声出ずに 封じた思いは 海の底
どうも、コーフィー・ブラウンです。
わたくしごとですが、最近コーヒーを好きになってきました。
では、お楽しみください。
キャラクター紹介
リク・レシオン (24) 今作品の主人公。
地球という星から 異世界に召喚された成人女性。
地球では、ある新興ネットメディア社でファッションニュースを担当していたただの会社員だったため、いきなりの新天地に戸惑いながらも日々を過ごす。
魔界(魔王領)では副社長という重役に就きながらも、教場(学校)で教官(教員)を続けている。
ミリア・コルトーン (23) リクの同僚。
魔王国で教官を務める魔人の女性。
自分のファッションセンスに忠実。かといって趣味はショッピングというよりは、実験やそのための素材収集。
担当科目は薬学、工作。 雷魔法が得意。
アーイン・スタッシュ (35) リクの同僚
教官をまとめ上げ、教場の最高責任者である人事部長ヨシル・ルマンの秘書。(魔人の男性)
ヨシルの同期で、かつては第五課の若きエースだった。
ハル・ピクリア (26) 副社長リクの秘書
元気が取り柄のハーピーの女性、自由人だが勘が鋭い。
赤茶色の髪色と羽が特徴。
自分の生まれの里に、夫と子がいるため休日には帰っている。
ユキノ・フリザレス (?) 副社長リクの秘書
いつも冷静な雪女の女性。 真面目さが目立つが、無理はしない。
服装はほぼ毎日異なり、毎朝彼女自身で作った衣装を着ている。
ファッション・芸術・音楽・武芸などほぼすべてに精通していて、ストイックにこなす。
カビラ・メイナード (17) 営業部第二課
リクの元教え子の魔人の男性。 現魔王の息子オルトと親友。
実力はかなりあるが、まだ経験が浅いため日々修行にいそしんでいる。
「リクセン! やっと来たの!? 早くしないと昼休み終わっちゃう!」
春が訪れて魔界では、至る所で桜が見事に咲き誇っている。
教場に植えられた6本の巨大な桜の根元全てに、人だかりができている。
『ハナミ』なんだと。
前も言っただろうか、ここ魔界は雨がほとんど降らないから桜が散らない。
咲き始めてから一月の間、花が見れるよう。
「ここ、座って座って!」
地面に張っている大きめの根元を椅子に、座り込む。
「きれぇっ・・」
すごく、美しいと思う。
地球のとは違って紅桃白のグラデーションが鮮やかになびいているので、まるで金魚や錦鯉が群れとなって泳いでいるようだ。
女子生徒はそんなリクを見て嬉しそうに笑顔になり、
「はやく食べてっ!」 と言った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
昼休みが終わりかかり、午後の授業があと数分で始まる。
まだ新しめの本を数冊、キャプチャーバック(空間魔法が仕組まれた不思議で便利なカバン)に入れ、リクは立ち上がる。
「リクッ! これから初めての地政学の授業でしょ!」
ミリアが飼い慣らされた子犬のように話し掛ける。
リクは少し張っていた気を抜き、
「はぁーっ・・そうなんだよぉ・・」
と答える。
無理もない。
この魔界において地政学とは言わば見ることも知ることも通常は無いだろう、そういう学問だ。
人間の国がどういう風に形を成しているのか。
魔界は今までどのように人と接してきたのか。
この二つが導く先は・・・
「人と魔族の友好的な交流は可能なのか」
リクが黒板に白いチョークでそう書いたとき、
空気が変わった。
敵意、戸惑い、中には確信も感じるかも・・・
でも、
「・・ぃよ、怖くないよ。」
ガタッ(何人かの生徒が椅子を揺らし身構える音)
ザワワッ なんっ・・」や「おいおいっ」、「はあっ!?」
騒々しくなる魔族を前にしたって、私は負けない。
あっちの世界よりちょっとは強くなれたかな。
でも、そうではない。
負けてはいけないからだ。
「今の君たちは間違っている。
教わったことを真に受けて、その先の思考を放棄してっ!
先生がそう言ったからですか? それじゃダメなんですっ!
