第十二話
リールが村に戻った頃にはすっかり日が暮れていた。
開拓村の例に漏れず魔物を警戒して村の出入り口には不寝番が置かれている。
この時間に戻ってきたことはないが普段と比べて騒がしい気がしていたが間違いなかったようだ。
「おぉ。リール。無事だったか」
「村長。こんな時間に珍しいですね」
「それは、お前さんが戻ってこなかったからだ」
どうやら自分が戻らなかった為に皆集まっていたらしい。
夜は魔物の動きが活発になる。
そんな時間に外をうろつくものはいない。
「ご心配をおかけしました」
「いや、無事に戻ってきたんならいいんだ。それより、何があった」
「ジャイアントアントの巣を見つけまして・・・」
「ジャイアントアントか。それはまた厄介だな」
「いえ、巣は潰してきたので大丈夫ですよ」
「おう・・・。って、マジか。マジなのか」
「えぇ。証拠にほら、ジャイアントアントの甲殻です」
「いやはや。お前さんが強いのは知ってたがこれはなぁ・・・。本来なら正規兵に応援を頼む案件だぞ」
開拓村は加護の低いものを使い捨てる厄介払いのような場所ではあるが王国にとって貴重な収入源の一部でもある。
開拓村で手に負えない案件が発生すれば時間はかかるが正規兵を派遣して貰える。
「ジャイアントアントの甲殻が大量に手に入ったので村に寄贈しますね」
「そりゃぁ、助かるがいいのか?」
「えぇ。俺が持ってても活用するのが難しいですから」
アイテムバックに詰め込んでいるが正直かなり容量を圧迫していて今後の狩りに支障をきたしそうだ。
家に保管するにしても一人暮らしの家ではそんなにスペースがあるわけでもない。
売り払うにしても次に行商の商人がやって来るのは1か月後だ。
そこまで期間があくのなら村で加工して少しでも村の役にたてた方がいいだろう。
武器に関しては魔物の牙を利用したりして揃っているのだが防具に関しては不足気味だ。
村長もそこは理解していて私財を投入したりしているようだが防具は何といっても場所を取る。
行商人も運ぶのを嫌がるだろう。
加工する手間暇はかかるがそれを村で作れるなら村人の生存率が大きくあがるはずだ。
「じゃぁ、悪いが家まで運んで貰っていいか」
「わかりました」
村長宅は広さもそうだが周囲の家とは少し違う作りをしている。
保存庫の役目と村の周囲の防壁を突破した魔物を少しでも食い止めるために防衛のしやすいように様々な仕掛けが施されている。
詳細にみたわけではないが中々強固な作りは頼もしさを感じさせるものだった。




