第二王子との会話
シルベルト&新キャラ登場です!
そこは豪奢な部屋であり、その部屋の主人である人物もまた派手な外見をしていた。
この執務室の主であるシルベルト・デュサ・リゼントは銀の髪に深い青の瞳を持ち、その容姿は年齢問わず多くの女性を魅了するような端整な顔立ちをした青年であった。
そんなシルベルトは今顔をしかめ、書類に向かっている。
「ふぅ」
「殿下そろそろ休憩なさったらどうですか?」
「そうだよ、殿下。そんなに根をつめても無理が祟るだけだよ」
「・・・そうだな、少し休憩しよう。だがマルクスお前は働かなさすぎだ」
「えぇー、そんなことないよ」
「はぁ」
休憩もせず書類仕事をしていたシルベルトにシルベルトの護衛をしているカインと執務室を訪れていたマルクスが休憩を勧め、休憩することになった。
カイン・セドリック。
シルベルトの護衛兼友人であり、マリアンジュ学園では騎士科に在籍し、その成績は学年トップを誇る。
シルベルトと同い年であり、幼い頃からシルベルトの遊び相手として、将来護衛としてシルベルトの傍にいた。
セドリック家は代々騎士を輩出する武家の家柄であり、次男であるカインも例外ではない。
カインは主であるシルベルトを第一に考え常に行動し、堅実な性格をしているが思い込みが少し激しく、一度そうと思ったことには頑として考えを曲げない。
マリアン・ブリューゲン。
公爵家の一つであるブリューゲン公爵家の嫡男であり、シルベルトの同い年の従兄である。
金髪碧眼に柔和な顔立ちをした青年であるが軽薄な態度を取っている。
しかし、その容姿と優秀さから多くの女性に騒がれ、本人もそれに応じてはいるが本命という存在は聞いたことがない。
そんな二人に言われ、侍女が運んだ紅茶を一口飲み、一息ついたところでシルベルトは口を開いた。
「そう言えば。ロゼリア・ハーヴェストについて何か詳細を掴むものはあったか?」
「うーん、それがね、どうも彼女既に屋敷に戻っているようなんだ」
「なに?」
「いやね、父上が言うにはね今日ロゼリア嬢は陛下に謁見しているようなんだ」
「なんだと!?何故それを早くいわない!!」
「いや言おうとしたんだけどシルが全然人の話聞かないからさ」
「うっ!」
シルベルト達はロゼリアに婚約破棄を叩きつけたあの日からロゼリアが学園へ登校してくることがなく、家へ訪ねても体調を崩したの一点張りであり、ハーヴェスト家の執事がそのあたりから周辺をうろついてることからロゼリアが失踪したと考え、内々にロゼリアを探していた。
シルベルトはあの日ロゼリアに婚約破棄を叩きつけたは良いものの父である国王からの了承は得られず婚約破棄は無効となった。
だがシルベルトは諦めず今もなおミア・ダノンとの結婚を願い、内々に動いていた。
「それでロゼリアはいつ王宮へ来るんだ?」
「えっ?もう来てると思うよ」
「っ!?お前は何でそうっ!」
「まあまあ」
「何がっまあまあだ!」
シルベルトとマリアンが軽く喧嘩をしているとドアがノックされた。
「入れ」
シルベルトが入室の許可を出すと部屋の外にいた人物は入室した。
「失礼いたします。シルベルト殿下」
「お前はっ!?」
「お久しぶりでございます。シルベルト殿下」
「ロゼリア・・・ハーヴェスト・・」
そこにいた人物とは今話題になっていた人物、ロゼリア・ハーヴェストだった。
ロゼリアは完璧な笑顔と礼をとり、シルベルトの目の前に立った。
「っ何しに来た!ロゼリア・ハーヴェスト!」
「まあ、殿下仮にも婚約者に何しに来たとは何ですか?何かなければ来てはいけないんですか?」
「誰が婚約者だ!お前はもう俺の婚約者ではない!婚約は破棄したはずだ!」
「それはあくまで殿下の独断であることは既に陛下にお聞きいたしました。ですから私はまだ殿下の婚約者であり、将来の伴侶でございます」
「俺はそんなこと認めていない!ミアを酷い目にあわせたお前なんかと結婚などするものか!」
「まあ、殿下少々お言葉が汚いですよ」
ロゼリアを前にし、怒鳴り散らすシルベルトとそれを意に介さず微笑みを浮かべながら淡々と話すロゼリア。
どちらも引く気はさらさらないようだ。
「まあまあ、二人ともそれくらいにしたら?」
「これはブリューゲン様お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「うん。ロゼリア嬢も元気そうで何よりだよ。まあ、積もる話もあるだろうから取り合えず座ってお茶でも飲もう」
「そうですね。そうさせていただきます」
マリアンの仲裁により、一先ずは二人の口論は止み、ロゼリアを新たに交えたお茶会が始まった。
因みにロゼリアとシルベルトは向かい合うようにテーブルを挟んで座り、マリアンはシルベルトの隣に、カインはシルベルトの後ろに、さらにロゼリアの供をしている二人はロゼリアの後ろに立っていた。
「さて、単刀直入に申し上げますが殿下、今度王宮で主催される夜会には私をエスコートしてください」
「断る!俺はミアをエスコートし、そこでミアとの婚約を発表する」
「まあ、ご冗談がお上手なこと」
「冗談であるか!」
「でしたら、そのようなことはお止めくださいませ。私は愛人や側室、浮気相手という存在は一切認めません」
「何故お前に指図されなければならない!」
「当たり前です。私は次期貴方の妻です。それを言う権利はございます」
「だから、お前を妻にするつもりはないっ!」
