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37.魔剣の完成

 その後、わたしは魔剣の製作に集中して取り組んでいた。かなりの失敗を重ねたおかげで、なんとか形になりそうな感じである。数々の失敗により、遺跡で入手した素材はかなり消費していた。遺跡探索に行ったのは正解だった。

 検討の結果、攻撃を吸収するのは難しいとの結論になった。吸収したエネルギーを上手く処理出来なかったのだ。反射は反射で反射した後がどうなるかわからないので、安全を考えて不採用にした。

 と言うわけで、魔術的な攻撃を全て無効化する方向で進めることにしたのだが、また新たな問題が発生した。困ったことに魔術を無効化すると、身体強化の効果まで無効化されてしまう。


「む、難しい……」


 身体強化の特性と相手の魔術的な攻撃の無効化を両立させるためにはそれぞれが別の方向でないと駄目だ。魔術的な攻撃の無効化の影響を受けないようなもの……。


「身体強化は魔術的な攻撃と違って属性があるわけでもないし、攻撃でもないのだから……。肉体に作用するか、精神に作用するか……」

「エルザ、難しい顔して考え込んでないで少し休憩したら?」

「うわっ……驚いたんだけど。いつの間に?」


 わたしの目の前には呆れた顔をして腕を組んでいるリラが立っていた。


「全く反応がないから勝手に入ってきたわよ。何も無くてよかったけど」

「ごめんごめん」

「もう、熱中しすぎるのよくない癖だよ」

「う、うん」

「本当にわかってる?」


 リラが心配してくれるのはありがたいけど、少々怖い。これはなんとか話題を変えなければいけない。


「ねぇ、ハーブティーでも飲まない? 新しい配合で作ってみたんだけど」

「エルザが休憩するならいいよ。お湯沸かしてくる」


 リラがくるりと踵を返して台所に向かった。どうやら上手く話題が変わったらしい。

 ――助かったわ。

 その後、リラとハーブティーを飲んで休憩した。リラはわたしがトムさんに頼んでいた本を持ってきてくれたようだった。

 わたしが頼んでいたものは剣について書かれた本である。わたしは本を読んで構想を練ることにした。


 ***


「剣身の部分と柄を別々に作ってそれぞれに機能を持たせれば良いのかしら」


 本を読んでわたしは基本的なことに気がつく。錬金術でのアプローチばかり考えていて、基本的なことが欠けていた。剣を作るのに普通の作り方も考慮する必要があった。

 最初に錬金術でグレン様の剣を複製したものだからそんな発想が浮かばなかった。問題はあっさり解決しそうだ。自分の未熟さが嫌になる。

 ――こんな単純な方法で解決するなんて……。いや、まだ解決したわけではないけれど。


「早速取りかかろう」


 わたしは気合いを入れ直して作業に取りかかった。

 軽くて丈夫で切れ味の良い剣身。その剣身に魔術的な攻撃を無効化する機能を持たせる。この剣身は試作品だ。貴重な素材でテストするわけにはいかない。とは言え、ある程度はちゃんとしたものが必要だ。まずはテスト用の剣身を錬金術で作った。

 その上で、これまで試作した魔術的な攻撃を無効化する機能を持たせる。こちらは試作品なので全属性を無効化することはできないが、理論を確かめるには充分だろう。柄の部分も錬金術で調合していく。


「あとはこの二つを合わせて……」


 魔剣の試作品が完成した。剣を握り、目で視て機能を確認する。

 

「やったぁ。完成よ! グレン様にも確認してもらわないと」


 試作品の成功に興奮するが、ふと冷静になった。時間帯はすっかり深夜だ。しかも、グレン様が村にいるのかわからない。


「これ、リラに怒られるやつだわ。昼間注意されたばかりなのに」


 今日はもう片付けをして休むことにした。

 ――グレン様に会ったら試作品のテストに付き合ってもらおう。




 わたしたちは今、村から離れた人気のない森にいる。


「グレン様、身体強化は効いていますか?」

「あぁ」

「では、火属性の攻撃をしますね」


 わたしは火の魔力を込めた魔石を投げつける。これは衝撃が加わると魔術的な火が広がるものだ。グレン様がこの魔石を切れば、その衝撃でグレン様が火に包まれるはずだ。

 しかし、グレン様が魔石を切っても何も起こらなかった。


「成功のようだ!」

「みたいですね。では次の攻撃いきます」


 その後もテストを繰り返したが上手く機能しているようだった。グレン様の反応も良い。

 テストが上手くいったのでわたしはその後、本格的にアトリエに籠もり、錬金術に没頭した。


 貴重な素材をふんだんに使った剣身。硬くて特別な魔術的性質を持つアダマンタイトはわたしが錬金術で作った『魔術的な攻撃を無効化する機能』ととても相性が良かった。過去の反省を活かし、切れるけど切れすぎないように作った。

 ――鞘に収められないと危ないしね。そもそも対戦相手を殺さないようにしないといけないわ。

 剣術大会に人間の手足が簡単に切れるような切れ味は必要ない。人殺しの導具を作りたいわけではないのだから。

 わたしは何度も調合を重ね、理想の剣に仕上げていく。丈夫な剣を作るだけであれば難しくはない。何かしらの機能を付与するのは大変で、それが複雑なものになれば難易度はあがる。わたしは剣の仕上がりを数値でイメージし、バランスの取れた剣を目指した。


「か、完成よ!」


 簡単には折れない、理想の剣に仕上がったはずだ。かなりの大作でこれなら簡単には入手できないだろう。

 武器を作るのは不本意ではあったけれど、貴重な素材をふんだんに使い、これまでに挑戦したことのないものを調合できて良い経験になったと思う。 


 ――師匠にもみてもらいたかったな。


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