第十話
リールが辺境の開拓村にやってきて1か月が経とうとしていた。
まず、公共の井戸が遠かったため自分の家の近くに井戸を掘った。
それを羨ましがられ井戸掘りをしたり、家を建てて回ったりと大忙しであった。
その甲斐もあって加護なしではあるが今ではすっかり村にいなくてはならない人になっていた。
今日は王都から兵士がやってきて上納分の魔石を回収に来る日だという。
村長からは家から出ないようにと言われていた。
これは、嫌がらせではなくリールのことを気遣ってのことだ。
回収に来る兵士は嫌味が酷く、加護なしと知れたら何を言われるかわからないとのことだった。
回収に来た兵士に同行してキャラバンがくるとのことで自分で売買はできないが魔物の素材に関しては村長が売却を請け負ってくれ必要な物資も買い揃えてくれるとのことでお願いしといた。
そんなわけで暇なわけだが何をしようかと考える。
久々に瞑想をしてみようか。
瞑想は魔法の基本ではあるがリールは瞑想が苦手だった。
意識を自分の内側に潜りこませていくのだが深い所に潜ると黒い靄のようなものがありそれに触れると悪夢が襲い掛かってくるのである。
リールはこれは自分が未熟なために起きることだと考えていたが魔王から受けた呪いの影響だった。
魔王の呪いはリールの奥深くに根付き天界の女神にすらどうすることもできなかったのである。
本来であれば天界は魔王討伐の功績を称え、神の一柱としてリールを迎え入れる予定であった。
しかし、魔王の呪いにより天界に留め置くことができず下界へと転生させ呪いが薄まることを祈ったのである。
そして、リールが魔王の呪いの闇に飲まれない理由は一人の女神のおかげでもあった。
女神はリールに自分の加護を集中することで一筋のか細い可能性を繋いだのである。
そのせいで世の中の人々に加護の弱い人が増えたという悲しい現実があるのだが・・・。
そんなわけでリールは今、自分の奥深くに潜り闇と必死に戦っていた。
自然と息は荒くなり一歩間違えれば気が狂いそうになる中、一瞬ではあるが女神の存在に気が付いた。
女神は呪いの影響を受けボロボロだった。
だが、リールはそんな女神を美しいと思った。
女神もリールが認識したことに気づいたのか微笑んだ気がした。
一瞬であれ、その姿を忘れることはないだろう。
そして、負荷に耐えられずリールの意識は闇に落ちていった。
リールが目を覚ましたのは夕方だった。
あれは夢だったのだろうか。
ゆっくりと思考がはっきりしてくる。
あれが夢だったはずがない。
彼女を助けなければ。
何故だかはわからないが強くそう思うのだった。




