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苦くない 紅茶の味は 自分次第

どうも、コーフィー・ブラウンです。


どうか楽しんでください。

トポポポポッ・・

綺麗な褐色をした茶を二つのティーカップに注ぎ分ける。

これだけでも美味しいけど人間の彼女には少しきついだろう。

「ありがとう。ター君。」

カメにしては甲羅が平らすぎる、カメがのっそりと甲羅に器を乗っけて現れる。

その器から注がれる白いミルクが、一つのカップだけに。

まるで星空のように紺色を基調として白い粒が散在する、かわいいトレイに載せて数少ない友人が待つ部屋に入る。

チラッ

暖簾のれんをそっと開けて見ると、読書に夢中でこちらに気づいていない様子の彼女。

休日を目一杯、楽しんでもらえてくれてるようでよかった。

ああ・・やっぱり似ているな。

顔は恐らく奥様の方をもらったのだろうが、彼女の醸し出す雰囲気や姿勢は丸っきり副社長だ。

あ、そういえばリクも副社長になったんだった。


リクはサラに気づいて、「あ、ありがと、サラ。」 と読んでいた本をおろした。

「ううん、くつろいでいていいわよ」

「私、ここ好きなんだ」 リクはそう言いながら、陽光とつる植物がつくった部屋の景色を見渡す。

それを聞いてサラは嬉しそうにしながら、カップを口に近づける。


「ねえ、サラ。オルト君に何を渡したの?」

ピクッ カップが止まった。

「どうして私に? 技術課のかもしれないわよ?」

「それって認めてんじゃん。 別に怒ってないよ。けど・・」

「フフッ ごめんね?リク。 だって未来の魔王様が言うなっていうから」

「ん~・・、あれはさ、魔力の供給を担っているの?それとも魔法の出力をサポートしてたり?」

「・・・どっちも半分正解で半分違う。付けてみればすぐわかるよ」

サラは棚からあの黒い宝石があしらわれた指輪を持ってきた。

リクはそれを受け取って、ぐるりと見回す。

「大丈夫。爆発したりなんかしないわ。」

恐る恐る指に差し込むリク(左手の薬指に)。

「!」 鼓動を感じる。 胸に手を当ててる訳ではないのに・・!

「感じるでしょ?自分の有り余る魔力が解放された歓喜を。」

リクの上半身、というより全身がドクンドクンと一定に反応している。

ついに耐えられなくなって膝から崩れ落ちたリクを、サラが魔法で起こしてまるで変態のようにリクの顔に触れる。

「サラッ・・、これえ、ナニィ・・?」

「えへえ? あ~・・こおれはさ、」

もうキスするかしないかの距離。

「君たちの呪いを緩和させる魔道具。良かった、わたしの見立て通りで、とってもワクワクしちゃう運命ね」

それって、どうい・・


パチっ 「・・ぅ」

ソファーに寝転んだリクを、アルファ・ラードンとサラ・アンダーバーの二人が見つめている。

「よく眠れたか?」 そう聞きながらアルファは本を読むのに掛けていた眼鏡を外した。

サラはティーを注いでリクの前に差し出す。

「あ、おはようございます・・」

一体何をしていたんだっけ。 確かに、疲れていなかったとは言わないけど・・。

「何を寝ぼけてんだ。早く帰らないと、同僚に心配されるぞ?」

四時六分、サラは気ままにティーを味わっているし、もう用は無いはず。

「じ、じゃあ、帰る、よ? お邪魔しましたー・・」

とぼとぼと歩いていくリクの後ろ姿を、窓から見ていたアルファが、

「結果は?」 「当たり。明らかにオルト様よりリクのほうが、反応が強く出たわ」

「そうだな。潜在能力の面では、あいつを超えていたと俺は感じた」

リクがもだえる最中、クローゼットの中に忍んでいたアルファ。

「結局、あの後何しに行ってのよ?」

彼は振り返って、「届け物を頼まれたんだ」


広大な魔王城を出て、すぐそこにある寮の前にあまり見覚えのない服装の人たちが集まっているのが見えた。

「あ!リク!」 ミリアと・・

タッ リクに駆け寄る黒い人間の少女。

「君は・・」 「うあっ、のっ・・」

うつむいていた彼女は顔を上げて、真っすぐな眼差しを向けた。

「ら、ラミア・ハルコミューラですっ」

彼女は恥ずかしそうに腕をすり合わせたり、手で髪を触ったり・・

この子・・・

「地球」 少し揺れるがうつむいたまま。

「日本」 ハッ 顔を上げた。

「学校」 嘘。と言いたげな顔だ。

リクはすぐに彼女を抱き、この世界には縁のない言葉をつぶやき続けた。

「夏休み・・電車・・かき氷・・ラーメン・・テレビ・・アニメ・・スマホ・・」

「うあああああんんっっっ・・うあああああん」

ヨシル、ミリア、アテリー、ダトン、寮母さん、そして少女の調査に携わった技術課の人たち、そこのいる魔人の全員が不思議そうに見ていた。


「ねえ、リク姉。ここ、魔王の国でしょ?なんで逃げないの?」

「うん・・そうだな・・」 あ、困ってる。(ラミアは心情に敏感だ)

「やっぱ何でもない、私、明日からの教場?ってやつ。行くんだよね?」

「うん、たn・・」 楽しみ?と聞こうとしたリクは口をつぐんだ。

ラミアの横顔は完全に真逆の感情を表していた。

「大丈夫、私がいるからさ、行こ?」 「・・・」







本作品を読んで頂きありがとうございます。


先生という職業は、学校に行かす行かせないという将来にとってはある程度些細なことをまるで生徒に、一筋の光明を示すように、手軽に諭すことができるという点でとても崇高だなと思うわけです。


キャラクター紹介

ラミア・ハルコミューラ (9)

「サタン」を宿す悪魔憑きの少女。 黒い髪と目をしている。悪魔が表立ったときの角は黒に赤紫の筋が映える。

どうやら日本という国から転生したようだ。どうしてリクは気づいたのだろう。

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