表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/6

プロローグ~おつかれ私、そろそろ異世界行く?

社畜OLが終電帰りにトラックと遭遇する話です(嘘)

 終電間際の電車に揺られながら、私はスマホをいじる指を止め、大きくため息をついた。


「はぁ……今日も残業か……」


 スマホの画面には、何度も見た乙女ゲームのスチルが映し出されている。華やかな宮殿、優雅な舞踏会、完璧な微笑みを浮かべる王子様。画面の中の世界は美しく、何よりも私の現実とはかけ離れた理想郷だった。


 私はごく普通のアラサーOL、黒瀬葵。社会人になってからというもの、人生は仕事漬け。朝から晩までパソコンに向かい、上司に詰められ、無理難題を押し付けられ、それでも何とか食らいついて生きてきた。


 この生活を何年続けた?


 学生時代は、「やりがいのある仕事をして、自立した女性になりたい!」なんて思っていたけれど、現実はそんな甘いものじゃなかった。残業は当たり前、休日出勤もざら。恋愛なんて夢のまた夢で、疲れて帰って寝るだけの日々。


「……私、何のために生きてるんだろ」


 気づけば、口からそんな言葉が漏れていた。誰かに聞かれたら恥ずかしいけど、本当にそう思う。お金はそこそこ貯まったけど、何かに使うわけでもない。ただ生活費に消え、趣味の乙女ゲームに課金するだけ。


 でも、その乙女ゲームこそが、唯一の癒しだった。


 私は筋金入りの乙女ゲーマーだ。中学の頃からハマり、社会人になってからも辞めることはなかった。現実では味わえない恋愛を疑似体験できるし、何より、ストーリーの中で「ヒロイン」として愛される感覚が心地よかった。


「はぁ……転生して、乙女ゲームのヒロインになりたいなぁ」


 電車の窓に映る自分を見ながら、そんな馬鹿げたことを呟いてみる。


 もちろん、そんなことが起こるはずがない。


 ――起こるはずが、なかった。


 ***


 終電を降り、暗い夜道を歩く。


 会社からの帰り道は、すっかり慣れたものだった。人気の少ない道を歩きながら、考えるのは明日の仕事のこと。朝早く出社して、上司に怒られ、溜まった書類を片付けて、また残業。そんな日々が、これからも続く。


 でも――


「……もう疲れたなぁ」


 ふと、足が止まる。


 こんな人生、何が楽しいんだろう?


 ぼんやり考えていると、不意に、視界の端に光が差し込んだ。


 ――眩しい。


 顔を上げた瞬間、それが何かを理解するよりも早く、私の体は弾き飛ばされた。


「えっ……」


 衝撃。全身を貫く激痛。


 地面に叩きつけられた私は、ぼんやりと視線を上げた。


 目の前には、大きなトラック。ブレーキの音。誰かの悲鳴。


 ああ、私……轢かれたんだ。


 意識が遠のいていく。


 痛みも、現実も、どんどん薄れていく。


 ……終わるのかな、私の人生。


 せめて……せめて、乙女ゲームの世界に転生できたら……


 そんなことを考えながら、私の意識は真っ暗な闇へと沈んでいった。



ここまで読んでくれてどうも。

次回から本格的に話が動きます(本当)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