新たなる日常
新キャラ登場
少しロゼリアのしゃべりかたを修正しました。
晴れ晴れとした昼時 店は食事をしにきたお客さんで溢れている。
「ロゼッタ!料理持ってて!」
「はい!」
「ロゼッタちゃ~ん、注文したいんだけど。」
「はーい!今行きます。」
そんな中、今日もロゼリアは元気に働いている。
ロゼリアがけがを負い料理屋『トサント』のおかみさんに拾われてから1ヶ月が経った。
けがはすっかり治り、店で働くことにも慣れ、今ではすっかり店の看板娘である。
昼時は過ぎ、お客さんも捌けてきて、ロゼリアは一息つく。
「いやー、しかしロゼッタちゃんもすっかり慣れてきたね。」
そう言ったのは店の常連さんのトムさん。来る時間は不定期でどんな仕事をしているのか謎な人物である。
「はっはっはっ!ここに来たばっかの頃はそりゃー堅っ苦しくて少しは肩の力抜けって言ってたな。」
そう言ったのは店の主人のルカスさん。
ルカスさんの言葉にその場にいた人達は笑い出す。
(そういえばもうここに来てしばらく経つな…。)
みんなが笑っているのを見ながらロゼリアは暖かい気持ちになり、微笑みを浮かべながらここに来た頃のことを考えた。
けがが治ったロゼリアをおかみさんは町に連れ出し服や下着、歯ブラシなど生活に必要なものを恐縮するロゼリアを余所におかみさんは「遠慮しないの!必要なものなんだから!」といって笑いながら町を歩く。
町を歩きながらロゼリアはおかみさんに色々な店に連れていかれ、町の人達を紹介される。
初めはお嬢様口調がむけず、みんなに堅苦しいと言われたロゼリアだが次第に打ち解け、他愛のない話も出来るようになった。
ぎこちなかった作業もスムーズに出来るようにもなった。
この1ヶ月ロゼリアは今まで味わったことのない穏やかな生活に幸せを感じていた。
これまでのここでの生活について考えながら働いているとすっかり夜になり、店を閉め、みんなで片付けを始めた。
「ロゼッタ。ルカスさんがそろそろ晩御飯にするって」
「分かりました。今行きます。」
そう言ってロゼリアに声を掛けたキースに返事をし、一緒にテーブルへ向かう。
キースはロゼリアと同様に住み込みで働く青年である。
年もロゼリアと同じで気さくで親しみやすい性格で来たばかりのロゼリアともすぐに打ち解けた。
赤茶で長めの髪をひとつに縛っている。目は茶色で顔立ちは美形の部類に入るくらいには整っている。その上、性格がいいことから周囲に気に入られている。
キースと連れ立ってテーブルに行くと双子が寄ってきてロゼリアたちの手を引っ張り席へ座らせる。
全員が席に着き、他愛のない話をしながら食事をしている。
そんな時でもキースとは一番話すことが多い。
今日もキースと話で盛り上がっていると
「お前ら相変わらず仲良いなー。」
前からゴードンさんがニヤニヤと笑いながら話しかけてくる。
「まるで付き合いたてのカップルみたいだな。」
「仲が良くていいじゃないですか」
「もう、ゴードンさんはいつもそうやってからかうんだから」
からかってくるゴードンにロゼリアとキースは苦笑しながら返事をする。
ゴードンさんは通いで働いている人で主に厨房を担当している。
年は30歳ぐらいで無精髭をはやし、昔なにか武術でもしていたのではないかと思われる体格の良い人物である。
髪は短髪で金髪、それに目は青色をしている。いつもニヤニヤしているか気だるそうにしている。
飄々としていて本心が見えない人物である。
「お前らそんなに仲良いのになら付き合えばいいじゃねえか。」
そう言ってゴードンさんは面白そうに二人を見てくる。
それに対し、ロゼリアたちは苦笑しながら肩をすくめるのだ。
そんないつも通りの食事をし終わるとゴードンさんは帰っていき、ロゼリアたちは家の方に移り、湯浴みをし、寝仕度を整える。
ロゼリアは双子の髪を拭いてやったり、布団をかけてやったりし、寝かしつけた。
双子を寝かしつけ、自分の部屋に戻り、自分も布団に入り、眠りについた。
