EP2 伯爵令嬢フローラ 隠し続けた六つの秘密
_____「99歳、どこかの馬の骨Xセリーナ、お陰で私も勇気が出たわ。今度は私の番ね.....私は、わ・た・し・は......」
「はよ言わんかい。儂、花を摘みに行かんと、....へ?もう恰好つけんでもええのんか」
セリーナの皮を被った99歳、どこぞの馬の骨Xが、その瞳を閉じると緊張と尿意が走った。
うっ いかん!
そして<漢方のヅムラ>と書かれた湯飲みに入った渋茶で、ゴキュっと乾いた喉を潤してから、フローラの告白を待った。
『転生して血圧に動悸、神経痛、頻尿の薬を飲まんでもええのは、とにかく蟻が鯛こっちゃ』
『じゃが、こいつは以前、儂が酷い目にあった、コスプレしたお医者先生と看護師さんのドッキリ程度じゃねえ筈じゃ。しかし随分とタメが入っとるぞフローラ。はよ言わんかの』
_____「いいこと?セリーナ、真面目に聞いてよね。私の中には、トータル六人の男と女が、不法に住み着いているの」
「シェアハウスと言う奴じゃな。なんじゃ、そんな事なら儂より五人多いだけぞな」
セリーナの魂は、99歳の馬の骨老人Xと入れ変わった。違うのはフローラには自分の意思と、六人の人格が別々にシェアしている事だ。現代ならばサイコパスでは無く、それは多重人格者に分類される事だろう。
セリーナとフローラの違いと言えば、一つの部屋に何人が住んでいるかだけだ。
「儂はセリーナの体を乗っ取って、儂一人が住み着いておる。フローラ、いいではないか、おまはんはいつも大勢賑やかでええじゃろうて」
ジジイの羨ましいような発言は、フローラに言わせれば間違っている。
「セリーナ違うの。ある人格が出て来ると、私の人格は部屋の隅に追いやられて、主導権がないの。そいつが飽きるまでよ」
「でわ、今はフローラだけなんじゃな?」
ジジイの疑問を、フローラはまた否定するのだった。
「私の後ろで、状況に一番相応しい人格が出番を待ってて、それを私は今まであいつ等を刺激しないように、一人で部屋に閉じ籠って生きて来たのよ」
フローラの話は、ジジイにも重い生き様であった。
「儂の人生99年間、碌な事は無かったが、それでもここまで生きて来た。じゃが儂はお釈迦様の気まぐれか、食あたりと下痢で異世界にブリっと飛ばされ、新しい体を得たのは、何か意味が有ると思う事にしたぞよ。フローラ、おまはんと懇意になり、互いの秘密を分かち合う......それも意味があると思わんかの?」
ジジイにしては珍しく、長くまともなセリフであった。恐らく転生して初めての事だったのだろう。
「フローラ、すまんが熱い梅昆布茶をくれんかの」
はいはい只今すぐに。
「ギョエ~、そんなもん、あるんかえ?」
ゴキュ ゴキュ
プは~ 梅昆布茶がうめえぞよ
ごは、ゴフぅ!
