表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンデッド転生〜悲運の死を遂げた王国の兵士は進化を重ねて最強に至る  作者: 城之内
第一章 聖剣姫救出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/67

第18話



 ザガンと名乗った下位吸血鬼レッサー・ヴォンパイアから告げられた言葉に思わず驚くアシル。


 元々幹部を倒した者が次の魔王軍の幹部になるのが掟というか、既定路線らしい。

 

 正直その立場は願ってもないものだ。


 幹部になれば、今は魔王軍に支配されたこの王城に自由に出入りできるようになるはずだ。


 そうなればサフィア姫を助け出せる確率がぐんと上がる。


 屍鬼人(アドバンス・グール)という屍鬼(グール)の変異種に進化した事もアシルにとっては追い風となっている。


 そんなわけでザガンに案内されて現在、アシルとノルは軍のトップである首なし黒騎士(デュラハン)への報告のために玉座の間に向かっていた。


「……だが、よく倒せたものだ。あの元人間は中位アンデッドの中では一番弱い屍鬼だったとは言え、固有技能(オリジン・スキル)を持ち合わせた特異個体。人族だった頃の戦闘経験も持ち合わせていた。元々の貴様のような下位の魔物――包帯死人マミー・コープスが勝てる道理はないのだが」


 階段をあがりながらザガンが探るような鋭い視線を向けてくる。


 アシル自身、ただの包帯死人(マミー・コープス)だったら全く歯が立たなかっただろう。


 渡り合えたのは職能(クラス)の力に他ならない。職能(クラス)レベルがステータスに加算されていたからこそ下剋上できたわけだ。


 ただそれを持つのは人族のみである。


 アシルが何故職能を取り戻せたのかは分からない。憶測で良いなら理由は考え付くが、今はどうでもいい。

 魔王軍の面々には決して言うつもりはないし、言わない限りはバレない。


 しかしその問いをどう誤魔化そうかと考えている内に、


「……ノルがちょびっと助けた」


 アシルの肩に乗ったノルが得意げに口を開いた事で、ザガンからそれ以上の追求はなくなった。


「何が気に入られたのか分からんが、運が良い奴だ」


「……俺もそう思う」


 ノルのステータスを見る限り、王都を徘徊していたアンデッドに襲われようが楽に返り討ちにできたはずだ。


 今も肩車してあげているが、何故こうも気に入られているのかは分からない。


 そんな事を考えているうちに重厚な金属の扉を闇骸人(ハイ・スケルトン)二体が開けて、中に通される。


 ザガンは中に入らず、アシルから降りたノルを先頭に二人だけが部屋の中央に進んだ。


 壁にはエルシュタイン王家の紋章が描かれたタペストリーが飾られていた。


 かつて国王と約束した場所。サフィア姫を勇者の元に届けると約束した場所。


 玉座の間。


 階段を挟んで、玉座に座る大柄な首なし黒騎士(デュラハン)を見上げる。  


 その圧倒的な気配に、視線を向けているだけで恐怖を感じた。

 アシルはそっと自らの固有技能である<解析(アナライズ)>を発動してステータスを覗く。





名前 エルハイド・グランディール

種族:首なし黒騎士(デュラハン)

Lv98

体力:S

攻撃:S

守備:SS

敏捷:A

魔力:A

魔攻:B

魔防:S

固有技能オリジン・スキル

・雷魔法

魔物技能モンスター・スキル

・|中位死霊(アンデッド)支配

・下位死霊(アンデッド)支配

・暗黒闘気

奈落剣召喚サモン・アビスブレイド




 正真正銘の怪物である。これが最上位アンデッド。

 中位アンデッドに進化しても尚、頂は遥か遠い。


(……というか、エルハイド・グランディールってやっぱり百年前の勇者の名前だ)


 名前はともかく家名まで一緒なのはあまりにおかしい。【王国四英傑】にも名を連ねたエルシュタインの英雄が何故魔王軍最高幹部になっているのか。


(……真実はどうあれ、流石に俺の力では無理だ)


 ゼノンのような小物とは訳が違う。


 今代の勇者に頼る他ない。


 サフィア姫を救出する事ができれば、勇者は聖剣の力を扱えるようになる。


 魔王を滅ぼす力を得られるだけではなく、聖剣を持つと飛躍的に強くなると伝承では言い伝えられている。恐らく全ステータスにバフがかかるのだろう。


(やはり鍵はサフィア姫だ。絶対にお救いしなければ)


