宴
どうも、コーフィー・ブラウンです。
それでは、どうぞー
「こ~こ~か~ら~いっちょ~め~♪」
数人の子供たちが立派な石畳の道のほとりで謡っている。
「も~ちょっと~で~さんちょ~め~♪」
奥の方から夕陽を織り込んだような呉服を着た一人の少年が歩き下りてくる。
「まっか~なおそらとかえりましょ~♪」 歌い終わった後もキャッキャと楽しそうに話す。
「ねーコマリ~、もーちょっといよーよー」
そう言われた少女は困ったという表情をして、「あとちょっとだけならいいかも・・」
やったー!と喜ぶ子供たち。
「良い訳あるか」 バシッと少年が少女の頭をしばく。「あたっ」
「うへぇー、帝様だー」 子供たちはいっせいに黄色い不満を発した。
「はよ帰れ。おめーらも、魔族に襲われんぞ」 はーい、と解散した。
「明日遊べばいいだろう・・ったく」
「ねえ、母さんは?また魔界なの?」 「・・すまんな」
「知らないっ!」 ふいっ
「いやよっ!」 ぷいっ 顔を背けるサナン・ディオレスタ。
「なーんーでっ!?リクセン(リクの愛称)からのせっかくのお願いだよおっ!?」とヨシル。
「だからー、なんで私たちがあの二人のためにっ!」
「そんなこと言わないでさ~」
ガララッ 開いた扉には大量の銀のボウルを持った同じく上級生で同期のメルタル・ミラーゼ。
「おいっ!早く始めるぞ!」 「うん!」 ガシッ サナンの腕を掴んで引っ張りだす。
「テクター、これでいいのか?」レンガで張られた床をペチペチするハルヒ。
「ああ!じゃあ~・・」
背負っていたリュックを下ろし、何かを引っ張り出すようにぺちゃんこなリュック(マジックバッグ)に手を突っ込んで屈む。
「ふっ・・・!ハルヒ!セレン!俺ごとひっぱれ!」 ガシッガシッ
次第にリュックの口付近がとんでもなく膨らむ、というよりは伸びに伸び広がっていく。
「もーちょっとっ・・」 ズズズッ 引きずり出されたのは超、超、超巨大なグリル!
「ハハハ・・こりゃでっけえな。」
「こんなにデカいグリルで一体何焼くんだろ・・」というセレンに確かにという二人。
「ねえ、ミノリ。次は・・?」 「次はね・・あっ、もうちょっとオリーブ足して。」
「これぇ、むずくねー?・・ん?」 「それで、ワタシボクオレガノを・」 ボカン!
「わっ」 「うおっ!?」 全く驚かずにため息をつくミノリ。
「ねえ~・・どーしてあなたはそんなこともできない訳?」
「し、仕方ないだろ!お前が急にこれをしろって言ってきたんじゃねえか!」
「だってあなたもうずっと卵をかき混ぜ続けてんだから、当たり前でしょ?
・・もうその焦げた塊あなたの分ね。」 「なあーっ!?」
「・・主よ。」 「ん?」
「どうして我はこんなものを持たされているのだ?」
リクも両手に満杯のカゴを持っているが、ブラックナイトのダイスは右肩に超巨大な包まれた何かと左肩にクナナ、トスレが笑顔満点で乗り、頭の上に小型のドラゴンになったモルキーが丸まり(う〇ちみたい)居座っている。モルキーが振るしっぽがダイスの目前を左右に通過する。
その視界の先に近づく門。
「リク。もしかしてここか?ずいぶん様変わりしたな~。」
「うん。久しぶりなの?」 「ああ。前に何度か。」
近寄ってくる子供たち。 「わー!すごーいっ!」 かわるがわるペチペチと甲冑をたたいていく。
「おい!触るな!せっかく磨いたんだ!」 笑う人間の男。
「意外と人気だな。」 「何笑ってる!とっととこれ渡して帰るぞ!」
ガララッ 少し疑うような目で、警備員が門を開ける。
「うおっ!でっけー!」 走りこんできたテクタ。目を輝かせながらダイスの甲冑を見ている。
「触ってみるか?」 「いいのか!?」
「先生。それを焼くんですか?」 「うん。大きいでしょ。」
ドスウウン! 「・・じゃあ、後は任せていいかな?」 「うん。早くきてねー」とかわいいセレン。
リクが出ていくとそれと入れ替わるように、
「おお!大分できてんじゃねえかあ!」 アテリー。
「みんなー!」 ミリア。
「いい匂いがしますなー!」ダトン。
それからまた門に入ってきた。
「ここがパパのしょくばー?」 「ああ。」
「しょくばー?」 「ああ。」 「しょくばー?」 「ああ」ルピンと三人の娘たち。
「じーじ。ここ?」 「テンペスト。ここではおじいさまと呼んでくれよ。」 「はーい」
最高齢の教官、レジン・ナナイントはより一層きっちりとした装いで孫と現れた。
それぞれが持ち運んできた装飾や菓子を開封する中で・・。
「は~~~っ・・やっと着いた・・。」
「イパルン!何してたの?」とミリア。 「ごめーん。これをさ・・」
押して転がしてきた大きな木の樽。
「なに?またワイン?」 ファアン 近くの地面に魔法陣が現れ照らされる。
「これかっ!イパル!」 「おうよ、メシア。早く開けよう。」
「ちょっと!まだ主役がいないんだから・・」
「みんな!」門には、
第六天魔王が一人。魔王国人事部部長、ここ”教場”の長。 ヨシル・ルマン。
彼女が手招くと、少し恥ずかしそうに現れる、カビラ・メイナード。
そしてリクに押されながら現れたカリフ・エラ・オルト。
皆の満面の笑顔。
テクタ・レディハー特性の超巨大遠赤外線グリルで焼かれた、10m超えのミシュラーホース。
ほとんどミノリとアクルイズが作った豪華な大皿たち。
「は~~っ間に合ったー。あっ!もう来てんじゃん!?」
サナンとメルタルとヨシルが十段ぐらい乗ったケーキを倒れないようにゆっくり運んでくる。
みんなが揃い、座った頃。
「じゃあ・・・もうここで発表しちゃうかあ!」ヨシルが急に立ち上がって前に出て、
「まずはリク!こんな素敵な機会をありがとう!卒業前のパーティーなんて初めてだ。じめじめするのは今期が卒業するときだからな! オルト!カビラ!卒業おめでとう!カンパーイッ!」
ワアアアアアッ
今思い返せば、
満点の星空なんてものは無い魔界の、今までで一番幸せな夜会だった。
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