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星巡り、ボン・ボヤージュ!  作者: 井平カイ
石を拾ったらドエライことになった件について
4/11

「宇宙の…終わり?」


 ゆっくりと頷くユウ。そして、話を続ける。


「ねえクラウス、宇宙についてどこまで知ってる?」


「そうだな……途轍もなく広くて、ブラックホールがあって……ホワイトホールはあるのかな? あと、今でも広がり続けてるって聞いたことがある」


「御名答だよクラウス!」


 突然マリが割り込んできた。元気いっぱいに。


「うぉっほん。……宇宙はね、今でも拡大し続けているんだよ。例えるなら木の根ってところかな? 毎年約三千六百メリアフィルずつ広がってて、その質量もどんどんそれに比例して大きくなってるんだよ。この三千六百メリアフィルって宇宙全体の広さからしたら微々たるものだけど、それでもやっぱり驚異的な数値なのは分かるよね?」


(全く分かりません)


「その広がる原理ってのは、正直なところまだハッキリと分かってないんだよね。だけど、私が思うに、重力場の流れの中にある原子個体エネルギーが、別軸空間との歪から生まれる超高異物質と有子過高現象を引き起こして……」


 マリは一人ぺらぺらと饒舌に語る。が、さっぱりわけが分からない。むしろ何語? 初めて聞く言葉ばかりだし。そもそもメリアフィルって何?


(そう言えば、ユウは天才って言ってたな……)


 とどのつまり、これは天才の天才による天才のための説明なのだろう。


 そんなことをボンヤリ考えていると、ようやくマリは説明を終えたようだった。


「……というわけなのだよ。解ってくれたかね??」


「いや全然解らん」


「なな、なんと!! 出来るだけ簡略的に要点だけまとめて説明したのに……」


 マリはなぜかショックを受けていた。床に両手をついて項垂れるその姿は、さしずめ甲子園で最終回に逆転ホームランを打たれたピッチャーのようだった。

 クエスチョンマークを頭の上で大量飛行させていた俺を見かねたのか、シュートがフォローを入れる。


「安心しろよクラウス。俺様達もさっぱり分からないんだ。何でその単語が出てくるのかもな」


(いやそれ以前に、話の隅から隅まで余すことなく分からんのだが……)


「……つまり、宇宙は今も広がり続けていて、その理由は分からないってことだよ、クラウスくん」


 最後にニクルが補足する。OK。それなら理解した。


「……それが前提なんだけど、今から数十年前、異変が起きたのよ」


 ユウは仕切り直すように切り出した。それを受けたクルーの面々も、少しだけ顔をこわばらせる。


「異変?」


「宇宙の広がりが、低迷してきたのよ」


「……それって、勝手に宇宙が成長を止めてるだけじゃないのか? 」


「もちろん、最初は自然停止だと思われたわ。でも調べた結果、それは全くの誤りだったの。

 ――宇宙は、“ある地点”に向けて縮小をし始めていたのよ。広がりの低迷は、その前触れのようなものだったの」


「宇宙の縮小って言われても、あんまりピンと来ないんだが……。何でそれが宇宙の終わりになるんだ?」


「想像してみて? 例えば粘土を横に伸ばしたとして、一度伸ばしたものを真ん中に向けて寄せれば、どうなると思う?」


「……そりゃ、こう、グニャってなるけど……」


「つまりね、それと同じことが、宇宙で起こるのよ。伸びた宇宙が縮まれば、その衝撃で想像も付かないほどの次元振動が起こるの」


「………」


「縮小の“(しわ)”とも呼べる次元振動は、宇宙を縮小させるその場所――“崩壊特異点”に向かって、逆波状に津波のように集まっていくわ。それは宇宙全体の全方位から押し寄せる。抜け穴なんてない。次元軸は大きく湾曲し、軸をずらされた星は次々と滅び、やがて、宇宙全体が死を迎える。

