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EP3 初陣 99歳馬の骨転生セリーナと六人格フローラ



______「儂とフローラ二人で、冒険者パンチィを組む!」


  『うほほ、儂にしてはすん晴らしいアイデアじゃった。儂の人生回顧録を捲れば、儂が生きていた日本は、たんと娯楽に溢れていたものじゃて。それがどうじゃ、異世界の貴族社会は、何一つ楽しい遊びがなかったからの! ラジオ、テビレ、スンブン、なんと言ってもじゃ、梅昆布茶がねえ!』


 しかし現実社会に無くて、異世界にやぁあった物。それは魔法とダンジョンであっただぎゃ。


 魔法の仕組みは分からないが、これを現代科学で究明できたら、とんでもない技術革新が起き、世界の在り方に革命を起こすだろう。


 しかし悲しい事に、それでも尚人類は新しい兵器の一つとして、その応用を考え出して、強力な兵器にしてしまう事は間違いないのだ。

 恐らく、地球にも太古から魔法が存在していたら、核兵器のような大量殺戮兵器は無かったかもしれない。それでも戦争は、人間の根本にある業なのだろう。


◇◆◇◆◇◆


 儂セリーナ99歳の老人X一の言は、フローラにとって冒険者という、思いもしなかった自分の暗過ぎた人生と秘密を生かせる光明が差した気がした。


 この忌まわしい六人格.....フローラは今まで十七年間、人を寄せ付けずにずっと殻に閉じ籠って生きて来た。

 その私がセリーナと二人でダンジョンに潜りたいと言ったら、ひょっとしたら、伯爵だろうが父上も母上も許してくれるかもしれないとフローラは考えた。何といってもセリーナは強いからだ。


 『それでもあの人だけは......反対するのかな。セリは三人から求婚されてるって言うし』


 十七年間、人を寄せ付けずにずっと殻に閉じ籠って生きて来た......そこには一つだけ嘘があった。その思いを断ち切るように、フローラはパンパンと自分の顔を叩くのだった。



____「ふふんセリ、昔からかわいい娘には、ダンジョンに潜らせろ!って言うじゃない」

 ケケケ


「なんと、異世界にはそげな諺があるのかえ....。保険金目当てなら、分からんでもないのじゃが」

「ジジイ!ウチの伯爵家は金に困ってねぇし!」


 フローラの考える冒険者説得材料として、ユウンラムゼ伯爵が、娘セリーナ嬢に冒険者登録を認めている事にある。


 但し話を聞くとダンジョンへは、あの役にも立たないバカボンボン三人組が一緒だったらしい。実際、戦闘はセリーナの振るう魔剣だけで、三人組は装備だけは立派だが、ダンジョン内ではセリーナの影に隠れていたと言う。


「私の六人の人格は、絶対に秘密にしたいから.....セリーナと二人だけでダンジョンに潜る言い訳を考える必要が出た来たわ」

「ふむ、そうなるなも。儂(セリ―ナ)はもともとエーケン剣士じゃから、何の問題もないがの」


「......あぁ、それを言うなら冒険者Aランクね。通信教育で取った資格じゃ何も役に立たないけどさ」


「フローラ、儂がぽっくり逝った日本には、なんとエーキャンの<通信教育空手>があってな、自慢じゃねぇが、儂、三段なのっさ」

 ホイ

 と言って儂は得意の正拳突きを披露した。

 歯ぁ!


 なのっさ、歯ぁ! ほへぇ~


 とにかく、兎も角。

_____そこでフローラはパーティー構成を考えてみた。


 「戦力的には切り込み隊長に使える、南友水鳥拳のレレイが最適だと思うのよ」


 「役に立たないと思っていた江戸前ナンコは、鋭い洞察力と推理で、盗賊として罠を回避出来る。腹が減ったら、ダンジョンの中で江戸前寿司を握る事も可能よ」


 「ペガサス流星群は徒手空拳、アーシェス・ダギャアは様々な攻撃魔法を使えるし、伝説の雷神剣を持っているかもしれない。そうなると無敵に近い戦闘力と言えるのよ」


 女ダークエルフのヤオヤは、自衛隊の現代兵器と青果商店経営に精通し、ダムドのにいちゃんは、ほぼ無敵であるが性格が大きく歪んでいた。


「セリーナ、私の中の人格には問題があっても、とても冒険者に向いているわ。しかも臨機応変にに入れ替わってくれれば、それぞれのHPとMPは常に満タンでいけるのよ。ウチのHPもMPも、ずえんずえん減らないって、これ凄くない?」


