子供の涙
寒い。
真っ暗やみが永遠に続いている。
思い出せない。
家族も友人も愛する人も・・・。
何の記憶も思い出せない。
ただ、悪魔への深い憎しみのみが心にある。
「早く逃げなさい!!」
誰の声だ?
「早く!!」
俺に向かって叫んでいる。
グシャッ。
顔の見えない女性が鈍器で殴られた。
「グヒッ」
女性を殺した男には額に小さな角があった。
悪魔だった。
右の瞼には、傷があり、尻尾が生えた正真正銘の悪魔だった。
「て、テメェェェェェェ!!」
俺は、殴りかかろうとした。
しかし、震えが止まらない
「オマエニハ、生け贄ニナッテモラウ・・・。」
男がこちらに手を伸ばしてくる。
「う、うわぁ」
小さな悲鳴をあげて、逃げようとするが足がすくんで逃げられない。
「ヘヘッ」
掌が目の前まで近づいてくる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
汗が滝のように流れていた。
気づくと街のはずれにある森の奥の小さな山小屋で目が覚める。自宅だった。
別に人との関わりを無くすためではないが、森の中だと安心するからだ。
「また、あの夢か・・・。」
シルバークは、最近この夢ばかりみるようになった。人が悪魔に殺される情景が永遠と繰り返される。
「あの女性は、一体誰なんだ?」
聖職者だったのか、傍にいると何だか気持ちが楽になった。
「あーもう、考えてもしょうがねぇ!!街に行くとするか。」
シルバークの山小屋から数km離れている街に週に3回程度食料などの調達に行く。
ここは、フリーグ王国。
周りは、海に囲まれていて魚もあし、森林が多いので果物や野菜が豊富でもある。
しかし、開放的な王国ではなく検問が厳しい。
そのおかげか、魔物が街に侵入するわけがない。50年間、魔物が侵入した形跡もない。
しかし、51年前の''ラグナロク''ではそうは、いかなかった。
あれは、悲劇そのものだった。
人は、餓死・刺殺・射殺・斬殺など色々な''死''があった。街は、壊され、燃やされた。悪魔は、人類を殺すか奴隷にしかしなかった。
だが、崩壊寸前だったが第23代国王''レオン・アルフレッド''がここまで回復させた。
彼は、騎士から大出世し国王まで登りつめた。
国民から慕われており、力の限り街の復興させた。
「この肉は、今朝捕れた新鮮な魚だよー。シルバーク、買ってかないか?」
「この肉は、最高のお肉だよ。そこら辺じゃ、うってないよー。」
あそこまで絶望的だったのに、ここまで復興した。
「今日は、いいよ。また今度な。」
今日は、王国騎士団の集まりがあった。買い物はそのあとだ。
「王国新聞だよー。」
「1枚くれないか?」
「はいどうもー。」
新聞売りの少年から1枚貰い読みながら王国へ向けて歩く。
王国新聞には、経済・近辺の戦争・魔物の出現など様々な情報が書いてある。
ここには、こう書かれてあった。
『魔物出現、黒いローブを着た悪魔!!』、と。
「最近多いなぁー。」
ここ最近、人を喰らう化け物が食料を求め森から降りてくる。
ゴーン、ゴーン、ゴーン。
時計塔が10時を指していた。
「やべっ、遅刻だ!!」
急いで王国へ向かった。
フリーグ王国の中心、クレイドール城。
一般的な城だが、四方八方に魔方陣がかかれている。いつ魔物が現れてもいいようにだ。
シルバークは、恐る恐る城門から中を見てみる。
「あの馬鹿、どこをほっつき歩いとるんだ!!」
元騎士団長ロバート・エドリックは、顔を赤くして激怒している。
彼は、シルバークを悪魔から守った命の恩人だ。
シルバークは、彼を「ジジイ」呼ぶほどの仲だ。
「あ、あのー・・・」
「シルバァァァァァーク!!」
ヤカンが沸騰したかのように湯気が出ている。
「ジジイー、ちょっと遅刻したぐらいでなに怒ってんだよ。」
「30分も遅刻だ!!10分前には、ここに来ておれ!!」
「しょうがないだろ、寝坊したんだから。」
「この・・・!!」
「まあまあ、そう怒らずに・・・。」
ロバートを仲裁したのは、国王レオンだった。
「国王陛下!!コイツ、甘やかしたらいけません!!」
「大丈夫大丈夫。シルバーク君は、''剣豪''なのですから。」
「そうですが・・・」
''剣豪''とは、剣術の最高クラスのものにしか与えられない称号だ。
「そうだそうだー」
「調子に乗るな!!そう言えば、陛下がなぜ訓練所にいるのですかな?」
「いや、ただシルバーク君に手合わせを願おうと。最近机に座りっぱなしで肩が・・・」
「それなら、かまいま」
「国王陛下ぁぁぁぁぁぁぁぉ!!!!」
城の方からメイド長が走ってきた。
「陛下!!書類がまだ片ずいていません!!そういう、めんどうになったらほったらかすのは子供の頃から・・・」
「そう言うなよメリアー。」
「メ・イ・ド・長・です!!!」
この二人の仲は、幼馴染みだ。
「それじゃ、また今度ねシルバーク君!!」
「あ、陛下!!」
二人は、風のように去っていった。
「シルバーク、今日訓練だ。」
「えー、またぁー・・・」
「いいから、城内5周!!!」
「「「はい!!!!」」」
「はーい」
さっきまで自主トレだった他の兵隊も一緒に走ることになった。
「か、体がもたない・・・」
ランニングが終了すると、もう夕方になっていた。
買い物をしに行くとほとんどが店を閉めていた。
「はぁー、最悪。まあ、そこら辺の店で済ますか」
「おい!!クソガキ、リンゴ盗んだろ!!」
「ぬ、盗んでません!!」
路地裏で言い争っていた。
店主とローブを着た小さな子供がリンゴを盗んだらしい。
「このっ!!」
店主が子供を殴ろうと振りかぶる。
バシッ。
当たる寸前で腕を押さえる。
「あ、あんたは・・・」
「えっ・・・」
目を瞑っていた子供が驚いた声をあげる。
「盗んでないって言ってんだろ。」
「そ、そうだな。俺の見間違いだな」
店主がそそくさ逃げていく。
「ったく。盗賊みたいな事しやがって・・・」
「あ、あなたは?」
「俺?俺はシルバークだ。騎士団長をやっている。
」
「やっと会えた・・・」
「えっ・・・」
いきなり、子供が俺に抱きついてきた。
「ちょっ、おい」
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!」
いきなり、泣き出した。




