明日にも 発つという君 引き留めて
どうも、コーフィーブラウンです。
どうか楽しんでください。
認めたくないものは誰にでもあるもの。
それを産む度に、僕は自分に言い聞かせて抱えさせた。
彼女に会うまでは。
彼女だ。
朝っぱらの教室に座り込んで本に顔をめり込ませていた少年は彼女と目が合った瞬間、その本を机にバタッと倒して、キラキラする目で教室の真反対、前の扉付近の可愛い彼女を見つめた。
それから数か月、校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下の下で顔を赤らめ合いながら。
少年は手を握りしめて声を出し、
彼女は手で口元を抑え答えた。
5年後、彼は自分の胸に2つの勲章を授かって彼女の前で涙をひどくこぼし、彼女は軍服のまま1つの勲章と赤子を授かって彼を見て笑っている。
ただそれから3か月後。
「クレサァッ!」 振り向いた彼女の後ろに寸前まで突っ込んできているドラゴン。
互いに手を伸ばし、あと少し。
グギャアアアアッ
その怪物は熱い陽を体中にまとわせ、数歩前にいた人間の装備ごと軽く焼き払った。
泣いている。 人が泣いている。
大切な人を思って泣いている。
ドラゴンは満足したように次のターゲットへと飛び去っていく。
彼女は泣きながらも、濡らした布を彼の損傷部位に擦り付ける。
ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ・・・
彼女は泣きながら必死に繰り返す。
「ダメぇっ!ダメよおっ!ねえっ!お願いだからあっ!もうっ!何してんのっ!」
泣いてる。
人が泣いている。
どこかの資料館やあの時期のテレビでしか見ない光景が広がっている。
立ち尽くすリク。
オレンジ色の火がリクの眼の潤いを際立たせる。
でも、私はすぐに走り去ってしまった。
もしかしたら魔法である程度は治せただろうけど。
これはきっとどっちの味方かなんて関係ない。
関係ない、彼女らと私は何も関係ないと思いたかった。
それだけの理由なのに理性と道徳心と正義のすべてをかき消した。
「先生!撤退の号令が!」
「えっ!?今着いたばっかだけど・・」
すると、オルト君の遠くのテントからチカリと光が見えた。
「やっ・・」 ダアン!
ステラ!借りるよ! 宇宙魔法 ーダークエネルギーショットー
放射線状に無数の円が重なったような魔法陣から出た黒いノイズが銃弾を霧より細かくに破裂させて消えていく。
リクはそれがどうなったかを見ずにオルトの頭を抱き包みながら射線から逃れるように突っ走った。
ハア・・ハア・・ もう何も射線を妨げるものが無い大地を、ひたすら駆けあがる二人。
「伏せてっ!」 「えっ」 オルトがリクの腰を持ちながら押し倒して、
中級魔法、ウォール ズアァン! 地面から反りあがる壁。
何がきてるのか分からないリクに、オルトが覆いかぶさる。
ドオゴオオオン!
一帯の地面がはがされるように壁も二人も吹き飛ばされ、もう爆心地から30メートルくらいでやっと勢いが止まったよう。
「・・・っく。」 起き上がって砂ぼこり舞う一帯を見回す。
見えない。 「オルト君!・・オルうぐふっ」
目の前から猛スピードで迫ってきたワイバーンが一瞬見えた瞬間、地面がどんどん離れていく。
「すぐ基地にもどるから、大人しくしてろおっ」
アルファの声だ。
「先生。パンツ見えてんぜ。」 「えっ!?」
肩に担がれているリクはバタついて見えないようにひざ下をぴったりと折り曲げくっつける。
「おいおい!暴れんなって言ったばっかだろ!」
クソガキのように笑っているメイナードと、両手を覆って赤らむオルト。
そしてアルファの背中に突っ伏すリクであった。
「クリオンセラーテ様、魔族どもが退いていきます。」
「チっ・・ただの襲撃のつもりか・・?で、何人なんだ?」
金色の銃弾を縦に積み上げていく男。
「何人、・何がですか?」
ピタッ 五段目の弾を掴み上げた手が止まった。
「何人死んだか聞いてんだろうがあっ!」
その手を振り投げたら、まるでピストルみたいに前にいた兵士の左耳をかすって後ろの仕切り壁を貫いた。
「うあっ・なっ700人の死を確認されています。いっ、今んところは・・」
「なら、まだ作戦に支障は出ないな。襲撃を受けた周辺の陣には早急に修復させろ。今から蒼将軍様にもその旨を伝えにいけ。」
「はっはい!しっ!失礼致します!」
「せいぜい楽しませてくれよ・・?獣ども。」
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