謁見の間にて
ディオール等が話していた頃、ロゼリアは王宮に向かう馬車に乗っていた。
馬車の中にはロゼリアの他に30代の執事と侍女がおり、どちらもその胸元には金色のバッチが光っていた。
沈黙の中、口を開いたのは執事の方だった。
「お嬢様。今回の入城に関しては大旦那様から陛下に既に許可を取ってあります。」
「あら、そうなの?」
「はい。それから陛下がお嬢様にお話があるそうで入城しましたら陛下の下へ向かうようにと仰せつかっております。」
「陛下が私に・・・。分かりました」
話を終え、再び沈黙した中、馬車は刻々と王宮に近付いていた。
しばらくすると馬車は王宮へ着き、ロゼリアは執事のエスコートで馬車から降り、陛下の従者に連れられ、後ろに控えた二人と共に謁見の間へと向かう。
謁見の間の前まで着くと従者は入室の許可をもらい、ドアを開け、ロゼリアの入室を促す。
ロゼリアが謁見の間に入るとそこは既に人払いされており、部屋にいるのは国王陛下と王妃そして宰相のみであり、案内した従者もロゼリアたちが入室したのを確認した後速やかに一礼し、退出した。
ロゼリアは謁見の間の中央へ進み、国王陛下等に礼をした。
「ハーヴェスト家が長女ロゼリア・ハーヴェスト只今参上しました」
「畏まった挨拶は良いから顔を上げてくれないかい?ロゼリア嬢」
礼をすると頭上から優しげな声が降り、ロゼリアは顔を上げた。
顔を上げると目の前には国王と王妃が玉座に座っており、どちらも申し訳なさそうな、困った笑みをロゼリアに向けていた。
「ロゼリア嬢、久しぶりだね。元気にしていたかい?」
「はい、陛下。お陰さまで元気でございます」
「それは良かった。ここ1ヵ月ほど体調を崩していたみたいだからね」
ロゼリアが第2王子から婚約破棄を告げられ、姿を眩ました時のことは祖父により、体調を崩し、臥せっているということになっていることを聞かされていたロゼリアは動揺することもなく、口を開いた。
「その節はご心配をお掛けしたようで申し訳ございませんでした。陛下や王妃様にいただき、無事、体調も戻りました」
「何にせよ貴方の体調が戻って良かったですわ」
「ありがとうございます。王妃様」
ロゼリアは自分が体調を崩したが無事体調が回復したことを伝え、話が一段落したところで陛下が口火を切った。
「さて、ロゼリア嬢今回君を呼んだのは他でもないシルベルトのことだ」
「・・・」
「この度はロゼリア嬢には大変失礼なことをした」
「いえ、陛下。私はあまり、気にしておりません。それに今回のことが殿下の独断であることは既に祖父から伺っております」
「ああ、確かに今回の件はシルベルトの独断であり、王である私はロゼリア嬢との婚約破棄を認めた覚えはない」
「その真実があるだけで良いのです。私と殿下の婚約がまだ保たれているということが確かであれば私はそれで良いのです」
「しかし、シルベルトは今回ロゼリア嬢に婚約者よりも他の令嬢を優先するということをした。ロゼリア嬢が嫌なら婚約破棄をしても良いのだよ?」
「いいえ、陛下私は殿下との婚約破棄を望みません」
「まだ、あやつの婚約者でいてくれるのか?」
「それが私の望みでございます」
「そうか・・・。そなたがあやつの婚約者であって本当に良かった」
「ロゼリアさんどうかこれからもシルベルトのことをよろしくね」
「はい、王妃様。ところで殿下は今日はどちらにおいでですか?」
「シルベルトならおそらく自身の執務室にいるだろう」
「分かりました。ありがとうございます、陛下」
「ああ」
「お身体に気を付けて下さいね」
「はい、王妃様。それでは陛下、王妃様これにて下がらせていただきます」
国王から無事シルベルトとの婚約を継続することを告げ、承諾を貰ったロゼリアは陛下に教えてもらった通りにシルベルトがいるであろう執務室へと向かった。
だが、その瞳は相も変わらず光りを宿してはいなかった。
そして、国王も王妃もそのことには気付くことなく、傍に控えていた宰相のみがその違和感に心の中で眉を寄せるだけだった。
お待たせしました。
すみません、シルベルトとミーアを出すことが出来ませんでした。シルベルトに関しては次回必ず登場します。ミーアに関してはまだ未定です。
お読みいただきありがとうございました。