 ――それが、“縮小崩壊”よ」


「縮小、崩壊……」


 次元振動、宇宙の死、縮小崩壊……正直、その危機感が分からない。あまりにもスケール大きすぎる。俺なんかじゃ想像も出来ないほど、それは途方もない話だった。


 ここまでの話を聞く限り、ユウたちの文明は地球の文明を遥かに凌駕しているようだ。いやむしろ、ユウ達から見れば俺たちの文明なんて、それこそ石器時代のように感じるのかもしれない。地球じゃそんなことなんて分からないし、衛星である月に行くことだけで国家プロジェクトだ。そんな中で育った俺に、今の話を理解しろという方が無理難題だろうに。

 でも、そんな俺でも単純な疑問が生じる。


「なあ、ユウ達の文明は凄まじく発達してるが……その崩壊特異点ってやつをどうにかすればいいんじゃないか?」


「その通りよ、クラウス。それが、私達が宇宙を旅する理由でもあるわ」


 ユウは一度微笑み、すぐに表情を硬くした。


「まず私達の星は、特異点の調査に向かったの。そして、それが途轍もない程のエネルギーの塊であることを突き止めたわ。……多くの犠牲のうえに、ね」


「………」


「それから色んな議論が出たわ。特異点に向けた一斉砲撃。特異点自体の転移。でも、結局はその絶大過ぎるエネルギーの前ではどれも実現が不可能だった。国の学者たちは頭を悩ませたわ。その余りの絶望的な状況に、自決する者まで現れ始めたの。当時の星は、混迷を極めていたのよ」


 何となく、その情景が頭に浮かぶ。いくら考えても打開策がない状況。そして、確実に迫る死への恐怖。耐え切れず、自ら死をもって終わらせようとするのも理解できる。


「打開策もないまま数十年が経過した時、ある案が一人の少女から出されたの。それは革新的とも言える内容だった」


「はいは~い! アタシだよ!」


 再び元気よく手を上げるマリ。その少女ってのは、マリのことのようだ。


(……嘘だろ)


「マリが目を付けたのが、“星の涙”と呼ばれる秘石よ。それは銀河の中で、星々のエネルギーが凝縮されて生成されると言われている石だったのよ。もっとも、その制御は難しいから誰も手が出せなかったんだけどね。

 マリは、その絶大な力を制御する装置を開発したのよ。当時九歳だったかしら?」


「そうだよ~」


「マジかよ……」


(……嘘だろ、その二。ガチで天才なんだな……)


「ここでまたアタシの説明の時間だね! ちゃんと耳かっぽじって聞くんだよクラウス??」


「へいへい」


「まず、出来る限りの星の涙を集めるの。そして、それを一つに凝縮したエネルギー弾を特異点に向けて放射して、“空間ごと消滅させる”んだよ」


「空間ごと……そんなのが可能なのか?」


「それが可能なのだよ。特異点自体を狙っても正直微妙なことだけど、それ自体を狙わずに、周囲の空間を崩壊させるのがポイントなんだよね。

 具体的には、星の涙の総エネルギーを一点に集中させることで、次元軸と空間粒子を故意湾曲させるの。そして、その空間そのものの存在する確率を限りなく0に近づけるのよ。その理論は……まあ、説明していたら半年くらいかかっちゃうから省くけど、要するにそこで時空間崩壊を疑似発生させて、その周囲の空間総波質量を……」


(はい、もう意味不明)


 こうやって説明しているが、結局のところマリにしか分からんのだろうな。見ろシュートを。実に眠そうにしているではないか。ユウは微笑みながら見てるけど、絶対分かってないだろ。ニクルは……頭から煙が出てるように見える。


「……てな感じ。今度はもっと解りやすく言ったから、今度こそ分かったよね? ね??」


「いや全然解らん」


「うわあああああん!!」


 今度は机に伏せてドンドン席を叩き始めた。よほど悔しかったのだろうか。

 ユウは笑顔で机に顔を埋めるマリの頭を何度か撫で、続けた。


「星は、星の涙を探す部隊を急ピッチで結成したの。それが私達よ。私達の艇の部隊名は、“特命宇宙惑星間探索隊第三部隊第一分隊第七艦艇”って言うんだけど……これは別に覚えなくていいわ。あくまでも、肩書でしかないし」