 「うんにゃ、攻撃ばかりで回復役がおらんぞよ」

 うっ


 「それとフローラ、お前さん、通信教育や寿司だの満タンって分かるのけ? しかもじゃ、その人格は儂の居た転生前の、日本漫画キャラでねえの。説明キボンヌじゃぞ」


 この謎の知識について、フローラは答える事が出来ない。ただ、物心が付いた時期に、突然発現したとしか言いようが無いのだ。


「ふが、儂とて異世界転生を、なんでやと聞かれても、馬の耳に念仏状態で、プリーズ、シミーズ、ズロース、乳バンド?何だったかいの」


 「そりゃフリーズだがや! ほらぁ、セリが妙な言葉使うから、ウチもつられちゃうじゃない!」

 なんだ神田で、この二人は似た者同士であった。


 さっきジジイが問題提起した回復魔法の件は、セリ・ジジイを蘇生しようと金で雇われた、あのS級聖魔導士エルマーを仲間に放り込めばええと言う、一筋の解決案があるにはあった。


「その為にはフローラ、おまはんの秘密をチクる事になってシマウマ」

「そうだった。それも厄介な盲点だったわ。ありがとう糞ジジイXさん」

「もうセリでええがな」


 二人だけでダンジョンに潜る....それが難航する事は目に見えていた。

 ユウンラムゼ伯爵とドン・ウェルナー伯爵が、流石にそれを許す筈がないのだ。

 

◆◇◆◇◆◇


  しかし、それはいきなり許されて、決行する時が来た。

但し、「伯爵家に伝わる秘宝を持って行くなら」と言う条件付きではあったが。

 それがいったい何かは知らされなかったけれど、当然、フローラも儂もそれで納得したのだ。


◆◇◆◇◆◇

 喜び、すっ転び、儂セリーナとフローラは、攻略の難易度が高いダンジョンの一階層に足を踏み入れた。


「セリ、じゃあここで軽く南友水鳥拳のレレイと変わっておくわ。大丈夫、私自身はちゃんと居るから、心配しないで」

「ふむ癖の強ええアヤツか、儂ちょびっと心配じゃが」


「さあ、南友水鳥拳のレレイ、交代してあげるから、用がすんだらさっさと交代だからね、レレイ出ませい」

 ふははは


 フローレンの顔つきが、悪人の時のレレイに変貌した。

「儂、ちびりそうじゃがな。やっぱり布の少ない三角パンツより、パンパースでないと不安じゃぞよ」


 するとそこへ最弱モンスターのスライムが現れた。

 ピョコ

 儂も魔剣<ガンマ―・オリザノール>を構えてはみた。

 しかし!


 「出たなラオウ! 南友水鳥拳奥義 断己相殺拳!」


 レレイが捨て身の最終奥義を繰り出しやがった。

 「流石はレレイじゃ。スライムの名前が分かるとな。しかしじゃ、あのな、レレイのにーちゃん、スライムのラオウ相手に最終奥義って、何をビビッておるんじゃ?あんなもんと心中するつもりけ? スライムなんぞションベかけときゃ、勝手に逃げ出すぞよ」


「し、しかし御老体、あれはマツタケが腫れあがって、悶絶死するのだぞ!」

「それミミズじゃねぇけ、ただのスライム一匹が相手じゃろが」


 早くもレレイは、ジジイに貶されて人格交代する事になった。

「セリ、私も中でイライラしてた。南友水鳥拳レレイ、本当になんとも使えねぇし!」


「じゃあ、次交代して盗賊職の江戸前ナンコを出すわ。罠って結構エグイから、慎重グイグイに行くわよ」


 順番は江戸前ナンコ、儂の順で暗いダンジョンを進んで行く。しかしフローラに人格が六人いようと、ジジイのパーティーはたった二人である。


「ところでフローラよ、おまはん、この箱の中身を知っとるけ?」

「ウチは聞いてねえし」

「儂もだぞえ」



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