突然の再会
「ロゼ、会いたかった・・・」
(これは夢でしょうか?)
「ずっと君を探してたんだ」
(何故、ユーリがここにいるのでしょうか?)
突然の想い人との再会にロゼリアは混乱した。
そしてそんなロゼリアにユーリは満面の笑顔を向け、近づき、ロゼリアを抱き締めた。
「ロゼ、ロゼリア。心配したんだよ」
「・・・・」
「でも無事で良かった」
混乱し、固まったロゼリアだったがユーリに抱き締められたことで固まったことから抜け出す。
「あっあのユーリ?」
「ん?」
「何故ここに貴方がいるの?」
「ロゼリアを探してたからに決まってるでしょ」
「そっそうなの。心配かけたみたいでごめんなさい。それで、その、そろそろ離して貰える?」
「嫌だ」
「ええっ!?でも、離して貰わないと困るというか・・・えっと」
「ロゼリア」
「はい!」
「無事で良かった」
「・・・・」
その後心配させたことを謝りながら一向にロゼリアを離さないむしろ段々と強く抱き締めるユーリと勝ち目のない攻防を繰り広げていたロゼリアだがそこで声を掛けられ、今自分がどこにいるのか思い出した。
「あんたらねぇ、お取り込み中悪いんだけどそろそろ店閉めたいんだけどねぇ、取り敢えず話が長引きそうだし、そこのあんたも一緒に夕飯食べてきな」
おかみさんの言葉の言葉にユーリと共に店の奥に目を向けるとそこにはニヤニヤと笑っているゴードン、心配そうなルカス、苦笑しているキース、見知らぬ相手に緊張してキースの足に掴まってる双子、そして呆れ顔のおかみさんがそこにいた。
それを見たロゼリアは自分の顔か赤くなったのが分かり、すぐさまユーリから離れる。
あっさりとロゼリアを離したユーリは姿勢を正し、笑顔で挨拶をした。
「これは失礼しました。僕はロゼリアの幼馴染みのユーリアス・ラングスタと申します。お言葉に甘え、ご一緒させていただきます」
「あー、そんな、堅っ苦しくなくていいから。ロゼッタも!ぼさっとしてないで早く片付けて夕飯食べるよ!」
「はっはい!」
貴族然としたユーリにおかみさんは苦笑しながら告げ、ぼーっとしているロゼリアを急かした。
おかみさんの言葉にロゼリアは我に返り、慌てて片付ける。
そんなこんなでどたばたしつつ、みんなで夕飯を食べ始めた。
みんなユーリやロゼッタのことに関しては何も言わず、夕飯は終わり、片付けて一段落したところでゴードンが口を開いた。
「で?ユーリくんだっけ?君は何しに来たの?」
「はい。僕は彼女を、ロゼリアを探しにきました」
「ふーん。ロゼリアをねー。そいで見つけてどうすんの?」
「・・・一緒に連れ帰ろうかと思ってます。」
「ふーん。だってよロゼッタ。お前はどうすんの?」
「私は・・・」
「俺は別にそのなんてったっけ?ロゼリア?のことはよく分かんねぇけどよロゼッタに関してはここでの仲間だからよお前がいやならいやでお前の助けになるだけだ。」
「ゴードンさん・・・」
「そうだよ。ロゼッタ。あんたがロゼリア?だろうがロゼッタだろうがあんたはもうあたしらの家族同然だよ。どうしたいかあんたが決めな。」
「おかみさん・・・」
ゴードンやおかみさんの言葉にロゼリアは周りに目を向けるとユーリ以外の他のメンバーが二人の言葉に頷いていた。
それを見て、ロゼリア意を決してユーリの方に向く。
「ユーリ」
「何?ロゼ」
「少し外で二人で話させてもらってもいい?」
「うん。いいよ」
「ありがとう。じゃあ少し外で話してきます」
「気を付けてるんだよ。」
「はい」
ユーリを連れて外に出ることを伝えロゼリアは外に出る。
あたりはすっかり暗くなり、空には星が光っていた。
ドアの近くでユーリと向かいあい、心を落ち着かせるため、深呼吸をし、落ち着いたところでロゼリアは口を開いた。
「まずは心配させてごめんなさい。探してくれてありがとう」
「うん」
「ユーリが私のこと探してくれてたことは凄く嬉しい。」
「うん」
「でも!・・・でも私はあそこへは帰れない。帰りたくない。」
ロゼリアは自分の視界が滲み自分が泣いていることに気付いた。
そんなロゼリアをユーリはまっすぐ見つめていた。
