第2話 椿ノ花ガ 芽生エタ…
第2話 椿ノ花ガ 芽生エタ…
「明日の舞踏会…咲さんと一緒に必ず出席しなさい 明日お前達の婚約を発表する」
「はい…わかりました 」
あんな馬鹿女と 本当に結婚しなければならないのか…
考えるだけで 頭が痛くなる。
でもこれが 俺の運命だ 財閥の一人息子として生まれたからには
受け入れなければならない運命…。
仕方なく受け入れるしかない…
ー翌日 舞踏会会場ー
俺の隣で嬉しそうに 鼻歌を歌いながら
俺の腕を組んで歩く馬鹿な彼女
何が嬉しいのかわからないが 鼻歌を歌うのはやめて欲しい
顔から火がでそうなくらい 恥ずかしい…
「咲さん… なんの歌を歌っているのですか?」
苦笑いをしながら 馬鹿らしく歌う彼女に聞いてみた
「今はやりの ジャズですわ! お父様がこの間 レコードを買って下さったの!」
と俺の出している 空気も読まず 誇らしげに言う彼女
これは 言っても意味がなさようだな…
「そうですか あ 私は少し 外の風に当たってきます 咲さんはここにいて下さい」
「はい!ここでお待ちしておりますわ」
俺は そそくさと その場を離れた…
彼女と一緒にいると 本当に恥をかきそうだ
まぁ 彼女は 恥という言葉の意味を知っていなさそうだが…。
風に当たろうと 近くのテラスに出ると
テラスの白いイスに腰掛け
空を切なげに見つめている 女性がいた
彼女は美しい美貌の中に 品が備わっていた
馬鹿な女とは全然違う 一目でわかる…。
彼女は俺に気づくと ふっと柔らかく微笑んだ…
切ないような、優しいような 消えそうな笑顔
俺は そんな 彼女の笑みに
一瞬にして奪われた…。
いつもより 早く動く鼓動
彼女をずっと見ていたいと思う感情…
今まで 一度も知ることがなかった
カノジョに出会って
初めて感じ 初めて知った…。
「あの…お名前は なんと申するんですか?」
今まで 女性の名を自分から聞いた事は一度もなかった
「…わたくしは…佐々木 椿と申します。」
「私は 神崎 蓮一朗と申します」
「神崎さんのお名前も お花のお名前が入ってるですのね」
微笑をしながら 彼女は小さくか細い声で言った。
俺も 彼女の笑顔をみて 思わず 笑みが零れてしまった
普通の令嬢は名前など気にしない
気にするのは 家柄だけだ…
俺の名前を聞いたほとんどの令嬢の第一声は
「あぁ 神崎財閥のですか?」
からのお金の話ばかり
でもカノジョは違った
普通の令嬢たちと違う何かを持っていた…。
「貴方に言われるまで 気づきませんでした」
「そうなのですか? わたくしは この名前お父様が付けて下さったとお母様から聞いていたのでわたくしの自慢なのです」
本当に可愛らしく笑う女性だな…
本当にずっと見つめていたくなる
>椿ノ花ガ 散ル頃ニ…。