表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていた~  作者: 堂道廻
第一章【召喚】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/60

22 消えたあいつは、どこ行った?

 王宮食堂の裏手にある木陰のベンチに、私はリリアと並んで腰を下ろしていた。

 昼下がりの柔らかな日差しが葉の隙間からこぼれ、足元にまだらな影を落としている。一枚の扉越しに鍋をかき混ぜる音や食器の触れ合う音がかすかに聞こえててくる。


 私は深く息を吸い込み、昨晩の出来事をリリアに話していく。もちろんカティアちゃんのファザコンムーズについては伏せた。言っても信じてもらえないし、好意で住まわせてもらっているのに悪口を言うようなことはしたくない。


「へぇ~、チーフの家で一緒に暮らすんだぁ。それにしても、チーフに子どもがいたとは……」


 さも意味ありげにリリアは腕を組んだ。


「うん、そういうわけでリリアは一人になっちゃうけど」


「うーん、実はね、退院するときに親が迎えに来たんだ。そしたら『家に帰ってきなさい』って言われちゃってね」


「え? そうなんだ、じゃあ……」


「うん、なんか心配になっちゃったみたい。バカだよね、王宮の敷地の中にいた方が安全なのにね」


 リリアは苦笑するけれど、私はすぐに同意することができなかった。


 だって王宮の敷地の中で私たちは襲われたのだから。

 けれど、どちらにしても元凶である私から離れるのが一番安全なのは間違いない。


「そっか。それなら一緒に引っ越しの準備しなくちゃね」


「そうだね。でもチドリがチーフとかぁー」


 にやにやと意味深な笑みを浮かべる。


「なにその笑みは?」


「いやー、なんかそのまま家庭に入っちゃえばいいんじゃないですかー?」


「え……」


「チーフだってチドリが好きだから自分が守ってあげようって思ったんですよ、きっと。子どもがいて歳も上だけどカッコいいし、収入も安定してるし。これはチャンスなんじゃないんですか?」


「いや、リリア……。確かにチーフは結婚相手として申し分ないけどね、私にはまだ命を賭けるほどの覚悟はないのよ……」


 だって、その先には幸せな家庭ではなく、カティアちゃんに惨殺される未来しか見えない。


 きょとんと首を傾げるリリアの手を取って私は立ち上がった。


「さあ、仕事に戻ろう。きっとマリアが『どこ行った!』って怒ってる」


 私たちは顔を見合わせて苦笑しながら食堂へと戻っていった。



 そして休日を迎え、私はチーフの家に引っ越を済ませ、新しい生活が始まった。

 家の中ではチーフとの距離感に最大限の注意を払い、カティアちゃんの視線を意識しながら静かに過ごす。仕事に没頭し、気がつけば一日が終わっている日々を過ごす。

 ノエルくんは、毎日のように食堂に顔を出してくれるけれど、クラウディオの姿を見かけることはなかった。

 王宮のどこかでばったり会うかもしれない。そんな小さな期待を心のどこかで抱いていたけれど、そんな偶然は訪れなかった。


 まるで、最初からいなかったかのように、あいつは私の前から姿を消した。


 顔を合わせれば互いに悪態ばかりついていたのに……。なのに、なんだろう、この空虚さ、物足りなさ……。

 まるで心にぽっかり穴が空いたみたいな……。つまりそれって、すごく……切な――、かなんてなるはずがない!!

 じょじょじょ、じょーだんでしょ!? 確かにちょっとカッコいいなって思ったことは何度かあるけど、あいつは親の仇! のような存在で、絶対殺すリスト第一位に君臨する男なのよ!


 はぁはぁ……。

 興奮してしまったけれど、それからひと月ほど何事もない穏やかな日々が続いたその日。


 とうとう、そのときが遂に訪れる。


 そう、それは私が司令官騎士ナイト・コマンダーになる日だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