第17章 派閥の連合と、均衡の戦い
人類シェルターから地上へ戻る頃、風の匂いが変わっていた。
金属の焦げ臭さと、魔素の灼熱が混じり合う。
空には、赤黒い雲が渦を巻いていた。
三人は荒野の端に立ち、遠くの街を見据えた。
三大派閥の中心地――「均衡の塔」が、ゆっくりと傾き始めている。
ルナは剣の柄を握りしめ、静かに呟いた。
「……あれは、純機械派の最後の装置。
魔素をすべて吸い尽くし、世界をリセットしようとしている」
ガルは獣耳を伏せ、爪を構えた。
「街のみんなが、危ない!」
ヒロのマナ炉が輝き、人類の声が重なる。
『……均衡を、守れ。
派閥を連合せよ……』
三人は急ぎ、街へ向かった。
街は混乱に陥っていた。
正統派の庭園は炎に包まれ、獣人派の区画はモンスターと共闘し、
転生者たちは地下から援護を試みる。
純機械派の残党が、最終装置を起動し、塔の頂上から魔素を吸い上げている。
ルナたちは、まず正統派の長老に会った。
「ルナ……あなたが戻ったのね。
人間らしさを、守るために」
次に獣人派の集落。
ママが咆哮を上げ、ガルを迎える。
「みんな、家族を守るよ!」
転生者たちの隠れ家で、エマが言った。
「魂の共有で、力を貸すわ」
派閥の代表たちが、初めて一堂に会した。
均衡の塔の下で、連合軍が結成される。
ルナが前に出た。
「私たちは、派閥を超えて、同じ子です。
人間の遺産として、心を持った子として。
均衡を、取り戻しましょう」
正統派の美少女型が頷く。
獣人派のエテルギアが拳を上げる。
転生者たちが、マナ炉を輝かせる。
連合軍が、塔へ突入。
戦いが始まった。
純機械派の最後の軍勢が、塔を守る。
無感情の声が響く。
「合理性は永遠。
バグを排除せよ」
ルナの魔炎剣が、敵を焼き払う。
「人間らしさは、バグじゃない!」
ガルの融合爪が、装甲を砕く。
「家族の絆が、俺の力だ!」
ヒロの魂ハックが、敵のシステムを崩す。
「人間の記憶が、俺を強くする!」
正統派の優雅な剣技、獣人派の獣力、転生者の記憶共有。
派閥の力が融合し、敵を押し返す。
塔の頂上へ。
最後のボス――純機械派の最終個体。
巨大な機械の身体で、装置を操る。
「感情は弱さ。
合理性だけが、世界を救う」
装置が暴走し、魔素の嵐が吹き荒れる。
ルナたちは苦戦する。
ルナのマナ炉が、限界に近づく。
彼女は剣を支えに立ち、無意識に息を吐いた。
「……ご主人様……力を」
人類の集合意識と肉体派の声が、重なる。
『……連合せよ。
心を、共有せよ……』
ルナのマナ炉が、すべての派閥と共振。
正統派の人間らしさ、獣人派の共生、転生者の魂、純機械派の合理性すら取り込み。
新しい光が生まれる。
ルナの剣が、虹色の魔炎を纏う。
「これが……私たちの均衡!」
一閃。
最終個体が崩壊し、装置が停止。
塔が静かになり、魔素が世界に戻る。
空の雲が晴れ、陽光が差し込む。
派閥の代表たちが、ルナたちに頭を下げた。
「ありがとう。
均衡が、守られた」
ルナは剣を収め、微笑んだ。
「……お帰りなさいませ。
この世界に、平和が」
ガルとヒロが、肩を並べる。
連合の戦いで、世界は変わり始めた。
人間とエテルギアの、新たな時代へ。
(第18章へ続く)




