とある少女の独白~予期せぬ展開~
あの時の私はまだ自身のおかれる状況を予期しておらず穏やかな学園生活を送っていました。
「おーいクラス委員、伝えたいことあるから後で職員室に来てくれ」
「はい!分かりました」
入学式から何ヵ月か経ち最初は慣れないことに戸惑いのあった学園生活もその頃には少しずつ授業や規則などにも慣れてきて他のことにも目がいくようになり、入学した当初に決まったクラス委員の役割もそつなくこなせるようになり、勉強も仕事も楽しくなってきました。
あれからハーヴェスト様とお話しする機会もなく、また平民である自分が貴族であるあの方に簡単に話しかけることも出来ずあの時のハンカチも返すじまいでありました。
そんな時あの方に話しかける機会が出来たのです。
「生徒会、ですか?」
「ああ、そろそろ3年も引退し、新しい役員を決める時でな、今いる2年はそのままで多少役職が代わるくらいなんだが抜けた3年のかわりに1年が2人程必要なんだが今んところ1人しか決まってなくてな、そこでダノンならどうかという話が持ち上がってなどうだ?やってみる気はないか?」
先生の話を聞いた時私は胸が高鳴りました。
もともとクラス委員の仕事に遣り甲斐を感じていたのと同時にもっと色んな仕事をしたいという想いがあったからです。
そしてそれ以外にも生徒会に入ればあの方、ロゼリア・ハーヴェスト様と話す機会があると感じたからです。
ハーヴェスト様は学園一の才女であったため、生徒会役員の1人でありました。
そのため、生徒会に入るということはハーヴェスト様と共に仕事をするということ、それなら必然的に会話をする機会があると考え、私は二つ返事で生徒会入りを了承しました。
それから生徒会入りは着々と進み書記として正式に任命されました。
そして仕事をしていく中でロゼリア・ハーヴェスト様と会話をする機会が出来ました。
残念ながらロゼリア様は入学式のことを覚えていませんでしたがロゼリア様はいつも優しく接してくれてロゼリア様のことが更に好きになりました。
ロゼリア様だけでなく、他の生徒会の方も私が平民であることを気にせず接してくれていました。
いつも場を楽しませてくれるマリアン・ブリューゲン様や真面目だからこそ差別を嫌い貴族平民問わず接してくれるカイン・セドリック様、唯一の同じ学年であるヒューリ・バンデス様。
そしてリゼント国第2王子であるシルベルト・デュサ・リゼント殿下。
この時の私はこのお方、殿下がまさか自分の人生に大きく関わることになるとは思ってもいませんでした。
生徒会の仕事をしていく中で必然的に役員の方々と話をする機会が増えてきます。
それは殿下も同様でした。
殿下は私からすれば近寄りづらい印象を受けていましたが話をしてみるときつい物言いをするものの優しい面もあり、接している内に慣れてきて畏まらずに話せるようになりました。
殿下も最初はしかめっ面だったのが笑顔を見せてくれました。
最初はその変化に恐縮しながらも嬉しさがありましたが段々と殿下の様子がおかしな方向に変わっていき、戸惑いと恐怖を感じました。
最初は生徒会室で他愛のない会話を少しする程度でしたが次第に学園内で見掛けたら声をかけられ、そのうちにやけに会う回数が増え、ふと視線を感じて後ろを振り向けば隠れつつこちらを見てる殿下の姿。
そのうちに隠れるのも止め、堂々とこちらを凝視し始めました。
さらに私が他の男性と話していると不意に現れ、私をその男性から離し何故自分以外と話をするのかと攻められたり、「ミア・・・」と熱に浮かされたような瞳をしながら名前を呼んできたり、止めて欲しいと告げているのに「お前と俺の仲だろう?」とそんな仲になった覚えもないのに腰に手を這わせてきたりと内容が次第にエスカレートしていきました。