「いかん、危うく誤嚥する所じゃったぞい。ここで肺炎なんぞになったら、せっかくの転生が無駄になるからのう。このセリーナ嬢の腫れ上がった乳も尻も、今は儂の悩殺必殺トレードマークの必需品じゃからの」
ヒツ ヒツ
「今すぐそのジジイを追い出してよセリーナ」
「無理じゃ!」
◆◇◆◇◆◇
......もういい?落ち着いた? あ、大丈夫そうね。
『フローラお前さんよう、老人にはもうちッと、優しくするもんじゃて』
「お待たせ。セリーナ、私以外の六人を紹介しておくわね。皆個性的だけど、他人に迷惑をかけるような人格は一人も居ない筈だから安心するがいいわ」
「筈とはなんじゃ? フローラよ、何がおっぱじまるんかの?」
_____「見てて、まずエントリーナンバー①番のこの人からよ」
とフローラの許しを請う訳でもなく、出番とあって硬派なイケメンが現れた。勿論、体はフローラのままで、あくまで喋りと仕草がである。
ヒョォォォ~ シャウ シャウ
「そこの老人、俺の名前を語るには安くはない。が、このアイリのダチなら名乗ってやろう。俺は南友水鳥拳のレレイ、覚えておけ。アイリぃぃ!」
『こやつ儂が見えておるのか? じゃがアイリって誰やったぞな?』
「いい?では続いてエントリーナンバー②番、この子よ」
レレイが大人しく引き下がる。この場は出て来た人格が、フローラの顔を立てていると解釈したジジイであった。
『顔見せ興行じゃからな』
「ボクの名前は江戸前ナンコ。寿司屋で探偵さ。へい上がり一丁ぅうぃ」
「......OK。じゃ次行ってみようか」
「エントリーナンバー③番はこの戦士だぁあ!」
ジジイはもう訳が分からなくなった。二人とも異世界には存在しない漫画のキャラ達ばかりなのだ。
「ペガサス流星群!!」
はい、ありがとうねセコイヤ君、時間が押してるから、急ぐわね」
「エントリーナンバー④番、さぁ四天王の一角、あなたの出番よ!」
「ザザード・ザザード....スク スク」
「はい、十七歳の私のオッパイはすくすく育ってますよ、でもアーシェス、そのスペルは危ないからそこまでにしてね。じゃ次の方」
『今のは確か、S級聖魔導士エルマーの爆裂魔法<天地爆裂崩壊励起>で入れ歯が飛びそうになった.....今のも漫画バスタオルのアーシェス・ダギャアじゃねのか?なもよ』
「次エントリーナンバー⑤番は、自衛隊員毒ダミにゾッコンのこの女、ダークエルフだぁあ」
「毒ダミ殿、私にもパンツアー・ファウストⅢを貸してくれ、頼む」
「こいつも危ないですよ~。すぐ引っ込んでください。パンツアー・ファウストⅢをすぐぶっ放しますから」
「ではオオトリ⑥番は、やっぱりこの野郎が相応しい!」
「ダムドぉお!」
「OK、ここでダムドはムダダムド」
「フローラ、性格.....変わっておる」
「なんとなんと、バスタオルからニ名がノミネート。これは目が離せないぃ!」
セリーナ99歳は、ただ唖然としてフローラの一人芝居を、口を開けて眺めていた。
「どう? これが私の人には絶対言えない秘密なの。この秘密のせいで、十七年間、どれほど私が苦しんだ事か。セリーナ、あなただけには分かって欲しいの」
などとフローラは目を伏せて、悲しそうにホザクのだった。
「フローラ、儂にはノリノリに見えたぞい」
あは、テへペロ
「あほくさ、何がベロベロじゃ」
「ベロベロじゃねぇし。テへペロ」
しかし、フローラの一人6役は迫真に迫っていた。そしてセリーナ99歳ジジイは思った。
「なぁフローラや。その個性を何かに生かせると儂は思うのじゃが」
ガ~ン
セリーナから、そんな言葉が出るとは思っていなかった。
「私はセリーナだけに、秘密を打ち明けて楽になりたかった。ただそれだけなのに、こんな奴等が役に立てるなんて、とても考えられないわ」
ジジイもセリーナが男勝りで、剣の鍛錬をしていて、剣士の冒険者登録を済ませていた事に驚いたものだ。それもA級ランクだと言うから二度美味しい、グレコのアーモンドチョコだ。
「六人格の中の、寿司屋のナンコを除くと、前衛、魔法使いなんかがおる。なら儂と二人で、冒険者パンチィを履けば、六人格の憂さ晴らしにならんかの。それで大人しくなれば小結構な事じゃぞ」
「セ、セリーナ、それよ!!」
ほげ?