 黒い靄が漂う中、アシルの隣でノルが馴れ馴れしく片手を上げる。


「……エルハイド。久しぶり」


『……良く来てくれた。屍操の王(アンデッド・マスター)の二つ名を受け継いだ時以来、数年ぶりか。今以上にお前は小さかったな』


「魔王様の命令、絶対だから来た。また死体をアンデッドにすればいいんでしょ?」


『その通りだ。もうすぐエルシュタイン王国の主力と全面戦争に入る。お前の力を貸して欲しい』


「……そのために来たんだから力を使うのは問題ない。だけど、気は乗らない。来て早々変なのに絡まれた」


 ノルは頬を膨らませて首なし黒騎士(デュラハン)を見据える。


『……魔王軍大幹部についている以上、仕方のない事だ。お前の父も……母だって受けただろう?』


「……ッ」


 その言葉に珍しく盛大に顔をしかめるノルと、顔がないので何を考えているのか全く分からない首なし黒騎士(デュラハン)のエルハイド。


 一体と一人は旧知の仲らしく会話している。改めてノルは魔王軍大幹部なのだと嫌でも認識する。


 アシルは内心苦々しい面持ちとなりながら耳を傾けていた。


『だが、ザガンから先に報告を受けて驚いた。屍霊四将たるお前に負けるならいざ知らず、特異個体とは言え下位アンデッドである包帯死人(マミー・コープス)に殺されるとは』


「……マミーさんは特別。非常に興味深い存在」


『……それには同意する。包帯死人(マミー・コープス)屍鬼(グール)に進化する事は一般的だが、お前のその姿は屍鬼(グール)ではないな』


 エルハイドが僅かに前のめりの姿勢になる。


「……そう。恐らく変異種の屍鬼人(アドバンス・グール)


『やはりそうか。私も数十年ぶりに見た。だとすれば次の進化は吸血鬼の原種だ。もし至ればこれ以上ないほど魔王様はお喜びになられるだろう』


 玉座の周りを覆っていた黒い靄が僅かに薄まる。


 それはそうと吸血鬼ヴァンパイアの原種とは何なのだろう。普通の吸血鬼(ヴァンパイア)とは違うものなのか。


 理解が及ばないアシルは首を捻る。

 その様子を見て、ノルが説明の為に耳打ちしてくれた。


「……上位アンデッドの吸血鬼(ヴァンパイア)には二種類の種族が存在するの。原種と貴種。どちらも強力なアンデッドだけど、魔王に至る可能性があるのは原種のみ。マミーさんはね、新たな始祖となる可能性があるという事」


「……俺が……魔王になるかもしれないと?」


「簡単に言えば」


 こくりと頷くノルにアシルはしばし呆然とする。


 魔王とは全人類の敵だ。


 自分が人族を虐殺する、そんな絵面が浮かぶのを止められない。

 とは言え、例え進化の果てに魔王へ辿り着こうとも自分を失わなければ良いのだ。


 人族からアンデッドになっても何とか大丈夫だったのだから、気を強く持てば良い。


 人族を助ける善なる魔王になるのだ。ちょっと想像できないが。


『……変異種ともなれば実力は十分か。屍鬼人(アドバンス・グール)よ』


 重厚な存在感を放つ首なし黒騎士(デュラハン)から呼びかけられ、アシルは僅かに緊張を帯びる。


『ゼノンに代わってこれからはお前が魔王軍幹部となる。不服はあるか?』


「……いいえ」


『よし。ならばアレがやり残した仕事は代わりにお前がやり遂げるのだ。いいな?』


「……分かりました。何をすれば?」


『できるだけ早く、同じく幹部である骸巨人ジャイアント・スケルトンのベレンジャールと協力して城塞都市カルランを攻め落とすのだ』


 アシルはすぐに頭を働かせる。


(聖騎士団長の父君が治める街か)


 城塞都市カルラン。


 ここを落とされると勇者達からすれば非常にマズイはずだ。王都を攻める上での拠点を失う事になる。


『その成果を持って、己の力が魔王軍幹部に相応しいものである事を私に証明しろ』


「……お任せください」


 形だけ平伏してみせる。


 勿論、アシルに実行する気はない。

 すぐにでもサフィア姫の居場所を突き止め次第、王城を離れるつもりだった。


 しかし、エルハイドと同格たる屍霊四将の一人、ノル・ネクロエンドが前に出て杖を床に打ち立てた。


「――それはダメ。マミーさんはノルの仕事を手伝うの」


『……何だと?』


 その瞬間、エルハイドの身体から漏れ出した大量の黒い靄が玉座の間に広がった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