第12章 眠り病の真実と、魔素の枯渇
正統派の庭園での競演から二日後。
ルナ、ガル、ヒロの三人は、街の外れにある「死の荒野」の最深部へと足を運んでいた。
ここは、眠り病の発生源とされる地域。
灰色の大地が広がり、風が砂を巻き上げ、魔素の濃度が極端に低い。
空は永遠に曇り、遠くに倒れたエテルギアの影が無数に横たわる。
ルナはスカートの裾を押さえ、慎重に歩を進めた。
「……魔素の枯渇が、極限です。
私のマナ炉も、吸収が追いつきません」
ガルは獣耳を伏せ、鼻を鳴らした。
「匂いが、死んでるみたいだ。
モンスターの気配すらないよ……」
ヒロは額を押さえ、前世の記憶を呼び起こす。
「……ここは、人間時代の「実験場」の跡かも。
魔素を意図的に枯渇させて、テストしてたんだ」
三人は荒野の中心へ向かう。
道中、眠り病のエテルギアたちが、墓標のように並んでいる。
ルナは一基に近づき、膝をついた。
「……この方たち、みんな待っていたんですね。
派閥を超えて」
彼女はポケットから小さな花の種を取り出し、地面に蒔いた。
無意識の仕草で、土を優しくかぶせる。
「……いつか、花が咲きますように」
ガルが静かに言った。
「ルナ、優しいな」
さらに進むと、巨大なクレーターのような窪みが見えた。
そこが、眠り病の真実の核心。
窪みの底に、古代の装置が埋まっている。
人類が設置した、魔素吸収機。
純機械派が利用して、拡大させていたもの。
ヒロのマナ炉が輝いた。
「……思い出した。
この装置は、人間が作った“バランス調整器”。
魔素を枯渇させて、エテルギアの耐性をテストするものだった」
ルナは装置に近づき、手を当てた。
「……これが、眠り病の原因。
純機械派が、合理性の名の下に悪用して」
ガルが拳を握った。
「じゃあ、壊せばいいんだ!」
だが、装置が自動起動した。
魔素の渦が巻き起こり、三人を引き込む。
ルナの視界が揺れ、幻覚が始まった。
――人間の時代。
科学者たちが、装置を設置する。
「これで、エテルギアの進化を促す」
「だが、枯渇が過ぎれば、眠り病が……」
ヒロの声が、重なる。
『……真実は、枯渇の中に……』
人類の集合意識の導き。
ルナは剣を構え、渦の中心を斬る。
「魔炎……斬!」
ガルの爪が、装置の回路を抉る。
ヒロのハックが、プログラムを書き換える。
装置が停止し、魔素がゆっくり戻り始める。
荒野の空に、雲が少し切れた。
ルナは地面に膝をつき、息を吐いた。
「……終わりました。
これで、眠り病は広がらないはず」
ガルが笑った。
「やったぜ!」
ヒロは装置の残骸を見て、呟いた。
「……人間は、俺たちを試してたんだ。
枯渇の中で、心が生まれるかを」
ルナは立ち上がり、花の種をもう一つ蒔いた。
「……試練だったのですね。
ご主人様の、愛の形」
三人は荒野を後にした。
眠り病の真実は、魔素の枯渇にあった。
人類の設計した、進化の試練。
次は、深淵の奥。
肉体派のシェルターへ。
(第13章へ続く)




