第十四話
いくつかの魔力溜まりをまわり必要な薬草を採取して開拓村へと帰ってきた。
開拓村では手隙の人総出でジャイアントアントの甲殻を加工している。
よく見れば、普段は狩りへ行っている狩り人の姿もある。
慣れない作業で苦戦しているようだがこれは仕方のないことでもある。
開拓村では定期的に魔石の回収にやってくる役人とそれについて商いを行う行商人がいるが外界との接触はそれ以外にはないと言っても過言ではない。
開拓村を離れる者は稀であるし、判明した時点で国に追われる立場となる。
その上、離反者が出た村は何かしらの罰則を受けることになる。
そういうわけで何でも自分達で行うしかないのだが慣れない素材を加工するのは大変そうである。
防具を作ったことのないリールが加わっても大した助けにはならないだろう。
他の人達が作業をしている間に、代わりに開拓村近辺で狩りを行い負担を軽減した方が良いだろう。
そんなことを考えていると村長が目聡くこちらを見つけて話しかけてきた。
「おぉ。リールか。どうだった?」
「やっぱり手ごわい魔物が多いですね。何とか薬草は採取してきました」
「そうか、助かる」
開拓村では食べる食料の他に薬草なども栽培している。
しかし、それらはやはり品質が低く必要とされている回復薬の素材としては心もとない。
行商人を通して入手しようとしてはいるが値段が張るしまとまった量を入手することは難しい。
常に周囲を魔物の危険に晒されている開拓村としては狩り人やいざという時の為に品質の高い回復薬を確保したいという思惑があるが難しいのが現状だ。
リールが品質の高い薬草を採取してきたことでその問題を解決できそうだと村長の機嫌はとてもよかった。
そのままリールは村の薬師の元へと薬草を届け家に帰宅した。
その晩、リールはまたしても悪夢にうなされていた。
大切な人々が魔物に襲われ次々と殺されてゆく。
自分もその人達の仲間入りすると思われたその時、老齢の騎士が颯爽と現れた。
老齢の騎士は大剣を軽々と振り回し魔物達を屠っていく。
最後の魔物を狩り終えた老齢の騎士は震えるしかできなかった自分に声をかけてきた。
「少年よ。強くなりたいか?力を欲するならば儂の手を取れ」
リールは迷わずその手を取った。
この時のリールは何もわかっていなかった。
この選択をしたことを後悔はしていない。
しかし、地獄への片道切符であったことは間違いなかった。




