異世界に存在するのか、東京よ
「アイシテイル」そういって自分の頬をなでる。
父との思い出はずいぶん残っていないけど、その分きっと残されたものは貴重なんだけど。
久しぶりに心地よい夢だ、夢自体いつぶりだろう。でも
硬い。冷たい。なんで、ソファじゃないの?
ゆっくり目を開くと見慣れぬ黒い天井。「高くない・・?」
その目線のままみわたして・・・ヒュッ 喉がひくつく。
紅い瞳が心臓を突き抜いているようで、全身が動かない。
なんで、体を起こせない。 「目を覚ましたか」
「オゼロ様。」「ああ、すまん。」はっ呼吸が戻った感覚がする。
すぐに立ち上がり身構える。
「でっか」 座っているとは思えない。
逃げないと。ダッ と同時に温かい風が追いついた。
追いついた? 何かが隣にいる?
見上げると頭に牛骨を被った騎士。
「バーチャル・・・うぐっ!?」
すごく重い何かがのしかかっているしとにかく、「リ・・アル・・・」
「して、お主はリク・レシオンだな?」
「私を知っているのですか?」 「ああ。」
おかしい。こんな馬鹿馬鹿しいゲーム買った気はない。
座っている者が右手を動かしたのを見て、騎士がリクから離れる。
「私のことは知っていないのか?」 「・・・存じ上げません。」
のしかかっていた牛骨の騎士が急に、
「そんな訳ないだろう!」 「ひっ」 びくっ 訳わからないのはこっちだよ・・・
「おい、本当に知らないんだな?」 うなずく
「これは驚いた。・・・お主、父の名は?」
「父、ですか」 もう父はいない。母の口癖だ。自分たちの目や耳に、頑張る他人の父親や幸せな家族が入ってくるたびに呪文のように。
父はどうしてこんなにひどい仕打ちをするのだ。残酷な人だ。
でも私の少ない記憶での彼は違う。憧れの人だ。ある日を境にいなくなった。
「コープ・レシオンです。」「そうか。」目を細める彼。
初めて彼の目線が私から離れて、遠くをみた。
何かある!止まって、私!これ以上関わるのならもう戻れないのは明白なのに、
「父を、知っているのですね!」 「ああ。」 これ以上はだめなのに。
「今はどこに!生きているの!?」 「おい!言葉を選べ!」 うるさい 「うるさい!」
騎士が少したじろぐ。
「父は、」「君の父さんは亡くなった。」ほら、やっぱりそうじゃん。
「私の父親とともに。」 もう分かってたのに。
「君の父さんは私の父の部下だった。」 いらない、慰めの言葉は。え?
「私の父は東京で・・」「東京か。知っているぞ。君の父さんが話してくれた。」
超重要なことがあったはずだ。
「ここは・・・どこ?」 「見た方が早い。」パチン 彼が指を鳴らすと、カーテンが開かれた。
と同時に見えた光景は、青白い月のまぶしさと、紫の洞窟のような建物と、真っ黒の山。
バーチャルが終わらない。「ホントの、話・・・?」
座っていた者がいつの間にか近づいてきてこう言う。
「魔界へ、ようこそ」