プロローグ
また、同じ夢をみていた。
夢の中の私はいつも朗らかに笑っている。そして、彼もーー
ここにあるようでここではないどこか。
並行世界とでも言えばいいのだろうか。
似ているようで似ていないもう一つの世界。文明レベルで言えば、圧倒的にこちらの世界の方が上だろう。
行き交う人々は皆スマホ、スマホ、スマホ。近年ではAI、人工知能なんてものまで現れて、飛躍的に人々の生活レベルは向上した。
だが、人と人との繋がりが希薄とも取れる世界が、ここ。すれ違った人間の顔貌を誰も気にも留めていない。
その点、あちらの世界は違う。
スマホもパソコンもSNSも、なんなら電子機器自体が存在していないこの世界。それでも、皆満たされている。
わたしはいつしかこんな世界に憧れを持つようになった。不便だからこそ豊かな世界。
......まあ、そもそもパソコンやスマホなんてものの存在すら知らないのだから不便とも思わないのだろうけれど。
昔から繰り返し見るこの、夢。
私はどこか羨ましいような眩しいような、そんな気持ちで眺めていたものだった。こんな世界で生きたい、とさえ思った。
ただ一方で、目覚めてしまえばこの夢についてあまり深く気に留めて考えることはなかった。
ああ、また同じ夢か。同じ顔ぶれ。実世界で会ったことはないけれど、いつも夢で顔を合わせる面々。今日はかけっこ、かくれんぼ、たまに大人に隠れてのイタズラ。
ここではないどこか、を求めていたわたしが作り出した幻想、その程度にしか思っていなかった。
だからこそ、わたしは今目の前で起こっている事実を受け入れることができなかった。
夢は夢のままだから美しいーー
昔誰かが言っていたような気がする。まさか自分の目の前で夢のような出来事が起きるなんて。今はまだ、信じられない。
頬をつねる。ありきたりだが、この頬の痛みが現実であることをありありとわたしに告げている。
目の前の巨躯の男がわたしに告げる。
「やっと会えたーーーー」