そして涙を流すロゼリアの頬に手を伸ばし、その涙を優しく拭った。
それだけでロゼリアは気持ちが高ぶるのを感じた。
(本当はまだユーリとこのままいたい。一緒に行きたい。
けれどあそこへは帰りたくない。戻りたくない。)
(あそこへ戻ったら私は私でいられなくなる。私は殺されてしまう。あの人達によって・・・)
ユーリへの想いがありながら、自分が戻ったときにどうなるかを考え、その狭間で苦しみロゼリアは涙を止めることが出来ない。
そんなロゼリアに優しい手つきで涙を拭いながらユーリは口を開いた。
「ロゼ、泣かないでロゼ。いいんだ。君が帰りたくないって言うなら帰らなくて。」
「えっ?」
「だから泣かないでロゼ。幸い君がここにいることはまだ誰にも言ってない。だから当分君の居場所はばれない。だからロゼ、泣かないで。」
そう言ってユーリはロゼリアを抱きしめた。
ユーリの言った言葉と抱きしめられているということに驚きあたふたしたロゼリアだがその次の言葉にロゼリアは涙も止まり、固まってしまった。
「でも殿下のことはいいの?」
「えっ?」
「だって、ロゼは殿下の政略的なものとはいえ、婚約者だったんだよ?それにロゼは殿下のこと好きだっ「止めて!」・・」
「止めて!そんなことユーリに言われたくない!」
「・・・」
ユーリに殿下のことが好きなのではと聞かれ、ロゼリアは思わずユーリの口を両手で塞いだ。渇いたはずの涙がまた溢れて視界をぼやけさせた。
それを目を丸くしながらユーリはロゼリアを見つめていた。
「止めて。ユーリだけはそんなこと言わないで。私が本当に好きなのは・・・」
そう言いながら再びロゼリアは泣いた。
泣いたことにより、ユーリの口を塞いでいた手が弱まり、それに気付いたユーリがそっとロゼリアの腕を掴み、口から離した。
「ロゼ、ごめん。」
「・・うっ・・ひっく・・・」
「ロゼ・・・」
泣いているロゼリアの名前を言いながらユーリはロゼリアの頭を優しく撫でた。
暫くして、ロゼリアは少し落ち着き、再びユーリと目を合わせる。
「ロゼ、ごめん。泣くと思わなかったんだ」
「ううん。私の方こそ取り乱しちゃってごめんなさい」
「それでロゼ、改めて聞くけど君は殿下のことが好きではないんだね?」
「・・うん」
「そっか。それじゃあ遠慮しなくていいね」
ロゼリアの気持ちを確かめたユーリは笑いながら小声で話した。
「えっ?ユーリごめんなさい。最後の方よく聞き取れなくて、なんて言ったの?」
「ううん。何でもない。それじゃあロゼリア」
「何?」
「君はこれからもここで生活をするんだね?」
「・・うん」
「分かった。それなら僕はまた君に会いにくるよ」
「・・・えっ?」
「だってやっとの想いで君に会えたんだ。このまま君と会わないなんて嫌だからね。それとももう会わない方がいい?」
「うっううん。そんなことない。私も会いたい。」
改めてここで生活することを聞かれ、肯定することでもうユーリと会えないのではないかと思っていたロゼリアはまた会いにくるというユーリの言葉に驚き、そして嬉しくなった。
そんなロゼリアの手を取り、何?と思ったロゼリアに対し、ユーリは手に口付けた。
「ロゼリアこれからはまた君と会えるね。君はもう殿下の婚約者じゃなくなった・・・。だから覚悟しておいてね。」
そう言ってユーリはロゼリアの手を離し、笑った。
その笑顔と瞳を目にし、ロゼリアは何故か背中が震えた。
そんなロゼリアの反応を楽しんだ後ユーリは「今日のところはこれで帰るね。」と告げ、去っていった。
あとに残されたロゼリアは数分して何が起きたか理解し、顔をこれでもかというほど赤く染めた。
そして店の壁を背にその場にずるずるとへたりこんだ。
数分して、落ち着いてきたロゼリアは店の中に戻った。
店の中ではみんなが心配そうにこちらを見てきた。
そんなみんなに心配してくれた有り難さと今まで言えなかったことへの申し訳なさで複雑な表情をしながら、口を開いた。
「すみません。色々ご迷惑をおかけして」
「そんなのいいんだよ、ロゼッタ。」