一つ問います。
国は、いつ死ぬと思いますか?」
彼女は壇上から降りて生徒に近づいていく。
生徒は凝視しながらも次第に心を落ち着かせようと息を整える。
当たり前だ。
彼女に敵意、さらに言うと殺意などは向けていけない。
いくら人間で身勝手な言動をしようと、副社長という立場なのだ。
「君たち中級生には、初めて話すかもですね。
少し長くなります。 どうぞ座って。」
生徒たちは顔を見合わせ、ゆっくりながら座り込む。
「先生は、こことは違う世界から来た人間です。
私がいた世界に、魔法は無くて、あなた達みたいに角が生えた人なんて見たこと無かった。
だからこの、『人と魔族の友好的な交流は可能なのか』という問いは分かりませんが、『国はいつ死ぬか』は少しだけ、答えられる気がします。」
リクは教壇に戻り、生徒の方をまっすぐ見た。
「それは君たちが、この国の行末を熟考するのをやめたときだと。
今の国に満足しようと、不満でいっぱいだろうと。
私の国は一度、大敗を喫しました。
無条件降伏だとです。
危うく何もかもが失われるところでした。
ただでさえ、多くを失ったのに。
この国もそうなるのです。
負けるとはそういうことです。
でも、少なくとも私がいた頃はもう全然で、平和で素晴らしい国でしたよ。
それはきっと、国が死ななかったから。
未来が、あまりに健全だったんです。
さあ、ここだけで、この授業だけで話し合うくらいなら、誰も怒らないはずです。」
それから、リクと中級生241名のうち、授業に出ていた80名は教科書など一回も開かずに、授業が終わるまでひたすらに理想を交わしていた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「リクさん。いらっしゃいましたよ。」
授業の手帳を書き留めるのに必死なリクに、上司である人事部長の秘書、アーイン・スタッシュ(長身の色黒イケメン)が机に手を添えて優しく告げる。
バッ
リクは顔を見上げ、
バッ
もう一度機敏に顔を振り、振り返る。
そこには、赤茶色の短い髪に、Tシャツと長いジーパンを履いた、女性。
半袖の口からはトリにしか見えないあの羽でできた両腕と、靴の代わりにトリにふさわしい足を持った女性。
「ふくしゃチョーっ! きちゃったよーっ!」
「ハルっ! ああ、もうこんな時間・・」
リクが机の上の書類をカバンに入れようとした手を、手の上に手を置いて制止し、
「明日は土曜日でしょう。今回は特例として本日中という規則は気にしないでください。」(アーイン)
「ありがとうございまあすぅ~~」
リクは机の上に置き戻し、ハーピーとともに教官室から出ていった。
「ふう・・・」
「アーイン。 グッジョブでふぞ!」(ダトン・ルイスイス:リクの同僚)
「無理するな、とは言いづらいですね。」
人が入れる大きさのバスケットで、飛んでいるハーピーに運んでもらっているリク。
ハーピーのハルは力持ちだから安全で、それにわざわざ主塔に入る手間を省ける。
「ねえ、ハーピー。」 「はい?」
「前、認可を下したゴーレム川のアーチ橋の改修、どうなってる?」
彼女は困ったという顔を向け、
「実は、認可を出した三日前に工事の施工者から五か月はこちらに取り掛かれそうにないと連絡があったそうで。」
「じゃあまだ現場では何も進んでないってこと?」 うなずくハル。
「ほんと信じられないっ! せっかく計画書が古いからって、現場にもう一度確認をしに行ってやったってのに!」
彼女の怒りでリクの乗っているバスケットがグラグラ揺れる。
「わわわっ・・ちょっと、ハル」
「あそこに橋がかからないと、開拓がいっこうに進まないっていうのは嫌だな・・」
「だね・・せっかくの好立地だってのに。・・着いたよっ!」
ハーピーはバスケットを広々としたベランダの、芝生の上に優しくおろす。
リクは礼を言って屋内に入ると、そこにはハルと同じリク直属の部下であるユキノ・フリザレスとラミア・スネルガン、そして見覚えのある少年。
「カビラ君!久しぶり!」
彼はすぐに明るい笑顔を浮かべ、
「先生っ! お久しぶりです!」
卒業した教え子との再会、これは嬉しすぎる。
「どうしてここに? まさか第二課を追い出されちゃった?」
この問いは私の冗談と欲望の混じったものだ。
まあ、欲望と言っても、ただただ一緒に働きたいというだけ。
「いえ、ただの伝達ですよ。 先生、僕たち第二課と一緒にダンジョン『深淵の底』に向かいましょう!」
またか・・そりゃそうだよね・・
そう思いながらリクは、
「そう、頼りにしてるよっ!」 と笑顔を見せた。
本作品を読んで頂きありがとうございます。
アブラムシ対策は何ともなんとも・・・
次回もよろしくお願いします。