「そんなことを仰られては私もついうっかりと手や口が出てしまいそうです」
「何?」
「ですからつい言ってしまうかもしれません『ミア・ダノンを殺せ』と」
「なっ!?」
「今までは何とか抑えてきましたがそろそろ私も限界です。ですからつい口や手が勝手に動いてしまうかもしれません」
「なっ!?お、お前は何を言っている!それは立派な脅迫だ!ただで済むと思っているのか!」
「・・・」
「大体そんなことが簡単に出来ると思っているのか」
「殿下。我が家はハーヴェスト家です。ハーヴェスト家に不可能はございません」
「っ!?」
「例えそれが一人の娘を殺すことでもその死を隠蔽することも可能です」
「・・・」
「では殿下、夜会で私をエスコートしてくださいますよね?」
「っ!ロゼリア・ハーヴェスト!先程から貴様は殿下に何ということを言っているのか!それに殿下とミア嬢は相思相愛である!お前の入る隙など既にない!」
「少々口煩い犬がおりますが」
「なっ!?貴様っ「お黙りなさい」」
「貴方は誰に口を聞いているのですか?私はハーヴェスト家の人間です。貴方とは地位が違います」
「・・くっ!」
「それでは殿下今日のところはこれで失礼いたします。夜会の日を楽しみにしています。ブリューゲン様もお元気で」
「ああ、ロゼリア嬢も元気で」
「ああ、そうでした。殿下どんなにあの娘を隠したとしても私達は必ず見つけ出します。そのことをゆめゆめお忘れなきように」
ロゼリアの放った言葉の数々にシルベルトは途中から言葉をなくし、カインは怒りに顔を赤く染め、マリアンだけが変わらず飄々とした面持ちでいた。
言いたいことを言い終えたロゼリアは釘を刺した後部屋を退出した。
「何なんだあの女はっ!?」
「申し訳ございません殿下、あのようなことを言わせ続けてしまいました」
「ミアを諦め自分と結婚しろだと?おまけにミアを囮にまでしてっ!」
「殿下。やはりあの女は始末した方がよろしいのでは」
「まあまあ、二人とも落ち着きなよ」
「これが落ち着いていられるか!」
「そうです。マリアン様、あの女を野放しにしておけば殿下の御身に関わります」
「そう焦らないの。まあ、ロゼリア嬢のことは置いておいて、ミア・ダノン嬢に関してはもう既に隠してるんでしょ?」
「ああ、そうだ。父上にもばれないように部屋に隠れさせている」
「ふーん、じゃあダノン嬢に関しては大丈夫なんじゃない?それにダノン嬢はシルのことを愛しているんでしょ?」
「そうだ」
「じゃあどんな弊害があっても大丈夫なんじゃない?」
「それもそうか。そうだよな!俺とミアは愛し合っている。今さらあの女が出てこようが関係ない」
「そうそう、そのいきだよ」
ロゼリアの言葉に怒りが爆発していたシルベルトとカインだったがマリアンの言葉により、何とか落ち着きを取り戻した。
「それじゃあ僕はもう行くかな」
「もう行くのか?」
「まあ、僕も別に何もしてない訳じゃないからね」
「そうか」
少しシルベルトと談笑した後、マリアンは執務室を出ることを伝えた。
その頃にはシルベルトには穏やかな笑みが戻っていた。
「そうだ、カインすまないが剣の稽古をこのあと入れたい。キールのところへ行って許可を貰ってきてくれ」
「承知しました」
「じゃあ僕ももう行くよ」
「ああ、色々ありがとうなマリアン」
「ははっ!いまさらだな。またな」
「おう」
「それでは行って参ります」
「ああ、頼んだぞ」
帰る予定だったマリアンとシルベルトに用事を頼まれたカインは同時に部屋から出た。
出たところでマリアンが口を開いた。
「なあ、カイン。お前は本当にダノン嬢と殿下が相思相愛だと思うか?」
「?殿下がそう仰っているのだからそうであると思いますが?」
「ふーん、殿下がそう言ったからねぇ・・・」
「マリアン様?」
「いんや、何でもない。それじゃあカインもまたね」
「はい。お気を付けて」
マリアンの質問に何を今更という風にカインは答えたがマリアンが少し考え込むような仕草を見せたことから疑問に思ったがその様子もすぐに消え、マリアンは去っていった。
(殿下がそう言っていたからねぇ・・・。パット見彼女がシルベルトに好意を寄せてる気は全くしないけどね・・・。まあそれを誰にも言う気もしないけどね。)
(それにしても愚かなことだ。自分の気持ちのみを押し出し、相手の気持ちを無視する。俺が導いた事とはいえ、愚かなことだ。そうしてお前は道を外して行く。その先には何があるのかも知らずに)
(しかし、ロゼリア嬢は未だに囚われたままか・・。今後どうなるのかね)
マリアンは馬車に乗り、帰り道を通りながら思案する。
それは彼が誰にいうこともない思考の断片。
彼はこれから自身の従弟に起こることを予測しながらもそれを黙って傍観する。
その結末はおそらく、彼が望むものであるから彼は従弟を止めはしない。
例え、それで悲しむものがいようとも動き出した歯車を彼は止めるつもりはない。
その一方で彼がみたい結末の舞台とは違うもののようでつながりのある舞台。その舞台の先頭に立たされた一人の少女のことが脳裏によぎる。
改めて新キャラ登場です!
始めはシルベルト視点を書こうと思ったのですが無理があったので断念しました。
そして何故か最後らへんはマリアン視点のようになりました。
次回からはミア・ダノンさん出る予定です!
その後は数話ミア視点で進む予定です、多分。
お読みいただきありがとうございます。