「そうだぞ。ロゼッタ。誰にだって言えないような事情のひとつやふたつあるもんだ」
そう言って申し訳なさそうにいているロゼリアにおかみさんやルカスは笑顔でロゼリアを迎えてくれた。
そんな二人にロゼリアは緊張しながらも口を開いた。
「あの、私本当はロゼッタじゃないんです。本当の名前はロゼリアっていうんです。私元いたところから逃げて来たんです。」
「・・・」
「元いたところで私取り返しのつかないことをしてしまって、」
「・・・」
「そのことに関して、親族に何されるか分からなくて怖くて逃げて来たんです。」
「逃げるなんてって思われるかもしれないですけど私はもうあそこへは戻りたくないんです。だからどうかこのままここへおいてもらえないでしょうか?」
ロゼリアの告げた言葉に周囲は静まった。
その静まりを断ったのはおかみさんだった。
「ロゼッタ。さっきも言った通りあんたがしたいようにすればいいさ。それにあんたが前どういうことをしていようがあたしらにとっちゃあんたはロゼッタだよ。あたしらの大切な家族だ」
「おかみさん」
「おかみさんのいう通りだよロゼッタ。僕らはロゼッタの仲間だ、家族だ。それにロゼッタがいなくなったらユキノとユキヤが寂しがるよ」
おかみさんに続いて口を開いたキースの言葉にユキノとユキヤはロゼリアに抱きついてきた。
「ロゼッタおねえちゃん、いなくならないよね?」「ならない?」
双子の言葉にロゼリアは微笑み双子を抱きしめた。
「いなくならないですよ」
「「ほんとう?」」
「本当ですよ」
ロゼリアがいなくならないことわ告げると双子は喜び頬を赤らめた。
そんな風にその場は収まり、ロゼリアはこれからもここで働くことを許された。
そしてまた、いつもみたいに双子を寝かしつけ、自室に戻ろうとしたところでキースに会った。
せっかくなのでキースに今日の騒ぎのことを詫びた。
「いいよ。気にしてないから」
「そうですか?ありがとうございます。」
「それより違ってたら悪いんだけどロゼッタってユーリ?さんのこと好きなの?」
「・・・えっ?」
キースのいきなりの発言にロゼリアは思わず頬を赤らめてしまった。
「なっなんで」
「だって、ロゼッタが彼のこと見てるとこを見てるとそうなのかな?って思って」
「・・・そうですけど」
「やっぱりね。ロゼッタを見てるとねなんか僕と一緒だなって思ってたんだよね。」
「それって」
「うん。ずっとずっと誰か一人を好き、いや愛してるって想っているってこと。なのにそれを伝えられていない。ううん。伝えられないでいる。そう感じたんだ。」
「・・・」
キースの言った言葉に間違えはなかった。
ずっと親族から婚約者へのみ気持ちを向けるようにと言われてきていたため、誰かを好きになること、誰かと恋仲になることなど許されて来なかった。
そのため、想いを伝えることが出来なかった。
「だからかな、ロゼッタには諦めないで幸せになってほしいんだ。僕も諦めるつもりはないよ、当然。ロゼッタは今何のしがらみも無いんだから気持ちを伝えることが出来るよ。だから諦めないで」
キースはそう言ったあと、「おやすみ」と告げ、その場を去った。
そんなキースの背中を見送ったあとロゼリアは自室に入り、布団に潜った。
布団に潜り、ロゼリアは今日起きたことを思い返し、ため息をついた。
それでもユーリに会えたこと、また会えることを思い、うれしくなり、頬が緩んだ。
そして明日も早いことを思い出し、眠りにつこうとするが帰り際のユーリを思い出しなかなか寝付けず寝返りを打っていたが暫くするとロゼリアは意識を手放した。
そんなロゼリアはユーリのしたことや見たことのない笑顔や瞳に気をとられ、ユーリが何を言っていたかを全く聞いていなかった・・・。
やっと、ユーリをしっかり出すことが出来ました!
そしてキースに関してはロゼリアの話が落ち着いたら少し語ろうかなと思っています。
キースだけでなく、あの人やこの人他の方々についても語る予定です。
ですがまずはロゼリアの幸せ目掛けて頑張ります!
お読みいただきありがとうございます。
まだまだ続きますので引き続き読んでいただけたらと思っています。