そしてそんな殿下の行動と比例するかのようにロゼリア様の様子も変化していきました。
最初は私にも朗らかな笑みを向けていましたが殿下の態度が変化するにつれ私に向ける笑顔がひきつったものとなり、どこか焦りのような雰囲気を出すようになりました。
そんなある日、階段を降りていると残り数段のところで後ろから押され階段から落ちました。
残り数段だったため、大した怪我はなく、少し打ったところに痛みが残る程度でした。
誰だろうと後ろを振り返るとそこにはロゼリア様がいらっしゃいました。
「ロゼリア様・・・」
「・・・・・んに・・・・ませ」
「えっ?」
「いい加減にしてくださいませ!」
「っ!?」
「いい加減もう殿下に言い寄るのは止めて下さいませ!」
「ロゼリア様?何を仰っているのですか?私はそんなことしていません」
「嘘を仰らないで下さい!では何故殿下があなたの傍にいるのですか!何故殿下があなたを好いているという噂が流れているのですか!この女狐!」
ロゼリア様は今までに見たこともないほど叫び声をあげ、私を攻めていましたがその瞳はどこか虚ろでいつもと様子が明らかに違いました。
そんな時、ある人物が私たちの前に現れました。
「ロゼ?それにダノン嬢?ここで何をしているんだい?」
「ラングスタ様・・・」
「ダノン嬢今日は。何故君は床に座っているんだい?」
「えっ、あの階段を踏み外してしまって」
「そうなのかい?大丈夫?」
「あっはい。少し打ったところが痛いだけなので」
「そうか、でも一応保健室に行った方がいい。ほらっロゼもそこで突っ立ってないで一緒にダノン嬢を保健室に連れて行こう」
「邪魔しないでユーリ」
「ロゼ?」
「邪魔しないでと言っているの!私はこの女狐に言わないといけないの!」
「ロゼ何を言っているの?どうしたんだい?最近様子がおかしいよ?」
「私はどこもおかしくない!それよりも早くこの女をなんとかしないと、私は、私は!」
「ロゼっ!ロゼっ!落ち着いて・・・ロゼリア!」
「っ!?・・・ユーリ?私は何・・を・・・?・・・・っ!私は何てことを!ミアさんごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「いっ、いえ大丈夫ですからそんなに謝らないで下さい」
「本当にごめんなさい!私どうかしてたわ」
ロゼリア様の暴走を止めたのはロゼリア様の幼馴染みであるユーリアス・ラングスタ様でした。
ロゼリア様はまるで憑き物がとれたかのように瞳に輝きが戻り、ひたすら私に謝罪しました。
そんなロゼリア様をラングスタ様はロゼリア様の肩を抱きよせ、ロゼリア様を慰めていました。
その光景を見た私は何故この2人が婚約者ではないのだろうかと思うほどに自然な光景でした。
一度は以前のようなロゼリア様に戻ったもののその後ロゼリア様はまたしても虚ろな瞳で普段ならしないようなことをされました。
階段の時よりもロゼリア様の行動はエスカレートし、教科書はビリビリに、階段から突き飛ばされ、謂れのない噂をたてられ、罵詈雑言を吐かれるなどと本当に普段のロゼリア様ならあり得ない行動でした。
また、そんなロゼリア様に構わずむしろ嫌悪を向けていく殿下は私への態度もロゼリア様への態度も改めることなく、私にくっつき、ロゼリア様へは嫌悪を向けました。
このままではいけないと思った私は殿下の従兄弟であり、ロゼリア様とも付き合いのあるマリアン様に相談しようとしておりました。
なのに・・・・
「ロゼリア・ハーヴェスト侯爵令嬢
君との婚約を破棄させてもらう!」
何故こんなことになってしまったの・・・?
やっと更新出来ました。
ミア視点あと1話の予定です。
次回1話のミア視点となります。そして1話の新事実発覚です!・・・多分。
お読みいただきありがとうございました。