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私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていた~  作者: 堂道廻
第三章【初陣】

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49 化身の顕現

 結局、ロクに筋トレなんてできなかった。

 しようとはしたけど、フェルさんのせいでもやもやして落ち着かなくて、軽いストレッチをしただけで終わってしまった。


 不完全燃焼のままトレーニングを切り上げて執務室に向かった私が鋼鉄の扉を開けると、すでに騎士たちが円卓を囲んでいた。扉が開いた音に反応して、エドガーとクラウディオの視線が一斉にこちらへ向く。

 

 あれ? フェルさんの姿がない。きっと、彼はあのまま研究室に一直線で向かったのだろう。


 私は円卓へ歩み寄りながら、少しぎこちなく口を開いた。


「お、おはようございます」


「おはようございます、司令。フェルを見ませんでしたか?」


 エドガーの落ち着いた声が室内に響く。


「あ、はい。さっき会いました。たぶん自分の研究室にいると思います」


「そうですか、仕方ありませんね」


 小さく息を付いたエドガーは、手に持った書類に視線を落とした。


 うーん……、私が頬を叩いたことは怒っていないっぽい? いや、まだ油断はできない。いつ態度が豹変するか分からないから、気を緩めないようにしなくちゃ。


 来るなら来やがれッ!! 


 なんて気合を入れたのに――、朝のミーティングはつつがなく進み、ほどなくして締めくくりに入って空振りに終わる。 


 最後に「司令、なにかありますか?」と問われ、私が「何もありません」と返事をすると、エドガーが改めて口を開き、「それでは本日、チドリ司令は私と一緒に騎士団本部へ行きます」と告げた。


「はい? なぜですか?」


「騎士団の司令官に着任したのですから、団長に挨拶に行くのは当然かと」彼は淡々と言った。


「本来は着任前に行くのが通例ですが、今回の異動はイレギュラーでしたので」


「今までの司令官も挨拶に?」


 私がそう聞くと、エドガーはゆっくり左右に首を振る。


「いいえ」


「でしょうね……。ハイノーブルの彼らが自分から出向くなどプライドが許さないのでしょう」


 そう考えると、騎士団長さんって現場叩き上げタイプなのかな?


 するとエドガーは首を振る。


「いいえ、そうではありません。彼らは団長を恐れて、会いに行くことを頑なに拒否していました」


「え……そ、そんな怖い人なんですか?」


「団長はお優しい方です」


 エドガーがにこりと微笑む。その笑顔には、なぜか妙に含みがあった。


 絶対嘘だ!


 私は思わずクラウディオの方を見る。すると彼は小さく肩をすくめてみせた。妙に含みがある感じで。


 ほらやっぱり! 絶対怖い人なんじゃん!!


「それではさっそく出発しますので、その安っぽい衣服ではなく騎士服に着替えてください」


 そう指摘されて私は自分の格好を見下ろした。

 ありがたさゼロ、ご利益ゼロ、セクシーさゼロの三拍子そろった〝地味の化身〟がそこにおわすではないか。


 ……あ。着替えるの忘れてた。


     

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