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幼馴染の日常/戦利品/はじめてのお迎え/レイヴ『ン』

会話形式で進む幼馴染の物語です。

文字数少なめ、気軽にお読みください。

全十三話、完結済みです。

《幼馴染の日常》


――ローゼン商会のカティアの執務室。帳簿を広げる彼女のもとに、久々に幼馴染のレイヴンが現れる。


カティア「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


レイヴン「いきなり深いため息!? 俺、いま旅から帰ってきたばっかなんだけど?」


カティア「どこ行ってたのよ! いつもいつも、何も言わずに勝手にどこかへ行って!!」


レイヴン「いや、そんな怒らなくても……」


カティア「怒るわよ!! 一ヶ月も音沙汰なしで、突然ふらっと戻ってきて……!」


レイヴン「……ただいま」


カティア「今さら遅い!!」


レイヴン「でも帰ってきたじゃん?」


カティア「問題はそこじゃないの! ……はぁ、もういいわ。とりあえず、座ってなさい」


レイヴン「あ、このあと一緒に飯どう? 久しぶりにカティアのオムライス食べたい」


カティア「そこは『怒らせてごめん』とかでしょ!!」


レイヴン「……カティアが怒ってるの見ると、なんか安心するんだよなぁ」


カティア「何その意味不明な感想!?」


レイヴン「だって、お前がこうやって怒ってくれるってことは、心配してくれたってことだろ?」


カティア「……いいから座ってなさい。これ片付けたらオムライス作ってあげるから」


レイヴン「わーい!」


カティア「子供か!」


レイヴン「俺の幼馴染は優しいなあ」


カティア「私の幼馴染は調子が良すぎる!」


カティア(……でも、とりあえずレイヴが無事に帰ってきてくれてよかった)



   ◆◇◆



《戦利品》


――ローゼン商会のカティアの執務室。机の上には、レイヴンが持ち帰った得体の知れない品々が並んでいる。


カティア「……で、これは何?」


レイヴン「さあ?」


カティア「さあ? じゃないでしょ!? なんで正体もわからないものを持ち帰ってくるのよ!」


レイヴン「だって、すごい希少な品だって言われたし」


カティア「誰に!?」


レイヴン「洞窟の奥にいた、やたら物知りなアナグマ」


カティア「……いや、もう、ツッコミどころが多すぎて疲れるわ……」


レイヴン「でもほら、こういうのを見極めるのはカティアが得意だろ?」


カティア「はいはい、どうせ私がいないとダメなんだから」


レイヴン「頼れる幼馴染がいてくれて、俺は幸せ者だよ」


カティア「……っ!」


レイヴン「あれ? なんか顔赤い?」


カティア「なってない!!」


レイヴン「なってるだろ、今ちょっと可愛かった」


カティア「~~っ!! もう知らない!!」


カティア(結局、今日も世話を焼かされてる……でも、それが悪い気分じゃないのが悔しい!)



   ◆◇◆

 


《はじめてのお迎え》


――遠く離れた街、雑多な酒場の一角。何気なく地図を広げるレイヴンの前に、突然見慣れた人物が立つ。


レイヴン「……え?」


カティア「よっ。迎えに来たわよ」


レイヴン「…………は?」


カティア「何その顔? まるで幽霊でも見たみたいじゃない」


レイヴン「そりゃそうだろ! なんでお前がここにいるんだよ!?」


カティア「ふふんっ、私を誰だと思ってるの?」


レイヴン「……まさか、俺のこと探して?」


カティア「別に。たまたま仕事でこの辺りに用事があっただけよ」


レイヴン「……いや絶対違うよな? そのドヤ顔が物語ってる」


カティア「何よ、私が来たのがそんなに意外?」


レイヴン「意外ってレベルじゃねえよ! 俺、誰にも行き先言ってなかったんだぞ!? なのに、なんで見つかった!?」


カティア「簡単なことよ。まず、レイヴがこの間買ってた地図、妙にこの地方のページだけ開き癖がついてたわね?」


レイヴン「……そんなとこ見てたのか」


カティア「それに、前に『西の方に面白そうな遺跡があるらしい』なんて言ってたでしょ? その時の顔、完全に行く気満々だったし」


レイヴン「そんなことでここまで!? お前、怖すぎるだろ……」


カティア「あとは、途中の街でそれらしい人がいなかったか聞き込みしたら、一発で分かったわ」


レイヴン「ローゼン商会仕込みの情報収集力、恐るべし……」


カティア「でしょ?」


レイヴン「いや、感心してる場合じゃねえ! つーか、何で迎えに来たんだよ!?」


カティア「また何も言わずに消えたでしょ! 商会の仕事が忙しくて放っておいたら、いつの間にかいなくなって……まったく、どれだけ世話を焼かせるのよ!」


レイヴン「お前、ほんとに……」


カティア「ほんとに?」


レイヴン「……いや、なんでもねえ」


カティア「さ、帰るわよ!」


レイヴン「え、もう!?」


カティア「当たり前でしょ。無駄に長旅させないでよね」


レイヴン「へいへい」


レイヴン(こいつが迎えに来るとか、予想外すぎて……でも、ちょっと嬉しい、かも)



   ◆◇◆



《レイヴ『ン』》


――ローゼン商会のカティアの執務室。商会の書類を整理しながら隣り合う二人。何気ない会話の中で、ふとした疑問が浮かぶ。


レイヴン「なあ、カティア」


カティア「ん?」


レイヴン「お前、ずっと俺のこと『レイヴ』って呼んでるよな」


カティア「……そうだけど?」


レイヴン「なんで『ン』を略すんだ?」


カティア「え?」


レイヴン「いや、だってほぼ変わらないじゃん。『レイヴ』でも『レイヴン』でも、呼びやすさとか変わらないだろ?」


カティア「うーん、覚えてないけど……多分、子どもの頃、面倒だったんじゃない?」


レイヴン「『ン』一文字が!? そんなことで省略される!? 」


カティア「いいじゃない、別に」


レイヴン「いや、いいけど……腑に落ちない」


カティア「そもそも『レイヴン』って名前の響き、ちょっと硬いのよね。あんたには『レイヴ』の方がしっくりくるっていうか」


レイヴン「お前な……俺の名前だぞ?」


カティア「だから何よ。呼びやすい方がいいでしょ?」


レイヴン「……まあ、いいけど。『レイヴ』って呼ばれるのも、悪くはないし」


カティア「でしょ? ほら、もう気にしない気にしない!」


レイヴン「お前は気にしろよ……」


カティア(なんか、他の子と同じ呼び方をしたくなかったのよね……でも、それを言うのはちょっと恥ずかしいからやめておこう)


レイヴン(こいつだけなんだよな、『レイヴ』って呼ぶの……まあ、それはそれで……)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次話『日常/アイスクリーム/レイヴンの本気』

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