号令と あからさまなる 亡霊と
どうも、コーフィーブラウンです。
久しぶりの投稿になってしまい、申し訳ありません。
どうか楽しんでください。
魔王領、西南部。
こっち側では”MT5”。
そう呼ばれる標高が高い山脈の高地に陣を構えて、遠く低い丘に拠点を置く敵を見下ろすような位置。
一体いつくるんだ・・?
「リク。お前があっち側ならいつ攻める?」 アルファさん。なんで戦争トーシロの私に聞く?
「・・えぇー・・。あっちの事情は詳しくないですけど、あと三日は出ませんね。向こうの陣営に毎日数十台のトラックが出入りしているなら、ひと月は覚悟しているかも。」
「まあ、その通りだ。」 「へ?」
「奴らとの今までの戦い。先代の頃は数日も経たずに開戦したが、ここ数年は我々の在庫ギリギリか、しびれを切らしてこちらから攻め入っている。」
「それで・・戦績は?」 「勝った試しは無い。」 「嘘っ・・」
「馬鹿みたいだろう・・俺たちはひたすらに屍を産み、やつらはまるでいつ果てるのか試すように強度を増して向かってくる。」
そう噛み締めるように漏らすアルファ・ラードン。
魔王軍に就いてからは50年を超える彼のキャリア。
強かった頃も知っているからこそのこの表情なんだ。
そう考えていると、自分もだんだん目の前の人間たちを敵のように思えるかもなあ。
ここに着いてから7時間。
辺りはだんだん暗くなってきた。
魔界、魔王領の最大都市ブラックサンでは日の光なんて朝焼けと夕陽の刻しか見れないから少し新鮮だ。「先生。配給ですよ!早く!」
育ち盛りの生徒たちがテントをめくってそう呼びにきた。
「よく戦場で食欲がわくなあ・・。」
リクがのっそりと椅子から立ち上がったその時、
ドゴオオオン! ビクウッ 「っひ・・!」
地面はもちろん、大気が揺れているのを感じられる。
ハッ バッ テントから顔を出して、「みんな!?」
カリフくんとカビラくんの二人は地面に座り込んで明らかに動揺している。
「せ、せんせ。いま、すごいスピードで何かが飛んで。」
すぐにリクはテントから出て、そばに駆け寄る。
「二人とも。開戦したかもしれないから、すぐに装備を付けて準備しましょ。」
震える手で二人の肩を持ちながらそういうリクに、二人は目を見合わせて、
「よしっ!やったるか!」「ありがとう、先生。・・もう大丈夫。」
装備を付け終わると、ワイバーンや小型ドラゴンたちが叫びながら空を飛びまわっている。
少し前の説明が思い出される。
「じゃあ、おれは本陣の方に少し顔を出してくるから。
・・・あ、もし空が騒がしくなったら、装備を付けて準備。バンドネオンの音色が聞こえたら集合の広場に集まれ。いいな?」
バンドネオン・・?いったいどういう
ファンファーン♪
まるでヴァイオリンのような戦場には似つかわしくない優美な音が聞こえてくる。
いよいよだ。もう開戦か。あと一週間はこうしていると思っていたけど、
やっぱりだいぶ怖いな。
「み、みんな。行きましょ。」
「大佐、ミサイルの発射、完了しました。」 「ご苦労。」
「・・・よし、目標地点に的中を確認。」 「しかし、直接狙わないのですね。あそこにまで陣営は無いように思えますが。」
「ああ。この一撃はあくまで試射と、やつらへの牽制だ。あとは勘違いして迎撃準備までしてくれると嬉しいんだが。」
「大佐!魔物たちが陣営前方に集まっています!」
「がははっ!馬鹿な奴らめ!我々がうって出ると勘違いしよった!」
「ウソの開戦はかなり戦意に響きますからね。」
「ちゃんと注意してろよ。今から本陣に報告に向かう。」 「はっ!」
そう言い彼がそこを離れるまで、敬礼を続ける部下たち。
「さてと・・・」 振り返りながら望遠鏡をのぞき込む。
あれ? さっきいたはずの場所に居ない。飛び回っていたはずの翼竜も、あんだけの背丈のオーガもいない。
「もう嘘だとばれたのかー・・」 望遠鏡の狭い視野で周囲を見回す。
その時、それからだいぶ離れた斜面に、一匹のふぉぶりんを見つけた。
何をしてるんだ?
またその少し手前にスケルトン。 「うおっ」 それにワイバーンの翼が被った。
「へ?」 「おい!あぶ・・」
ぐしゃっ ワイバーンは右足で兵士の頭をヘルメットごと押し倒しながらすりつぶした。
「・・って、敵襲ぅー!」 そう叫んだ兵士も飛んできた巨岩に押しつぶされた。
ワアアアアアアッ!
ダダダダダダッ 兵士が各々すぐに小銃を放ち始める。
チュン ギャア! 一発の弾が驚異の反応で避けた魔猿の左腕をかする。
すぐにリロードされて銃口が猿を向いた時、電柱のように太い蛇が猿を巻きながら包み込んで、銃弾をすべてはじいた。
「何ッ!?」 その隙に、蛇体の間から魔猿が飛び出て、口から火を吐いた。
二体のスケルトンが剣を持ち、銃剣の兵士と刃物を打ち合う。
ザっ ザっ 振り下ろされた剣が避けられて袋や壁に切り傷がつく。
しかし戦場だというのに兵士は振り返らずに壁の裏に隠れた。
スケルトンは歯を鳴らしあって完全に笑っているようだ。
ドオオオオン! 突然スケルトンの足元が爆発し、そこには骨の破片だけが残った。
「ハア・・ハア・・」 兵士がもう一度蘇らぬよう残った魔石を銃の持ち手でたたき割った。
「課長。第二陣出撃まであと五分です。」
「ああ~そうだな。」 部下の発言を横目に、黒いふさふさな猫を撫でまわす男。
「次期副社長と、魔王の跡取り保険だったか?」
「あと、第二課課長の長男もいらっしゃいます。」 「そうか。」
「先制攻撃はかなりの成果になるとは思いますが、一陣と二陣だけで相手の前線基地の本部をおとすというのは・・。」
「じゃあ退却だな。」 「へ!?いやっ、敵の前衛は総崩れなんですよ!?」
「ああ。今までで分かっているだろう。奴らがしっぽを見せたってことは、それはおとりだ。ちゃんと胴体までわかんないとだめだ。」 そう言って立ち上がる。
白髪が数本なびいて黒紫の角が漆器のように光を反射する。
「なぜなら奴らには、しっぽが無いからな。」
本作品を読んでいただきありがとうございます。
今回は、主人公の活躍が少なかったかもですが、ご了承ください。
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