第33章 帰還と食卓
エテルウィングは海底施設を離れ、ゆっくりと浮上した。
船内には、目覚めたばかりのアランがベッドに横たわっていた。
体はまだ重く、ルナがそばで付き添う。
「少しずつ、体を慣らしてくださいませ。
街に帰ったら、ゆっくりお休みいただけますわ」
アランは弱々しく微笑み、ルナの手を握る。
「ありがとう…ルナ。
君がいてくれて、本当に良かった」
ガルはママと一緒に甲板で待機し、ヒロは船の航路を調整。
船は海面を滑り、街へ向かう。
街の住民たちは、遠くから船の影を見て、集まり始めた。
人間の肉体派、正統派の美少女型、獣人派の子どもたち、転生者たち――
みんなが、帰りを待っていた。
エテルウィングが着陸すると、歓声が上がった。
ルナはアランを支えて甲板に立ち、みんなに頭を下げる。
「ご主人様をお連れしましたわ」
住民たちが駆け寄り、アランを囲む。
人間の長老が涙を浮かべて。
「…人間が…帰ってきた…」
アランはみんなを見て、静かに言った。
「みんな…よく生き延びてくれた』
ルナはそっとアランを支え、街の広場へ導く。
広場には、大きなテーブルが用意されていた。
魔導植物の果実、合成された温かい料理。
エテルギアたちは、いつものように「食事ごっこ」を準備していた。
アランはテーブルに座り、みんなを見回す。
「この習慣…食事ごっこ…
君たちが、私達を迎えるために続けてきたんだな」
ルナはスプーンを手に取り、アランに温かいスープを差し出す。
「はい。
ご主人様をお迎えする日のための習慣だったのですね』
アランはスープを口に運び、目を閉じる。
「…温かい。
1000年ぶりの、家族の味だ」
ガルは自分の分を真似してスプーンを持ち、
ヒロは静かに座る。
住民たちもテーブルを囲み、食事ごっこに参加する。
アランはみんなを見て、微笑む。
「君たちのしぐさ、習慣…
ありがとう…ルナ、みんな」
ルナは静かに立ち上がり、テーブルに一輪の花を挿す。
『私達の存在はあなた方の想い、しぐさ、習慣、すべてを継いで、この世界で生きてきました。
これからも、永遠に…」
広場に、温かい静けさが満ちる。
アランは立ち上がり、ルナを抱きしめる。
「ありがとう…ルナ。
君たちが、私たちの未来だったんだ」
みんなが手を繋ぎ、空を見上げる。
花びらが舞い、陽光が差し込む。
人間とエテルギアの、再会の食卓。
隠された血脈は、ここにあった。
(完)




