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私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていた~  作者: 堂道廻
第二章【招集】

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31 勉強のコツって

 クラウディオに案内された司令官室は、大企業の社長室かと見まがうほど立派なものだった。


 あの宰相の執務室よりも立派だ。ゆったり幅のあるデスクにプレジデントチェアー、大理石を使用したローテーブルに本革のソファが整然と配置されている。


 役所ってこういう無駄なところにお金を掛けるんだなぁ……。だから嫌われるんだぞぅ。


 馬鹿みたいに口を開けて呆気に取られる私に、クラウディオは「時間になったら声を掛ける。うろうろしないで大人しくしていろ」と言って踵を返す。


「待って、クラウディオ!」


 呼び止められた彼は、ほんのわずかに顎だけを引いてこちらを振り返った。その横顔には露骨な苛立ちが浮かんでいる。

 ズキンと胸に痛みが走った。


 どうしてそんな眼で見るのよ……。

 

「ど、どうしてあなたがここにいるの?」


「それはこっちのセリフだ。どうしてお前がここにいる? ここがどういう場所か分かっているのか?」

「それは……」


 貴族ではないとバレてはいけない――、クレーマー補佐官の声が頭の中でリフレインする。


 でもクラウディオには私の素性がバレている。彼が他のメンバーに私の正体をバラしたらどうなるの? いきなり任務失敗?

 どうしよう……、口止めする? 事情を説明して黙っていてもらう?


「その……」


 考えあぐねている私に、「ふん、とにかく大人しくしていろ」と彼は言い残して行ってしまった。


 しん、と静まり返る司令官室。


 はぁ、もうしょうがない……、なるようになるしかないじゃん。エドガーって人も何か気付いているっぽい口調だったし、クラウディオが彼らに事実を話したら素直に認めよう。


「大人しくって言われてもね……」


 私は改めて部屋を見渡した。机に椅子に筆記用具、応接セットに収納棚、必要な物は一式揃っている。ただ地下なので窓がない。窓がないということは太陽の光が届かない。なんだか閉じ込められたみたいだ。

 気を取り直した私は、とりあえず高級感溢れるプレジデントチェアーに座ってみることにした。


「おお……」


 ふかふかぁー。

 体が椅子全体に包み込まれるように収まっていく。なんとも高級感のある手触り。脚を組んでみれば途端に偉くなった気分になってくる。


「こういうアイテムが貴族たちを勘違いさせてしまうのか……」


 そう、ひとりごちた。

 いるだけで良いって言われたけど、本当になにもしなくていいのか不安になってくる。考えようによってはすごくホワイトな職場だ。


 頭をもたげ、椅子の背もたれに預けていた背中を起こした私は、クレーマー補佐官から受け取った分厚い資料を開いてみた。


 1ページ目を開いて早くも脳が拒絶反応を示す音がした。びっしりと文字の海が広がっている。


《魔導兵器の歴史と戦術騎士隊発足までの経緯について》


 タイトルから見て堅い。本題から入ればいいのに、まず成り立ちや歴史から入るところが、いかにも役人が作った資料である。


『魔導兵器の中でも魔素兵器の歴史はとりわけ古く、紀元前一〇〇〇年のシン国で魔素毒が使用された記録から始まり、紀元前六〇〇年にアリシア軍が――』


「う……、眠くなる系だこれ。とりあえずさわりだけ読んでみるか」


 次のページを開く。


『現在、我が国は隣国ペルギルス王国からの脅威に常にさらされている。特に特務機関【ベガ】による情報操作、破壊工作、要人の誘拐、非人道的兵器をなど、様々な手段を用いた攻撃を受けている。つまり、公安機関がより包括的に対応しなければ――』


 数行ほど読み飛ばす。


『問題が発生してから対応する法が制定されるように、特殊部隊設立プロジェクトが立ち上がる契機となった事件があった』


 さらに次のページを飛ばして、数ページ先を開く。


『――我が国においても優秀な騎士を集めた銀翼騎士隊が存在するが、彼らは誘拐された要人の救出やシージャック、立てこもり事件を解決に導くスペシャリストではない。ましてや魔素兵器に犯された領域は、彼らにさえ踏み込むことはできない。その領域は死地と呼べる魔素毒の影響下、または疑いのある汚染区域だ。そこで活動するのが王国騎士団の中から選抜された強者たちによるチーム、テロ行為および魔素兵器に特化した対テロ即応部隊として発足した戦術騎士隊アルタイルである』


「……」


 ちょ、ちょちょちょちょっと待ってよ、なんなのよこれは……。ガチよりのガチというか、めちゃくちゃガチガチのガチじゃないですか!?


 喉がごくりと鳴る。


 とにかく、ただの料理人の私がいてはいけない場所ってことは分かった。ここは嘘偽りなく特殊部隊の基地だ。しかもテロに特化した部隊ときている。こんなところでやっていけるのか不安しかない。

 もういっそクラウディオが私の正体をバラしてほしいかもッ!!


「くぅ……、そうは言っても異世界で無職はハードモード過ぎる」


 私はマニュアルをパラパラと捲っていく。とりあえず取っ付きやすい絵や図から頭に入れていく作戦だ。

 資料の最後に隊員たちのプロフィールが添付されていた。そういえばクレーマーがそんなことを言っていたな。


 途端に目がバッチリ冴える。

 私が求めているのは正にこれなのだ。 




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