「OK理解した。覚えるのはメンドクサイということをな」


(……ていうか、だから何でそんなに無駄に長いんだよ)


「次が、星の涙についてね。星の涙には、その純度でランク分けがされてあるのよ。ランク毎に秘められたエネルギー量は変わるけど……最高ランクにもなると、使い方一つで銀河を滅ぼすとも言われているわ」


「それって、どうやって見分けるんだ?」


「簡単よ。純度によって違うのよ。最も低いランクCが白、ランクBが黄色、ランクAが青色、そして……最高の純度を誇るランクSは、赤色と言われてるの」


「言われてる?」


「誰も見たことないのよ。あくまでも、伝説上の存在ね」


「見たこともないのに、何であるって分かるんだ?」


「記録上ではいくつか見つかっているからよ。でも、どれもあまり良くない結果に終わってるわ。暴走したエネルギーで銀河が二つほど消滅したとか、ブラックホールに飲み込まれて回収不可能になったとか。そんな記録しか残ってないのよ」


「そんな危ないもの探すのか…………ん?」


 一つ、思い出した。何だかとってもデンジャラスなことを。


「……あの、確かそのランクSって、赤色なんだよな?」


「そうよ」


「もしかしてだけど、その石ってひし形?」


「そのとおり」


「……さらにもしかしてだけど、その石って、石の中に光の粒みたいなのがあって、外に向けて光の筋が伸びていたりするのか?」


「パーフェクトね」


(あれだあああああああああああ!!)


 まさしく俺が拾った石だった。そして、なくした石でもある。だからユウはあんなにビックリしていたのか。ん? でも、石の色は言ってないような……

 そうじゃなくて! もっと別のことだ。……確か、暴走したら銀河が吹き飛ぶとか……


「俺!! 探してくる!! もう全力で探す!!」


「慌てないでクラウス。もうその必要はないの」


 ことの重大さにようやく気付いた俺は、慌てて部屋を出ようとした。が、そんな俺をユウは呼び止める。

 ……ていうか、俺よ。どうやって地球に行くつもりだったんだ?


「必要ないって……何で? すんげえエネルギー何だろ?」


「もうないのよ。あれは」


「ない?」


「正確には、なくなったわけじゃないのよ。形を失っただけ。……星の涙は、その中にあるんだから」


 そう言ってユウは、何かを指さした。ていうか、俺を。


(ん? ポケットに入ってるのか?)


 必死にポケットの中をひっくり返し大捜索する。当然だが、見つからない。

 そんな俺を見て、ユウはクスクス笑っていた。


「違うのよクラウス。星の涙は、“あなたの中”にあるんだから。正確には、あなた自身が星の涙になったのよ」


「………は?」


 いや意味が分からん。何で俺が石になるんだ?


「この宇宙にはね、極めて稀に、星の涙のエネルギーと一体になれる生物がいるのよ。それが誰かは特定できないわ。星の涙が生まれた宇宙の中、そのエネルギーとその生物の生体エネルギーの波長が著しく同調した時に起こる現象と言われているわ。それもまた、伝説上の現象ね」


「………」


「星の涙とはその銀河の意志そのものとも捉えられているの。宇宙の意志とは、即ち神にも等しい存在。そんな存在から力を授かるその現象は、“神託”と呼ばれているわ。そして、その神託を受けたのが、あなたよ。あなたは、星の涙に選ばれたのよ。それは、あなた自身が星の涙とも言えると思わない?」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺、別に普通だぞ!? 確かに瞳の色は紅くなったけど、それ以外はまったく変わってないんだ!!」


