遠き日の夏
いつからだろう、“アイツ”が消えたのは。
陽炎が暑さを際立たせる夏の昼下がり、駄菓子屋に行くと、氷水を張ったバケツ一杯に突き刺さっているラムネがあり、ボクはそれを“ラムネ島”と呼んでいた。理由は確か、海に浮いている小島のようだから…だった気がする。
友達との集合場所としても使ったし、一人でもほぼ毎日行った。合言葉は「ラムネ島で燃料補給」だったかな。どこへ行くにも必ずその駄菓子屋を経由して行ったことは鮮明に覚えている。
“アイツ”が消えたのがいつかは定かではないが、ボクが実家に帰った時にはすでに消えていた。両親曰く、ボクが一人暮らしに出てしばらくしてからだそうだ。 いつかまた、友達と行ってみよう。合言葉を忘れずに。
誰もが過ごす、あの夏の日々を感じてもらえれば幸いです。