雨からはじまる恋がたり
ザァ―――
感情無く振り続ける雨。湿気のせいか、少し周りが白く霧がかっている。
傘を持たない俺は、雨宿りでよったコンビニの外で待ちぼうけ。とはいえ待っているのは人でなく、青空だ。
……せつねぇ。
「はぁ」
一向にやむ気配を見せないどしゃぶりの雨に、重く溜息をつく。
すぐに止むと見込み、雨宿りを選択したのだが……とんだ選択ミスだった。
まぁどしゃぶり前に雨宿りできたのが幸いだった。びしょぬれの服が身体にひっつくのは、たまらなくイヤだからな。
ふと、隣から声がかかる。
「あの……どうぞ……」
「……おれ、に?」
コクっと小さく頷く少女。差し出された右手にはピンク色の傘が。
今にも雨にかき消されそうな声で、少女がつぶやく。
「私の家、そこですから」
少女が指したのは信号の向こうがわ。1、2……7階建ての白練のマンションが少女の家らしい。
なおも降り続く雨。
「大丈夫」
なにが大丈夫なのか自分でも分からないが、つい言葉に出てしまう。男の強がりだ。
「でも……近くですから」
「ならなおさらだよ。せっかくここまで濡れてこなかったんだから、ね」
「――。そう……ですか」
不満そうな顔で見るが、一応納得してくれたらしい。
「え……っと。すみません、いらない気をつかわして」
「ううん、むしろうれしかったよ。ありがとう」
けなげな子。今時いない、希有な子を見れたことに、今だ振り続ける雨に、心の中で感謝する。
心配そうな彼女に、風邪引く前に帰りなとうながす。困ったようなどうしようかと悩む彼女。
だがこれ以上論じても無駄だろうと、それじゃ、とぺこりと頭を下げその場を後にする。
時折、やはり心配なのかちょこちょことこちらを見ながら、信号をわたっ――
「って、あかっ!!」
「へっ? あっ!」
俺の声で、信号をみた彼女がどうしたらいいのかその場であわてだす。
小さな歩道だが,車の通りは割と多い。すぐに一台の車が彼女に向かっていく。
雨で曇っているため、前が見えていないのか。車のスピードがゆるむことは無い。
「あぶないっ!!」
いうまえに駆け出す足。いまだ混乱してる彼女にむかってひたすら走り出す。
ブォ―――!!
「あっ――」
――――――――。
ピンク色の傘が宙に舞う。枝から散った桜のように。ひらひらと――。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
思い切りべたにするつもりですので、最後までよろしくお願いします。