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愛の重い先輩による保護監禁日記

作者: 山原くいな

9/9

うちの敷地の橋で、誰かが自殺しようとしているのを発見しました。それは私の高校時代の後輩の男の子でした。


彼は、なんで邪魔したんだ、もう死なせてくれ、と大きな声で喚いていました。あまりにかわいそうだったので、これからは私の家で保護することにします。


高校時代、私は彼の事が好きでしたが、年下に告白するなんて、と躊躇しているうちに別の女に盗られ、私は卒業してしまいました。


こんな形ではありますが、きっとこの再会だって何かの運命です。


今度は間違えません。




9/10

料理を2人前作るのに慣れておらず、ちょっと多く作りすぎました。やはり、まだ元気がないのか、彼はあまりご飯を食べてくれませんでした。


高校時代の彼はどちらかと言うと活発な性格だったと思いますが、今の彼は弱々しく、まるで小動物のようです。


そんな状態のくせに、彼はもう家に帰りますと言い出しました。


そんな訳には行きません。今外に出て、また自殺したくなったらどうしようもないからです。外には出せないとはっきり言いました。




9/11

午前4時頃に物音がして目が覚めると、彼がこっそり家から抜け出そうと玄関へと向かっているところでした。


彼はどうしても外に出たいらしいです。理由を聞くと、会社に出勤サボったことを直接謝りに行かなくちゃ、と言い出しました。フラフラの足取りと目付きは、彼の壊れかけた心を示しているようでした。


仕方が無いので、私の寝室に閉じ込めることにしました。本人は嫌がってましたが、また自殺するとか言い出すよりも絶対にいいです。




9/12

午後9時頃、私が寝室のドアを開けた瞬間に逃げようとしたので、すぐに捕まえてベッドに引きずり戻しました。思ったよりも力が弱かったので、なんだか不思議な気分になりました。


その時、彼の目は私を怖がっているようでした。ちょっとかわいいと思いました。


もう逃げ出そうだなんて思わないようにしなきゃ、と考えましたが、痛そうな方法しか思いつかなかったので辞めました。




9/13

それでも、家に帰りたいそうです。もう逃げ出さないように両手両足を縛ることにしました。


ご飯は私が食べさせてあげてます、実家で文鳥を飼っていた時のことを思い出しました。




9/14

昨日よりも大人しくなったので、少しだけ拘束を緩めてあげました。今までキツく締めすぎていたのか、跡がついていたので謝りました。


あと、ご飯はちゃんと食べさせてあげてるんですが、簡単に折れそうなくらい腕が細いです。その事を言ったら怖がられてしまいました。


ちょっと意地悪すぎたかもしれません。





9/15

ニュースを見たら彼が行方不明で事件に巻き込まれた可能性もある、とか言ってて、あまりにおかしいものだから笑ってしまいました。彼は私が保護してあげてるから安全なのに。


彼もだいぶ大人しくなってきました。でも、まだ外に出したらダメだと思います。きっとそうです。




9/16

逃げられました。ようやく落ち着いたと思ったのに。


でも、すぐ見つけました。近所の倉庫の端で体育座りして、私を見た瞬間に怯えてブルブル震えてました。かわいかったです。


この期に及んで逃げ出すなんて、まだ保護の効果が出てないのかと落ち込みましたが、よく考えたら今まで閉じ込めるばかりで、愛情を注ぐということが足りなかったように思います




9/17

とびっきり優しくしてあげました。ごはんも口移しで食べさせてあげて、えっちもしてあげました。


初めてかどうか聞いたら、数秒沈黙した後にはいと言ったので、しっかり聞き直してみました。やっぱり嘘だったみたいです。しかも、あの時の女に奪われたみたいです。でも私はそんなことで怒りません。優しくするのが目的ですから。


なのに、彼の顔からは、まだ怯えた表情がなかなか取れません。その顔は嫌いじゃないけど、まだ愛情が足りなかったかもしれません




9/18

今までは濡れたタオルで体を拭くだけだったのですが、今日は一緒にお風呂に入りました。


抱き合うことで幸福ホルモンがどうのこうの、というのを聞いたことがあるので、裸の状態で抱き合ってみました。暖かい体温を感じて、とても幸せでした。


もちろん拘束も解いてあげましたが、逃げる様子もありません。ようやく無駄だとわかってくれたみたいで、微笑ましいです。体を洗ってあげて、そのままえっちしました。とても幸せです。





9/19

またニュースで似たようなことを言ってました。遺書が見つかったとか言ってますけど、今知ったなんて遅すぎてやっぱり笑っちゃいます。私なんて10日前には知ってたのに。みんなはあの子が怯える時にどんな顔で泣くか、えっちするときにどこを見てるか、何も知りません、私は知ってるのに。


でも、誰にも教える気はありません。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 徐々に逃げられなくなり追い込まれていく状況と抵抗しても無駄だとわからせられる恐怖、ヒスを起こしたり騒ぎ立てる単調な作品ではなく静かに淡々と壊れていること、本人にとっては至って合理的な結論の…
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