「言ったでしょ? 伝説上の現象だって。神託を受けた者は体のどこかにその証が生まれる、っていう話だけど、それはおそらく瞳のことだったのね。

 つまり、神託を受けた人がどうなるのかは、誰にも分らないのよ」


「嘘……だろ……」


「これくらいで驚くなよクラウス。お前が神託を受けたのは、ただの星の涙じゃないんだ。伝説上の、ランクSの星の涙なんだよ。それが、どれほど確率が低いことか想像も付かない。お前そのものが、一つの奇跡と言っても過言じゃないんだよ」


 シュートがそう断言する。それを聞いた全員がゆっくりと頷いた。


 冷静にならなきゃいけない。だけど親父、今は無理だ。ランクSの星の涙は銀河を消滅させるほどの奴で、それと一体になった俺。しかもそれすらも極稀過ぎるほどの現象。つまり言葉を直すなら、何が起こるか分からないし、何が起きても不思議じゃないってことだ。

 今は普通でも、これからどうなるかなんて分からない。誰にも。


「………」


 俺は、黙り込むしかなかった。


「……最後に、これからのことだけど、一度母艦に向かうわ」


「……母艦?」


「探索部隊の前線基地のようなものよ。そこで、クラウスを一度精密検査するの」


「それってつまり……俺も一緒に来いってことか!?」


「そうよ。当然でしょ?」


「当然って……!!」


 冗談じゃない! まっぴらごめんだ! 何で俺が今の生活を全て捨てて、そんな危ない橋を渡らないといけないんだよ。


「クラウス……こう言ったらショックかもしれないけど……」

 

 動揺して声を荒げる俺を見たユウは、少し怖い表情をうかべていた。そして、重苦しい口調である事実を突きつける。


「あなたの存在はね、地球にとって危険なのよ」


「……危険? どういうことだよ」


「さっき言ったでよ? あなたの身に起きたことは、まったくの未知の領域なのよ。つまり、何が起こるか分からないの。突然エネルギーが暴走するかもしれないのよ。そうなったら、あんな小さな星なんか一瞬で消滅するでしょうね。……あなたがいる限り、地球は常に危険と隣合わせの状態なのよ。

 それなら、私達といた方がいいわ。もし暴走しても、私達なら何とか出来るかもしれない。ハッキリとは断言できないけど、少なくとも、地球よりも遥かに技術が上である私達の方がその確率は断然高いわ」


「――それは!! ……分かってるけどさ」


「それと、これは正直に言うわね。あなたのその身に宿る力、それはあまりにも強大なの。それは、私達の計画に大いに役立つかもしれない。だからこの作戦に、ぜひ加わって欲しいの」


「何で俺が!!」


「忘れたの? 縮小崩壊は、宇宙全体の危機なのよ。当然、地球にとっても、ね。それを、あなた自身の手で守れるかもしれないのよ?」


「………」


「……まあ、作戦に加わることはゆっくりと考えて。でも、少なくともあなたをこれから母艦へ連れていきます。それは、絶対です」


「………」


 何も、言い返せなかった。ユウは本当に痛いところを突いてくる。ユウが言ってることは、まさしく俺が考えていた危惧そのものだった。

 ……だから俺は、静かに頷くしかなかった。


「決まりね。……各員整列!」


 突然、ユウはそれまでの落ち着いた口調を一変させた。それを受けたメンバーもまた、それまでとは違う機敏な動作で、横一列に並んだ。


「各員に告ぐ! 我らはこれよりこの太陽系を後にし、第三部隊母艦“ゼウス”へ向け進行する! その道中、万が一星の涙の反応があれば可能な限り回収! ――なお、その際に最優先とするのは、クラウス・イツキの身の安全とする!」


「「「了解!!」」」


 それは、初めて見たこの艇の軍の姿だった。空気が一変し、ピリピリとしていた。そしてそれが、ユウが説明した計画が、紛うことない真実であることを俺に思い知らせた。


「……じゃあ、ブリッジに行くわよ、みんな」




 *  *  *




 ブリッジに戻った俺たちは席に座った。艦長席にユウ、中央にニクル、左にマリ、右にシュートがそれぞれ座る。俺はというと、艦長席の後方にあるベンチのようなところにポツンと座っていた。


