアに手を差し出した。

一方ロゼリアは自分が言った言葉に恥ずかしさを感じ、顔を赤くしながらその手を握り、お店を見て回った。


 二人は色々なお店を回った。

服屋、時計屋、家具屋、道具屋、帽子屋、飾り物、本屋、お菓子屋などなどお店に入ってはお互いの好みのものをみたり、おかみさんたちへのお土産を買ったりをして時間が過ぎていった。


「たくさん回ったね。・・・そろそろ夕方だし、帰ろうか。」

「あっロゼちょっと待って」

「何?」

「あのさ、まだ疲れてなければでいいんだけど、ちょっと行きたいところがあるんだ。いい?」

「えっ?うっうん。いいよ」

「良かった。じゃあすぐに行こう。こっちだよ」

「・・・うん」


 少し名残しいと思いながら帰ることを切り出したロゼリアをユーリは止め、ロゼリアを行きたいところに連れて行く。

そんなユーリに戸惑いながらロゼリアは手を引かれながらユーリについていく。


 ユーリについていくと段々と町から離れ、森のなかに入っていく。

そのまま進み前にいたユーリが止まったと思い、前を見るとそこは丘の上であり、辺り一面を花で覆われた花畑であった。


「綺麗・・・」

「でしょ?ここをロゼに見せたかったんだ」

「・・・」


 辺り一面に咲く色とりどりの花に目を奪われ、しばらくその場に立ち尽くしていたロゼリアだが、ユーリの「ロゼ」という呼び掛けにはっとし、隣にいるユーリに顔を向ける。


「ロゼ、覚えてる?昔よくお花畑で二人で遊んだこと」

「・・・うん。覚えてる」


 ユーリのその言葉にロゼリアは昔の思い出へと意識を飛ばした。


『ロゼ、お花きれいだね』

『うん!すごくきれい。ユーリつれてきてくれてありがとう!』

『いいよ。ロゼがここに来たければいつでもつれてくるよ』

『ほんとう!約束だよ?』

『うん。約束』

『やったー!ねぇ、そういえばユーリはなにをつくっているの?』

『うーんとね、ちょっとまって。出来た!』

『わぁ、お花のかんむりだ!』

『そうだよ。ではおひめさまにお花のかんむりをかぶせてあげる。はい』

『わぁ、ありがとう』

『それからゆびわもつくったよ。ロゼ、左手のくすりゆびにつけるね』

『なんで左手のくすりゆびなの?』

『あのね、左手のくすりゆびにね同じゆびわをつけた男女はけっこんして、ふうふになったってことなんだよ』

『そうなの?』

『うん。だからロゼ、今はお花のゆびわだけどおとなになったらちゃんとしたゆびわをわたすからそのときはぼくのおよめさんになって』

『ユーリのおよめさん?およめさんになったらずっと一緒にいられる?』

『もちろんだよ』

『ほんとう!じゃあユーリのおよめさんになる!』

『ほんとう!じゃあロゼはぼくのおよめさんだ』


 それはまだ無邪気で自分がどんな存在かどんな役割があったのか全く知らなかったころの記憶。


(あの頃はまだ、凄く幸せだった。

まだ、自分の立場を何も知らないあの頃。

出来るならもう一度あの頃のように何のしがらみもなく、すごしたい。)


ロゼリアは昔の想い出を思いだし、意識を記憶に向けているとユーリが口を開いた。


「ロゼ、左手出して」

「?うん」

「ありがとう。はいこれ」

「っ!?」

「花の指輪」

「ユ、ユーリ?」

「昔もこうやってロゼに指輪とか冠とか作ってあげたら凄く喜んだよね。だからはい、ロゼリア」

「あっありがとう」

「どう致しまして。じゃあそろそろ帰ろうか送っていくよ」

「ありがとう」


(なんだユーリはあの時のことちゃんとは覚えてないんだ・・・)


 ユーリが左手の薬指に指輪をしたことであの頃の約束を忘れていないのだと思ったロゼリアだが、ユーリの言動にあの約束を忘れてしまったと思い、落胆した。

だが、


(でも、覚えてなくてもこの指にしてくれたことは嬉しいな。

ずっとこんな日が続けばいいのに。ずっとユーリと一緒にいたい。)


 和やかに帰路につく二人は気づかなかった。

先程からロゼリアたちを見ている人影がいることを・・・。

遅くなってすみません。

やっと6話目出せました。

9月以降は不定期更新になってしまうのでお待たせしてしまうことがあると思いますがなるべく2週間のペースで更新出来るように頑張ります!


次回から少しずつシリアスに入ります。

続けてお読み頂けたらと思っています。


お読み頂きありがとうございました。

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