そんな日々が続いたある日、ロゼリアはいつも通り元気に働いている時、それは起こった。
「こ、こんにちは。」
「いらっしゃいませ!あっマルクスさん。こんにちは。今日は何にしますか?」
「あっあの…ロゼッタさん!」
「はい?何ですか?」
「…」
「マルクスさんどうしましたか?」
様子の可笑しいマルクスに心配して、ロゼリアは声を掛けた。
すると、俯いてた顔を上げ、顔を赤くしながらロゼリアを真っ直ぐ見て口を開いた。
「…あっあの、突然で申し訳ないのですが…ぼっ僕と付き合ってもらえませんか!」
ロゼリアは一瞬何を言われたのか分からず固まったが我に返り、驚く。
「……えっ?ええっ!?」
「あっあの、前からそのロゼッタさんいいなって思ってて、それでそのロゼッタさんと付き合えたら嬉しいなって思って僕で良ければ付き合ってもらえないかと…」
「えっでも、そんな、急に言われても…」
「返事は急ぎません。けど考えてもらえないでしょうか?」
「…」
「じゃあ、僕はこれで失礼します!」
「えっ!?ちょっと、マルクスさん!」
「考えておいて下さい!」
そう言い捨てるとマルクスは店から出ていった。
「…」
残されたのはロゼリアは周囲を見渡すと一部始終を見て心配そうにこちらを見ていたり、ニヤニヤと笑っていたり、「青春だなぁ」と感慨深げにしていたりと各々にリアクションしているお客さんたちやおかみさんたちがいた。
ロゼリアはそんな周囲のリアクションの下で働くことになり、大変居心地が悪くなった。
居心地の悪いまま時間は経ち晩御飯の時間になり、ゴードンさんがニヤニヤしながら口を開く。
「いやー。しかし、昼間のあれは凄かったな、ロゼッタ。」
「…」
「あのマルクスだっけ?坊主なかなか凄いことやるな。」
「…」
「聞いたらおめぇさんより2つ下らしいじゃん。ロゼッタも罪におけねぇなー。」
「…」
「おーい。ロゼッタちゃーん。聞いてますかー。」
終始ニヤニヤしてるゴードンと終始仏頂面で無言を貫き通すロゼリアの攻防に始めに割って入ったのはキースだった。
「もう、ゴードンさんそれぐらいでいいじゃないですか。あんまり言うとロゼッタが拗ねちゃいますよ。」
「そうだよ。ゴードン。あんまり人をからかうもんじゃないよ。」
「ゴードンおじちゃんめっ!なの。」「めっ!なの!」
「わっはっは!ゴードン味方がいねぇなぁ。」
キースに続きおかみさん、ユキノ、ユキヤ、ルカスとみんなで口を挟む。
言われたゴードンは「しょうがねぇな。」と呟き肩をすくめてその場は収まった。
双子を寝かしつけ、部屋に戻ったロゼリアは今日あったことを思い、深く溜め息をついた。
予想だにしていなかった状況にまだ頭がついていかない。
ここに来てから恋愛に関し、関わることが無かったため安心していた。
婚約者とのことがあったためロゼリアは暫く恋愛に関することを避けてきた。
それでもキースと親しく出来たのは自分と同じだと思ったから。
何か事情があると思ったから。
キースには既に想っている人物がいると感じたからである。
それがわかっていたからキースとは恋愛感情など抜きに友人として接せられた。
それに恋愛を避けていたのはそれだけではなかった。
それはロゼリアが今でも忘れられず、ひたすら想い続けている彼のことが思い出されるからである。
ただでさえ、ふとした瞬間に思い出されるのにこれ以上思い出したくなかったのである。
ロゼリアはどんなにここの生活に馴染んでも親族のことや彼のことを忘れられないことは分かっていた。
そう思いつつこんなことではマルクスとはやはり付き合えないと結論付け、ロゼリアは布団に潜る。
(もう、忘れられたと思ってもやっぱり私はあの人のことが…)
そう想いながらロゼリアは眠りにつく。
その頬には一筋の涙がつたった…。
因みにルカスさんの髪色は焦げ茶色で目も同じ色です。
未だにロゼリアの想い人出てきませんね。すみません。そろそろ出す予定です。
キースや他のメンバーについても今後語る予定です。宜しければお楽しみに。
お読み頂きたいありがとうございます。