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レイヴンのいない夜/巡り合わせ

《レイヴンのいない夜》


ーーレイヴンが帰って来なくなって、数日後。カティアは居ても立ってもいられず、レイヴンがいる街まで迎えに行く。向かったのは、王都のすぐ隣の街。彼の泊まっている宿の部屋の前に立ち、深呼吸をするカティア。


ーーコンコンッ


カティア「レイヴ、いる?」


レイヴン「……お前、何やってんだよ」


カティア「何やってるのはこっちの台詞よ。どうして帰ってこないの?」


レイヴン「……別に」


カティア「別にって何よ! ちゃんと話そうよ。ドア、開けて!」


レイヴン「話して何になる」


カティア「なるわよ! ねぇ、レイヴ……私のこと、嫌いになったの?」


レイヴン「……っ! とりあえず、今日は帰ってくれ」


カティア「えっ?」


レイヴン「帰れよ、カティア」


カティア「なんで……そんなこと……レイヴ、ちゃんと話ーー」


レイヴン「……もういい」


カティア(何……? 体が……光に包まれてーー)


カティア「レイーー」


レイヴン(……さっきの声……あいつ……泣いてた、のか?)


ーーカティアの私室。目の前が白くなったと思ったら、次の瞬間カティアは転移していた。


カティア「……帰還魔法……? 強制的に帰したの??」


カティア「……っ、なにそれ……ひどい、話してもくれないの? どうして……」


カティア「もう、レイヴが分からない……私のこと……もうどうでもいいの?」


カティア「…………」


カティア「……もう、レイヴじゃなくてもいいや」


カティア「明日は縁談相手と会うんだし……もし、相手が私を望むなら……それでも……」


カティア「……いいのかな……違う、こんなの、違う……!」


カティア「でも、もう……レイヴは……」


ーー涙がカティアの頬を伝う。一方、その頃のレイヴン。


レイヴン「……俺、何やってんだ。少し離れて冷静になりたかっただけなのに……カティアを泣かせた? 俺が……?」


レイヴン「……はぁ。子供かよ……俺」


レイヴン「『嫌いになったの?』なんて、そんなわけねぇだろ……!」


レイヴン「……明日、帰るか。ちゃんと謝って、ちゃんと気持ちを伝えよう」



   ◆◇◆



《巡り合わせ》


ーーローゼン商会の事務所。レイヴンは足早にカティアの執務室に向かったものの、カティアの姿はない。廊下の先で従業員が雑談している。


レイヴン(……カティアの声が、頭から離れねぇ。昨日、何か言いたげだったよな……やっぱり、ちゃんと話すべきだったか?)


従業員A「カティアさん、今日はお休みなんですね」


従業員B「この間お話が来た、縁談のお相手と会っているらしいですよ」


従業員B「えっ、あのコンラートさんと? アイゼンシュミット商会の跡取りの、あの敏腕商人?」


従業員A「そうそう。めちゃくちゃ優秀で人格者らしいし、相性も良さそうですよね」


レイヴン(……は? カティアが……縁談相手と会ってる?)


レイヴン「……っ!」


レイヴン(こんなことなら探索魔法も習得しておくんだった……! くそっ、どこだカティア!!)


ーー王都の広場に面した流行りのカフェ。テラスの一等席でカティアと縁談相手のコンラートが食事をしている。


コンラート「カティアさんとは、話が尽きませんね。まるで昔からの商売仲間のようだ」


カティア「ふふっ、商人同士ですから。コンラートさんのお話もとても勉強になります」


カティア(コンラートさんは、知的で落ち着いていて、話していて居心地もいいし、誠実な人柄が伝わってくる……レイヴとは、大違いね)


カティア(レイヴは子供っぽくて、すぐいなくなって、いつも好き勝手して……でも……)


ーーカティアの脳裏にレイヴンの姿が次々と浮かぶ。



『久しぶりにカティアのオムライスが食べたい』


『俺、誰にも行き先言ってなかったんだぞ!? なのに、なんで見つかった!?』


『お前といると楽だし……なんつーか、居心地がいい』


『……カティア、俺と踊るぞ』


『絶対に、お前のところに帰って来る。待ってろよ』


『お前に会うのが一番大事だって言ってんの』


『お前が誰かと結婚なんて、考えたくもねぇんだよ』



カティア(……結局、考えてるのはレイヴのことばかり)


コンラート「……カティアさん?」


カティア「えっ」


コンラート「僕は、カティアさんを好ましく思っています。結婚相手として、信頼し合い、愛情を持って温かな家庭を築ける方だと」


カティア(……っ! なんて、いい人なんだろう。こんな人と結婚すれば、穏やかで幸せな日々が送れるだろうな。迷う必要なんてない……だけどーー)


レイヴン「カティア!!!」


カティア「……レイヴ?」


レイヴン(……見つけた。よかった、間に合った……!!)


コンラート(……やはり、来ましたか)


コンラート「このタイミングで来るとは……彼はツキも持っていますね。あと五分遅かったら、結末は変わっていたかもしれませんね。こういう巡り合わせは大事だ」


カティア「コンラートさん……」


コンラート「あなたと彼がいるローゼン商会は安泰ですね。これからも、良きお取引をよろしくお願いします(ニコリ)」


カティア「……ありがとうございます。これからも、良きお取引をどうぞよろしくお願いします!」


レイヴン「行くぞ」


コンラート「うわ、あれが噂の帰還魔法か。便利だな、魔道具化してうちの商品にできないかな」


コンラート(まあ、彼がカティアさん以外のために動くとも思えないけれど……あーあ、結構本気だったんだけどな)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本日、もう一話投稿します。本編最終話です。


次話『最終話 最強の護りと約束された未来』

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