「リリー、スリープ解除。出航よ」


『――はい、艦長』


 突然船内に、女性の声が響き渡った。誰の声でもない。でも、さっきユウは、ここにいる人間が全乗組員って言っていたが……


『始めましてクラウスさん。私はリリー。よろしくお願いします』


「あ、ああ……どうも」


 誰もいない天井に向け返事をする俺。誰に返事してるんだか。

 戸惑う俺を見て、微笑みながらユウが説明する。


「リリーは、この艇のメインコンピュータなのよ。人工知能でもあるわ」


「人工知能……」


 そんなものまであるのか。地球の科学者が見たら腰を抜かすな、こりゃ。


「……クラウス、しっかり掴まっててね」


 ユウが俺の方を振り向き、そう話す。とは言っても、掴まれるところがないんだが……


「じゃあニクル、お願い」


「……は、はい! ……では」


 驚いたように声を上げるニクル。本当に大丈夫かと不安になる。

 

 そして、ニクルはハンドルを握った。その瞬間、何かが起こった。


「――よっしゃああああ!! 来た来た来た来たあああああ!!」


「―――へ?」


「おいクラウス! 俺の操縦テクにビビんなよ!!??」


 声と顔と姿はニクルだったが、全くの別人がそこにいた!


(いや……誰!?)


「クラウス、びっくりしたでしょ? ニクルはね、ハンドルを持つと、ちょっと性格が変わるのよ」


 いや、ちょっとって問題じゃないんだが。完全なるメタモルフォーゼじゃねえか!

 車の運転の時だけ強気になる輩がいるが、ニクルもその類なのか? しかしこりゃ二重人格とも言えるのでは……


 そんな俺の疑問は放置され、艇は着実に出航に向けた準備が進められていた。全員が計器類を確認し、レバーで色々操作している。もちろん何をしているかなんてのは分からないが。


「ユウスフィア! こっちの計器類、異常なしだ! いつでも行けるぞ!」


 シュートがユウに向け報告する。


「はいは~い! こっちもオールオッケーだよ~!」


 マリも同様にユウに報告した。……口調は同じだが。


「結構。――エンジン起動までカウント5秒。起動後、超光速航行。その後300秒で時空間ゲートを展開し、時空間航行にシフトチェンジ」


「了解っと」


「了解だ!!」


「了~解~♪」


 ……少しだけ、カッコいいと思ってしまった俺は、何とも言えない敗北感に蝕まれていた。


「マリアベル、カウントお願い」


「はいは~い。いっくよ~! 5! 4! 3! 2! 1!」



「―――出航!!」



「行っくぜえええ!!」


 その瞬間、瞬時に機体は最高速度になったかのように、外の景色が線になって過ぎ去って行った。

 ていうか無茶苦茶揺れてるんだが、この艇、壊れないか?

 クルーは落ち着いた顔をしているから、これが普通なのかもしれない。いや、むしろこの程度の衝撃で済んでいることを驚くべきなのだろう。


 出航した直後、後方モニターに目をやった。既に地球は米粒のように小さくなっていて、すぐに見えなくなった。

 心の中で、再会を願う挨拶と、別れの挨拶を同時にした。これからどうなるかなんてのは分からない。もしかしたらもう帰れないかもしれない。そう思うと、何だか泣きそうになってきた。それでも、心のどこかで浮かれる自分もいた。だってそうだろ? 小さい時に……いや、小さな時から夢見ていた宇宙に、今まさに飛び立ったんだ。そこは察してほしい。

 クルー全員の姿をもう一度目に写して、その後は、ただひたすらに天井を見つめた。


 星を巡る宇宙船。それに半ば強制的に乗り込むことになった俺。


(……俺、どうなるんだろうな……)


 そんなことを、揺れも収まった艇の中、ぼんやりと考えていた。


 

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