第九話
今日は運がいい。
ホロホロ鳥が集団で屯している現場に遭遇した。
故郷の開拓村では1,2匹取れればいい方で肉質は柔らかくとても美味しい鳥だ。
これ以上近づけば気付かれるだろう距離まで詰めてたっぷり時間を使い魔法の準備に入る。
多重詠唱に距離延長の式を脳内で展開し無詠唱でエアパレットの魔法を放つ。
本来であれば全てを一瞬で使えればよいのだが多重詠唱も距離延長も実戦で使うにはまだまだ修練不足だ。
しかし、動かない的を狙うなら現状でも問題なかった。
狙い通りに魔法は発動しホロホロ鳥を打ち落とすことに成功した。
警戒しながらホロホロ鳥を回収しようとしたら猫糞を考えているのか蛇型の魔物であるポイズンスネークが高速で近づいてくる。
そのホロホロ鳥は俺のものだ。
縮地を併用しホロホロ鳥目掛けて突き進んでくるポイズンスネークの首を剣で斬り落とす。
しばらく周囲を警戒するが他に邪魔をする者はいないようだ。
素早くホロホロ鳥とポイズンスネークを回収しこの場を離れた。
それなりに森の奥深くまで入り込んでいたので開拓村へ戻りつつ次の獲物を探す。
丁度よい所にオークを発見した。
3匹で固まっており果物をかじっている。
周囲を警戒する様子もなく完全に無防備な状態のオークを縮地で剣の間合いに入り首を斬り飛ばす。
オークは何が起こったか最後までわからなかったことだろう。
オークの肉は豚肉に近い性質を持っており魔物肉としては有名だ。
ホロホロ鳥も取れたことだしオーク肉は村長にでもプレゼントしようか。
そんなことを考えながら開拓村に戻るべく足を動かした。
開拓村に戻り村長宅へとやってきた。
「村長、今日の成果です」
プラントとポイズンスネークにオークの魔石を納品する。
「おう、ご苦労さん」
「後はこれ貰ってください」
そう言って俺はオークの肉を村長に手渡す。
「ありがたいがいいのか?」
「えぇ、どうせ食べきれないので」
「そうか、なんていうかお前は変わってるな」
「そうですか?」
「普通は何かあった時の為に食料は貯め込むもんだ」
確かに干し肉にしたりと長期保存する方法もあるだろう。
だが、動植物の豊富なこの場所でそんなことをする必要性はなさそうに思える。
「そういうもんですか」
「そういうもんだ」
リールは普通に獲物を狩っているがそれは実力が飛びぬけて高いから可能なことで普通の狩り人には無理な話だった。
普通の狩り人は数人で行動しても返り討ちにあうような場所がこの開拓村の実態なのである。




