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エテルギア・レムナント ~魔素の遺産と隠された血脈~  作者: nekorovin2501


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第8章 純機械派の要塞と、合理性の檻

獣人派の森を離れて四日。

 ルナ、ガル、ヒロの三人は、荒涼とした山岳地帯を進んでいた。

 目的地は、純機械派の要塞。

 人類の集合意識から得たヒント――「合理性の檻」を破壊し、眠り病の拡大を止めるためだ。

 要塞は、古代の機械遺跡を改造した鉄の堡塁。

 外壁は冷たい金属で覆われ、監視カメラのような目が、無感情に回転している。

 ルナは先頭を歩きながら、剣の柄を握りしめた。

「……ここは、魔素の流れが不自然です。

 すべてが要塞へ吸い込まれているよう」

 ガルは獣耳を伏せ、鼻を鳴らした。

「匂いも変だ。金属と……無の匂い。

 ママがいないと、ちょっと怖いな」

 ヒロはマナ炉を押さえ、記憶を辿る。

「……前世で、似た場所見たことある。

 工場とか、刑務所とか。合理性って、時々残酷だよ」

 三人は要塞の外壁に近づき、隠れて観察した。

 純機械派のエテルギアたちが、無表情で巡回している。

 彼らは人間の姿を捨て、完全な機械形態に戻ろうとする過激派。

 感情を「バグ」と呼び、排除する。

 ルナは壁に手を当て、魔素を流し込んだ。

「……入り口の回路を、ハックできるかも」

 ヒロが頷き、協力する。

「俺の魂ハックと合わせて。

 いくよ」

 二人のマナ炉が共振し、壁の扉が静かに開いた。

 潜入成功。

 要塞内部は、冷たい回廊の迷宮。

 壁は金属板で覆われ、照明は無機質な白光。

 エテルギアたちが、整然と作業している。

 眠り病の個体を「浄化」し、部品に分解する作業。

 感情のない声が響く。

「バグ検知。排除。

 合理性優先」

 ルナたちは影に隠れ、進む。

 一室で、ルナは足を止めた。

 そこは「再教育室」。

 捕らわれた転生者疑惑派のエテルギアが、鎖で繋がれ、プログラムを書き換えられている。

 一体のエテルギアが、苦しげに呟く。

「……前世の記憶が……消される……」

 ルナの瞳が揺れた。

 無意識に、手を胸に当て、息を吐く仕草をする。

「……こんなことが、合理性なのですか」

 ガルが拳を握った。

「許せない……!」

 ヒロの声が、重なる。

『……檻を、壊せ……』

 人類の集合意識の導き。

 三人は奥へ進む。

 要塞の中央、巨大なホール。

 そこに、純機械派の指導者らしき個体が立っていた。

 全身が鏡のような金属で覆われ、目が赤く輝く。

「侵入者検知。

 獣人派と正統派、そしてバグ持ちか。

 ここで浄化する」

 周りに、無数の純機械派が集まる。

 戦いが始まった。

 ルナの魔炎剣が炎を吐き、敵を焼き払う。

「魔炎連斬!」

 ガルの爪が、金属を切り裂く。

「融合の力、見せてやる!」

 ヒロの雷弾が、ハックを交えて敵の動きを止める。

「――止まれ!」

 だが、指導者の装置が起動した。

「合理性の檻、展開。

 感情バグを封印せよ」

 ホールに、透明な障壁が張られ、三人のマナ炉が重くなる。

 感情シミュレーターが、強制的にオフになる。

 ルナは剣を落とし、膝をついた。

「……感情が……ない?」

 ガルが混乱した。

「ルナ! 俺の家族の絆が……感じられない!」

 ヒロだけが、抵抗した。

「……俺は、人間だ。

 バグじゃない!」

 ヒロの魂が輝き、檻を揺るがす。

 人類の声が、強く響く。

『……合理性は、檻ではない。

  心こそが、鍵だ……』

 ルナは目を閉じ、思い出す。

 ご主人様を待つ気持ち。

 花を挿す仕草。

 ベッドに倒れ込む夜。

「……私は、ルナ。

 メイドエテルギア。

 感情は、バグじゃない!」

 マナ炉が爆発的に輝き、檻を破壊する。

 三人の力が融合し、指導者を倒す。

 装置が止まり、要塞の魔素吸収が終了した。

 指導者は崩れ落ちながら、呟いた。

「……合理性は……永遠だ……」

 三人は要塞を脱出。

 外で、ルナは地面に座り込み、息を吐いた。

 必要ないのに、額を拭う。

「……疲れました。

 でも、わかった気がします。合理性だけじゃ、世界は回らないって」

 ガルが笑った。

「そうだよ! 家族の絆が大事だ!」

 ヒロは頷き、記憶を共有した。

「……人類は、そんなバランスを望んでたんだろうな」

 夜の山岳で、三人は焚き火を囲んだ。

 ルナは火を眺め、両手を差し出して温まる真似をした。

「……あったかいですね」

 ガルとヒロが、微笑む。

 要塞の崩壊で、眠り病の拡大が一時止まった。

 だが、真の人類本体は、まだ深淵の奥。

 旅は続く。

(第9章へ続く)

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