卒業の時③
どうも、コーフィー・ブラウンです。
どうぞ楽しんでください。
「コープ。ちょっと時間あるか?」
主塔の最上階から二番目。 巨大な円柱の縁をぐるりと一周する廊下。
「オゼロ。・・すまないな。少し公務は控えさせてくれ。」
「構わん。それよりも、父上のことなんだが。」
「ああ・・それは中で話そう。」
副社長の階層は、3年前に書物庫と上階の部分を用心深いコープに改装してつくられた結果、まるで迷宮のようなものが出来上がってしまった。
いくつもの扉、廊下、部屋を通って着いた一角の部屋。
「ずっと前から分かっていたが、父はもうだめそうだ。」
「・・じゃあ、来月の予定は先送りか。」
「俺の愛息をお前の子に早く会わせたかったのに~!」
「まあ、戴冠式以外で顔を合わせるくらいなら機会はあるだろ。
それより散々練ってきた俺たちの旅行プランの変更だ。」
「有り得んっ!また至る所に謝らなんといけんのかっ!?」
「国の一番と二番がそろって一週間、国政を放るんだ。普通ならそれこそ有り得ないんだぞ?」
「~~~・・」 不機嫌そうにそっぽを向く次期魔王。
ピタッ 「うおっ!?」
小さいシャンパンのボトルを持ったコープ・レシオン。
「あの二人はずっと前から仲いいんだから、こうなるのは分かってただろ。」
二人の男の後ろで二人の赤ん坊を抱いた彼女らは本当に楽しそうに談笑している。
「・・まあ、よかった。俺もお前もあいつらも。そして生まれてきたあいつらも。」
「ハッ、何言ってんだか。これから死ぬまで守っていかなくちゃいかんのだぞ?コープ。」
チン ボトルの乾杯音の向こうで、二人の赤ん坊の小さい手同士が触れ合っていた。
「さあ、上級生二名!カビラ・メイナード!」 「はいっ!」
観客席の最前列。 「ねえ!父さん!ちゃんと撮ってるよね!」
「ああ・・落ち着け、ルイナ・・!声が入るだろっ」
ステージの中央に立つと、カビラ・メイナードは深く息を吐いて、ゆっくりと構える。
ああ、頑張れっ・・(リクの心)
「ああーっ!だめだ!」 地面に座り込むカビラ。
「いける!さっきより整ってたよ!」とリク。
「最後の二つだなー・・くっそー・・」
その様子を見守り続けるリク。
もう夕暮れ。 橙色の夕陽が広大な校庭を照らしている。
今日もそろそろ終わりかな・・ だんだん疲れてきた少年。
「よしっ!続きはまた明日!帰ろう!」 「そーだなー・・」
「いやー、間に合うかな・・」 「喜んでくれるといいね。」
「な。本当は上級水魔法の連発とかでもいいんだけど、これが出来たらもっとすげえだろうから。そしたら・・」 「そしたら?」 「何もねっ!」
ー中級身体強化魔法・アウェイクー 足元を照らす魔法陣。
ー下級火魔法・ファイヤーアローー 右足に一つ。
ー中級植物魔法・キャノンシードー 右肩に一つ。
ー中級岩魔法・カラードー 左肩に一つ。
ー下級闇魔法・ヤミスー 左足に一つ。
カビラ・メイナードの身体の周りに5つの魔法陣が発動されている。
魔法陣の多数同時発動。しかも別属性。
つまりは、見た目の割にはすごいことをやってのけようとしているのだ。
ー中級蟲魔法・シアンヒドールー 頭上に一つ
震え始める両手。 身体が大量の魔素の流動に、必死に耐えている。
ー中級風魔法・ウィンドスマッシュー また頭上に。
グラッ すこしよろけるが、左足で必死に踏みとどまる。
ざわわわッ
「危なっ」 立ち上がったミリアの腕をつかむリク。 首を振る。
ー中級雷魔法・シャイニンアローー よし! ここまで来れば!
「だあああっ!だめだ!」 また倒れこむカビラ。
「やっぱり最後の、少し下げてもいいんじゃない?」 とリク。
「ダメ。妥協はダメなんだ。僕らは次期魔王で、次期第二課の課長なんだ。」
「ー高級水魔法!・ハーレービームッ!ー」 ヴォン 彼の身体の前に、身長の二倍はある大きな魔法陣が現れた。
うおおおおおッ!
一段と盛り上がる会場。
その瞬間、全ての陣が割れて消えた。
「父さん!すごいよ!カビラ!撮った!?」 「と、撮ってるよ。見すぎて、ちゃんと撮れてるかは自身ないが」
よろっ 倒れるカビラを左右で支えるオルトとリク。
「頑張ったな。カビラ。」 「卒業おめでとう。カビラ君」
「はは・・あr、がと・・。」 カビラはアテリーに背負われながら、ヨシルさんから勲章を受け取る。
「つづいて・・・カリフ・エラ・オルト!」
もう一度壇上に上がってきたオルトとリクが見つめ合う。
その二人を見つめる魔王、オゼロ。
「ねえ、見て。この子たち、こんなにぴったりくっついて、気持ちよさそう。」
二人の赤ん坊は片手を繋ぎながら、頭、身体をすり寄せて眠っている。
「ほんとだ。かわいい・・。」 そう言いながら嬉しそうに見つめる女性を見て、
「ねえ、リヨ。」 「ん?」 「私たち、絶対に守りましょ。」
本作品を読んで頂きありがとうございます。
次回も応援お願いします。
キャラクター紹介
コープ・レシオン 主人公リク・レシオンの父。 魔界の偉大な人物。




