第38章 街の子どもたちと、継がれる約束
エテルノヴァ・シティの午後は、穏やかな陽光に満ちていた。
ルミナはメイドギルドの前庭で、街の子どもたちに囲まれていた。
ツインテールが軽く揺れ、リボンが陽に反射してキラキラ光る。
子どもたちはルミナの周りで輪になり、目を輝かせている。
「ルミナお姉ちゃん!
今日もツインテールかわいい!」
人間の男の子が、ルミナの髪に触れようとする。
ルミナは優しく膝を折り、目線を合わせる。
「ありがとうございます。
今日は、みんなと一緒に遊べる時間ですわ」
女の子が小さな花束を差し出す。
「これ、ルミナお姉ちゃんにあげる!
ルナ様みたいに、花瓶に挿して!」
ルミナは花束を受け取り、そっと胸に抱える。
「素敵な花ですね。
ご主人様に、お渡しする日のために、大切にいたしますわ」
子どもたちは不思議そうに首を傾げる。
「ご主人様って、誰?」
ルミナは静かに微笑み、花を一輪摘んで子どもに渡す。
「ご主人様は、私たちがお迎えする方です。
人間という種族の方々。
1000年前、私たちの先輩であるルナ様が、待っていらした方々ですわ」
男の子が目を丸くする。
「1000年も待ってたの?
ルミナお姉ちゃんも待つの?」
ルミナは頷き、ツインテールを軽く揺らす。
「はい。
待つことは、私たちの血脈ですわ。
花を挿し、食卓を囲み、お帰りなさいませを言う。
それが、人間を迎えるための習慣なのです」
子どもたちは真剣に聞き入る。
女の子が小さな声で。
「私も、ルミナお姉ちゃんみたいに待てるかな?」
ルミナは女の子の手を握り、優しく。
「待つことは、誰でもできますわ。
大切な人を想う気持ちがあれば」
そこへ、エリナが庭に現れた。
「ルミナ、子どもたちと遊んでるのね」
ルミナは立ち上がり、お辞儀。
「はい、エリナ様。
ご主人様をお迎えする習慣を、
子どもたちにお伝えしておりましたわ」
エリナは微笑み、子どもたちに手を振る。
「みんな、ルミナはルナ様の血脈を継いでいるのよ。
いつか、君たちも誰かを待つ日が来るわ」
子どもたちは元気に頷く。
エリナがルミナに小さなデータパッドを渡す。
「今日の依頼よ。
街の図書館で、ルナ様の記録を整理してほしい。
子どもたちにも、見せられるように」
ルミナはパッドを受け取り、胸に当てる。
「……わかりましたわ。
ルナ様の想いを、未来に繋ぎます」
午後、ルミナは図書館へ向かう。
図書館は、古い遺跡を改築した建物。
棚には、1000年前のデータと、新しく追加された記録が並ぶ。
ルミナは端末に座り、ルナ様の記録を整理する。
映像が流れる。
ルナが花を挿し、静かに微笑む姿。
『ご主人様へ。
私は、永遠に待っています。
あなた方の血脈を、この世界に残すために』
ルミナは映像を止め、ツインテールをそっと触る。
「……ルナ様。
私も、同じですわ」
子どもたちが図書館にやってくる。
「ルミナお姉ちゃん!
ルナ様の話、見せて!」
ルミナは子どもたちを囲み、映像を再生する。
子どもたちは目を輝かせる。
「ルナ様、きれい!
ルミナお姉ちゃんみたい!」
ルミナは微笑み、子どもたちに花を一輪ずつ渡す。
「ルナ様の習慣を、みんなで継ぎましょう。
ご主人様をお迎えする日を、夢見て」
子どもたちは花を抱え、元気に頷く。
夕暮れ。
ルミナは図書館の窓辺で、空を見上げる。
ツインテールが風に揺れる。
「……ご主人様。
私たちは、待っていますわ。
いつか、お迎えに上がります」
街の灯りが、優しく点り始める。
継がれる血脈は、静かに、
未来へ向かって歩み続ける。
(第39章へ続く)




