無慈悲な命令
大変お待たせしました!
ロゼリアが馬車でハーヴェスト家へ連れていかれた後です。
シリアスです。
豪華な部屋の窓から見える空は今のロゼリアの心境とは裏腹に晴れた空だった。
馬車でハーヴェスト家の屋敷に着いた後、当主である、父親の呼び出しがあるまで自室で待機いや、軟禁状態になったロゼリアはただ空を眺めていた。
眺めているしか出来なかった。
ロゼリアの部屋は確かに豪華で派手ではあるが、本来、質素で落ち着いた雰囲気のものを好むロゼリアにとっては全く趣味の異なるものだった。
部屋に置かれた家具も机や椅子ぐらいしか置かれていない。
だからこそ、ロゼリアの部屋にはロゼリアが待ち時間を何かをして過ごせるようなものはなかった。
ロゼリアが空を眺めていると部屋のドアをノックする音が聞こえ、入室許可を出すと入ってきたのはロゼリアを屋敷に連れてきた人物だった。
「ロゼリアお嬢様、大旦那様がお呼びです。速やかに書斎までお越しください」
「お祖父様が?お父様ではなく?」
「はい」
「・・・分かりました」
ロゼリアは父親に呼び出されたのではなく、祖父に呼び出されたことに多少の驚きはあったものの素直に従った。
前当主であり、ロゼリアの祖父であるディオール・ハーヴェスト。
まだ周辺国との戦争があったとき、ディオールは数多の戦略を生み出し、またそれにより数多の勝利を収めた。
また、知力だけでなく、武力をも優れ、数ある敵をなぎ払った。
故にディオールは自国からも他国からも《リゼントを守りしドラゴン》と呼ばれていた。
ドラゴンは古き神話に登場する架空の生き物で、優れた知力に神に等しい力を持つものとして、登場した。
だからこそ、ディオールは自国の民のみならず、周辺国からもそう呼ばれていた。
彼は当主の座を息子である父親に譲った後もその影響力は衰えず、実質のハーヴェスト家のトップである。
ロゼリアは父親に呼ばれるよりも、祖父に呼び出されたことに更なる緊張が高まった。
そうこうしているうちに書斎まで着き、先導していた執事がドアをノックすると中から低い男性の声で入室許可がおり、執事が開けたドアから中へ入る。
中にはロゼリアの両親が立っており、その先には書斎机に座っている祖父がいた。
ロゼリアは緊張した面持ちで両親の前まで歩みより、スカートをつまみ上げ、一礼。
「お祖父様、お父様、お母様、ただいま戻りました。この度は大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
頭を下げ、一息にそう告げると母の声が聞こえてきた。
「本当です。なんという醜態を晒してくれたのですか。王家との婚約も破棄され、貴女にはがっかりです!」
頭を下げた状態で母の罵声を聞きながら、母を止めるでもなく、ただ黙っている父の冷たい視線を感じながら、ロゼリアはただひたすら耐えた。
母の罵声が一息つくと、祖父の声が聞こえた。
「もうそのぐらいで止さないか。ロゼリアも顔を上げなさい」
「ですが、お義父樣」
「これ以上は話が進まん」
「・・・分かりました」
「ロゼリア顔を上げなさい」
祖父の制止により、母は黙り、ロゼリアは顔をゆっくり上げた。
そこにはこちらを睨んでいる母、冷たい目を向けている父、目の前のものをまるで従わせるようなオーラを身に纏う祖父がいた。
「久しぶりだなロゼリア」
「お久しぶりです。お祖父様」
「息災であったか?」
「お陰様で」
「そうか」
ディオールは威圧感のあるオーラを少し鎮め、ロゼリアと挨拶を交わす。
だが、軽く会話を続けた後、再び、威圧感が出た。
「軽い挨拶はこのぐらいにして本題に入る」
「っ!?」
「ロゼリア。お前は王家との婚約を破談にした。それがどういうことか分かっているか?」
「はい」
「そうだろうな。それが分からないお前ではない」
「・・・」
「幸い、婚約破棄の件は王子の独断で、王家は婚約破棄の許可など出していないそうだ。よってロゼリア。お前は今度ある王家主催の夜会までに王子をものにし、婚約破棄を撤回させろ」
「っ!?」
祖父、ディオールの言葉はロゼリアを再び地獄へ突き落とすものだった。
ロゼリアはあまりのことに一瞬時が止まったように感じ、祖父の言った意味を理解すると顔を青ざめさせて慌てて口を開いた。
「おっお祖父様、何を仰っているのですか?シルベルト殿下は既に私との婚約を破棄しているのですよ?」
「さっきも言ったがそれは殿下の独断だ。何度も言わせるな」
ディオールの言ったことが不可能だと言おうとするも言葉では勝てず口が閉口する。
「ですがっ!」
「ロゼリアこれは命令だ。反論は認めぬ」
「っ!?・・・ですが・・」
「まだ言うか」
「私はもうあのようなことは・・・」
「はぁ、どうやら躾が足りなかったようだな」
「そのようですね。申し訳ございません、父上」
「全く嘆かわしいですわ」
ロゼリアが命令に反抗的なことを見てディオールは溜め息をつき、疲れたような、苛立ったような声音で言い、父は侮蔑的なように、母は腹立たしそうに言葉を紡いだ。
「おい」
「はい、お呼びでしょうか?大旦那様」
「ロゼリアをあの部屋へ連れていけ」
「っ!?」
「畏まりました。お前たちも手伝いなさい」
「いやです!あそこへは行きたくないです!!」
「お嬢様、失礼いたします」
「離して!!いやっ!やめて!お祖父様お願いいたします、止めさせて下さい!」
命令に抵抗するロゼリアにディオールは壁に溶け込むように佇んでいた執事に声をかけ、ロゼリアをとある部屋に連れていくように告げた。
執事は命令を受け、近くにいた執事に手伝いを求め、ロゼリアに近づく、ロゼリアはこれから起こるであろうことを予想し、恐怖心から抵抗するがロゼリアの抵抗が強くなったため、執事がロゼリアを抱え、部屋を退室する。
その間、ロゼリアがどんなに叫んでも暴れても誰も助けるでも辛そうにするでもなく、ただ冷めてた目を向けるだけだった。
そしてそれは書斎の中のみならず屋敷中がそうであった。
数人の執事や侍女とすれ違うが彼らは素知らぬ顔で通りすぎる。
やがて、ロゼリアを抱えた一行はひとつの部屋のドアの前で立ち止まり、ドアを開け、ロゼリアをそこへ、放り投げるようにして入れ、ロゼリアがドアが閉まる前に出ようとするのも阻み、何も発さず、無表情に無慈悲にドアを閉める。
「っいやあああああああああああああああああああ!!」
その時、静かな屋敷にロゼリアの叫び声が悲痛なまでに響いた。
大分遅くなりました。
すみませんでした
少々更新する時間がなくって、あらすじの所にも書きましたが不定期更新ですのでこんな感じで時間があれば更新させていただきます。
今年中にもう一話更新出来たらなっと思ってます(;´∀`)
分かりづらいところもあると温かい目で見ていただけたらと思います。
これからストーリーどんどん進んで行きます。
色々な人、あの人もあんな人もっ!な人の核心に迫ると思います。・・・多分。
続けてお読みいただけたらなと思います。
この度はお読みいただきありがとうございました。