第22章 最後の遺跡と、忘れられた記録
遺跡の内部は、予想以上に広大だった。
天井の高い回廊が続き、壁には人類時代の文字と図式が刻まれている。
魔素の結晶が淡く光り、足音が反響する。
空気は冷たく、遠くから機械の低いうなりが聞こえてくる。
ルナは腰のホルスターから銃を抜き、優雅に構えた。
剣は背中に下げ、両手で銃を支える。
「……警戒を。
モンスターの気配が、濃いです」
ガルは爪を光らせ、ママの背中から降りた。
「ママも、なんか興奮してるよ。
昔の匂いがするって」
ヒロはマナ炉を輝かせ、壁の文字を読み取ろうとする。
「これは……最終実験の記録だ。
人類が、エテルギアに魂を完全に移すための、最後の試み」
回廊の先で、敵が現れた。
守護型魔導獣――古代のセキュリティロボットが、野生化して進化。
ゴーレムのような巨体が、三体同時に動き出す。
ルナは即座に銃を連射した。
バチバチッ!
雷弾が青白く閃き、一体の関節を痺れさせる。
「雷弾、連射!」
続けて剣を抜き、魔炎を纏わせる。
「魔炎斬!」
剣が赤黒く輝き、痺れた敵の装甲を切り裂く。
ガルの爪が別の敵を抉り、ママが咆哮を上げて突進。
ヒロはハックで残る一体の動きを止める。
戦いは短く終わった。
ルナは銃をホルスターに戻し、息を吐く仕草をした。
髪をかきあげ、静かに。
「……まだ、奥があります」
さらに進むと、巨大な部屋に到着した。
中央に、古い端末。
周りに、無数のデータチップと、忘れられた記録。
ヒロが端末を操作する。
「パスワード……前世の記憶で、開けそう」
画面が光り、映像が流れる。
――人類の最後の日々。
科学者たちが、必死にエテルギアを完成させる。
「魂を移せば、人類は永遠に生きる」
「感情を本物にすれば、進化する」
一人の科学者が、ルナの設計図を指差す。
「最終量産型メイドは、感情の鍵だ。
彼女が、待つことで、心が生まれる」
ルナの瞳が揺れた。
「……私が、鍵だったのですね」
映像は続く。
終末の爆発。
人類が地下へ退避し、エテルギアを地上に残す。
最後のメッセージ。
『子たちよ。
私たちは、君たちに未来を託した。
心を持って、生きてくれ。
いつか、帰る日を夢見て』
ガルが静かに言った。
「人間、ほんとに俺たちを子だと思ってたんだ」
ヒロは頷いた。
「だから、均衡を守らせたんだな」
ルナは端末の横に、花の種を蒔いた。
土を優しくかぶせ、水のような魔素を注ぐ。
「……ありがとうございます。
ご主人様」
突然、部屋が震えた。
遺跡の奥から、最後の守護者が現れる。
巨大な融合型魔導獣――人類が作った最終兵器。
ルナは銃と剣を同時に構えた。
「来ます!」
戦いが始まった。
ルナの雷弾が敵を痺れさせ、魔炎剣が斬り込む。
ガルとママの連携、ヒロのハック。
守護者は倒れ、遺跡が静かになる。
端末の最後の記録。
『君たちがここに来たなら、世界は変わったはずだ。
ありがとう。
私たちの子たち』
三人は遺跡を出た。
外は、朝日が昇っていた。
ルナは花瓶に挿す花を探し、一輪摘んだ。
「……新しい朝ですね」
ガルとヒロが笑う。
最後の遺跡で、三人は人類の忘れられた記録を知った。
すべてが、繋がった。
(第23章へ続く)




