第十五話
老騎士に連れてこられた場所は大きな屋敷だった。
そこではリールと変わらないであろう年代の少年少女が一心不乱に訓練していた。
「ここにいるのは君と同じように魔物によって親しい者を亡くした者達だ」
「僕と同じ・・・?」
「そうだ。彼等は君にとって兄弟となり家族となる者達だ。君が強くなりたいと思うなら必ず手を差し伸べてくれるだろう」
「お爺さんは助けてくれないの?」
「私にはしなければならないことがある。君のように助けを待っている子を救いにいかなければ」
そう言って老騎士は去っていった。
リールが老騎士のお爺さんを見たのはこれが最後となった。
老騎士の名前はアース・フォン・マールハイト。
か弱き者の守護者であり、最後まで魔物に抗った英雄である。
マールハイト王国はその後に彼の血族を王族とし、救われた子供達によって起こされた国である。
長い年月で弱者の守護者であったマールハイト王国は変質し加護の弱い弱者を虐げる国となってしまった。
リールは屋敷に集められた子供達と共に地獄のような訓練に参加していた。
体力作りからはじめ、あらゆる武器の扱い方。
それ以外にも文字の勉強から魔法の勉強。
幸い、リールには戦う為の才能があった。
メキメキと頭角を現し屋敷の子供達のリーダー的存在となっていった。
一定の年齢になると兄弟達は屋敷を出てゆく。
魔物と戦うためだ。
しかし兄弟の多くは屋敷に帰ってくることはなかった。
この国いや世界はもはや末期だった。
魔王軍が圧倒的な暴威を振るい人類は滅亡寸前だった。
この屋敷が維持されているのは生前の老騎士アースの功績と国王の慈悲。
そして戦力を確保する為という身の蓋もない大臣達の悪意が合わさった結果だった。
それももはや終わりだ。
王都に魔王軍の魔の手が迫りリール達も戦いに駆り出されることとなった。
最低限の武具を与えられ最前線よりも前に配置された。
どうみても使い捨ての捨て駒扱い。
生き残る為には戦うしかなかった。
次々と襲いかかってくる魔物。
力尽きて倒れる兄弟達。
彼等を庇いながら戦える者が壁となりそうしてまた倒れる。
戦いが終わった時、立っている者はリールを含め数人だった。
今にも倒れてしまいそうな疲労感に襲われながらも倒れている者を救うため回復魔法をかけてゆく。
それでも多くの兄弟を助けることはできなかった。
自分達の力の無さを嘆く間もなく大人達に囲まれ訳も分からないままどこかに連れていかれる。
辿り着いたのは玉座の間だった。




